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「いいか?絶対に手を離すなよ」
「わかった!」
なまえと黒羽丸は化け猫横丁に通じる扉を開いた。とたんに広がる活気ついた光景に、なまえは目を輝かせる。なまえにとって化け猫横丁は初めて見るものばかりで、黒羽丸の手をギュッと握りながら彼女は辺りをキョロキョロと見回した。そんな微笑ましい様子のなまえを横目で見ながら、黒羽丸は目的の人物を探す。
「………」
「いないねぇ、」
しかしお目当ての人物は中々見付からない。ぬらりくらりとしている人物、もしかすると彼はもう帰ってしまったのだろうか。溜め息を吐いた黒羽丸がなまえと共に立ち止まると、見計らったように一匹の妖怪が二人に声をかけた。
「黒羽丸様じゃねぇですかい!お久しぶりで!!」
「良太猫…」
「おや、可愛い子をお連れで。お嬢ちゃん、名前は?」
「……なまえ」
小さな声でそう言ったなまえは、それきり黒羽丸の身体で自身を隠してしまった。彼の腰辺りの着物をギュと掴み、良太猫の様子をそっと伺う。そんな彼女の姿に苦笑しながら人見知りする子ですまない、と彼は良太猫に頭を下げた。
「それにしても、貴方様がここにいらっしゃるなんて珍しいですねぃ。何か良いことでも?」
「いや、今日は飲みに来た訳ではない。ここに総大将は来ていないか?」
「あぁ、ぬらりひょん様なら、あちらに…」
黒羽丸が良太猫の視線を追ってみると、顔を赤くしたぬらりひょんが若い化け猫の女店員達に囲まれながら酒を飲んでいる様子が確認できた。彼は自分を見つめるいくらかの視線に気が付いたのか、こちらを見ると「黒羽丸じゃねぇか、」と赤い顔をくしゃりと歪める。
「総大将…随分探しましたよ」
「ぬらりひょんさま−!!」
「おぉ、なまえ!じぃちゃんは会いたかったぞ!」
「なまえもあいたかった−!」
彼の後ろから飛び出しいち早くぬらりひょんに駆け寄ったなまえはその膝にのせてもらい、ご機嫌な様子だ。自分の右手が寂しくなったことを少し悲しく思いつつぬらりひょんとなまえに近付いた黒羽丸は、今にもなまえが飲もうとしていたまたたび酒を取り上げる。
「これは駄目だ。お前にはまだ早い」
「やだ−っ!なまえも飲みたい!」
「これならいいぞ」
「あま−い!」
にっこりと笑ったなまえにつられて微笑む。そんな様子を見た化け猫屋の店員が、彼女が食べれそうな食べ物を沢山運んできてくれたため、暫く黒羽丸は本来の目的を忘れて彼女の面倒を見ていた。
「なまえ!焼き鳥をそのまま口に入れるな!今一つずつに分けてやるから」
「おいし−」
「美味しいじゃろ」
「総大将も見ているだけじゃなくてなまえを止めてくださいっ!串が喉に刺さったらどうするんですか!」
「相変わらず過保護じゃのぅ、お前さんは」
大口を開けて笑うぬらりひょんを見て眉を潜めた黒羽丸は、この子に何かあってからでは遅いんです!と切り返した。そして再び焼き鳥を串から切り離す作業を開始したが、ハッと本来の目的を思い出す。
「……こんなことをしている場合ではない!総大将、親父が呼んでいます。直ぐに本家にお戻りください」
「嫌じゃ。どうせお説教じゃも−ん」
「そう言わずに、」
「なまえ−じぃちゃんと花札でもやらんか−?」
「やる!」
「総大将−!!」
自身の特性でぬらりくらりと黒羽丸を交わしたぬらりひょんは、嬉しそうに自身に飛び付いてきたなまえを優しく抱き締めた。幼子は、楽しそうに笑っていた。
「親父、きっとカンカンに怒っていますよ」
「じゃろうなぁ…」
夜更けの道をゆっくりと歩きながら、二人は本家に帰っていた。化け猫屋ではしゃぎ疲れたなまえは、黒羽丸の腕の中でぐっすりと眠っている。
「…じゃがまぁ、楽しそうでよかった」
「…!」
「最近、なまえが何処と無く元気が無いのが気になってのぅ…」
ワシも年かのぅ、そう言ったぬらりひょんは笑いながら歩みを進める。歩みを止めた黒羽丸は、その背中に向かって頭を下げた。
※分かりにくいため解説
総大将がなまえの元気が無いと言っていますが、“夢”のせいで実際にいつもより元気がありません。微妙な変化なので気付く人の方が少ないでしょう。
そんな彼女の変化に気付き然り気無く元気付けてくれた総大将に黒羽丸が感謝した、というのが今回のお話です。
良太猫に対する黒羽丸の口調、間違ってたらすみません(涙)
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