▼ ▲ ▼
「トトちゃん、てぇ離さないでね」
「お−」
なまえは飛ぶ練習をしていた。まだ幼いために中々飛ぶことが出来ない彼女。今日は兄貴分の黒羽丸の言い付けをキチンと守りトトちゃん――トサカ丸と飛行訓練をしている。
「えぃっ!」
空中にいるトサカ丸に手を持ってもらいながら、屋根から足を離す。途端、彼女の身体はふわりと風に乗りながら浮いた。
「わっ!飛べたっ!」
「すげぇじゃん、なまえ」
飛べたことが嬉しいのか、きゃはは、と終始笑顔の彼女。トサカ丸の提案で少しだけ動いてみることにした。勿論、手は繋いだままだ。
「そうそう、ゆっくりだぜ、ゆっくり羽根を動かして…」
「………」
真剣にトサカ丸のアドバイスを聞きながらなまえは羽根を動かす。するとほんの少しだけだが場所を移動することが出来た。
「おぉ!なまえナイス!」
「やった−!!」
地上にいたらぴょんぴょん跳び跳ねていただろう。それくらい、なまえの喜びは大きかった。その後何回か場所を移動することに成功し、いよいよ次の段階に移ることになったのである。
「よぅし!次はだななまえ、オレの所まで1人で飛んでこい!」
「ひとりで?」
「あぁ、1人でだ。心配すんな、そんな距離は長くしねぇよ」
以前屋根から墜ちたことを思い出したのか、なまえは不安げな表情を見せる。しかし先程までの訓練で自信がついたのか、やってみる!と元気に返答した。
「おし!じゃ−手を離すぞ−」
ゆっくりゆっくりと2人の手が離される。なまえは身体の神経全てを羽根に集中させ、堕ちないように空中で上手にバランスをとった。なまえから数メ−トル離れたところでトサカ丸はなまえに声をかける。
「よ−し、なまえ来い!」
「らじゃ−!」
元気よく声を出したなまえはトサカ丸の方へ向かって飛び始めた。彼女の飛行は努力したお陰か以外にも好調でトサカ丸まであと一歩というところまで迫ったのである。
「来い!」
「「なまえ頑張れ〜」」
地上では様々な小妖怪達が彼女を応援していた。そしてついに、彼女はトサカ丸がいる場所へと辿り着いた、と思われたののだが。
「なまえ!!」
「んきゃ、」
「「あっ」」
「…げっ」
トサカ丸まであと数センチ、という所であろうことかなまえはバランスを崩してしまった。原因は彼女の名前を叫んだ男にある。突然現れたその男は彼女が飛行訓練しているのを知った。しかしまだ羽根の骨格がしっかりしていない彼女は1人で飛ぶには幼すぎる。心配のあまり集中している彼女に向かって声をかけてしまったのだ。
「ぎゃぁぁああ!!」
「くそっ、」
まるであの時を再現しているかのような光景に小妖怪達は焦りを浮かべる。それはその原因を作った男――黒羽丸も同じだった。
「なまえ−!!」
急いで羽根を広げ、重力に逆らって飛び立つ。黒羽丸は重力に従って墜ちてくる彼女を受け止めようと必死だった。それはトサカ丸も同じ。
「くそぉ、」
彼もなまえをキャッチしようと急いで羽根を動かし重力に従って墜ちる。
「ぎゃぁぁああっ!!」
ドン、と大きな音がした。恐る恐る小妖怪達が空を見つめるとそこには2人の鴉天狗が衝突している絵図がある。
「なまえは何処だ−!」
そして肝心の小さな彼女がいなかったのである。再び焦った小妖怪達は急いで辺りを見渡す。すると…
「あはっ、ここここ−!」
「なまえ−っ!」
「無事だったんだね!」
彼女は少し離れたところでふわりと浮いていた。彼女の羽根は緩やかに動き上手にバランスがとれている。
「飛べたよ−!!!」
青空に彼女の嬉しそうな声が響き渡った。
過保護な兄貴達
[
BACK]