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「…………」

「…………」

ある日の昼下がり。奴良組の縁側では2人の人間が視線を交差させたまま微動だにせず突っ立っていた。

「えっと、ごめんなさい」

「こちらこそすまなかったな」

1人はなまえである。彼女は廊下を思い切り走っていたところ、何かにぶつかって足を止めたのだった。

「そんでね、あのね、えっとね、」

「…………」

「おじさん…だぁ−れ?」

「…………」

もう1人は幹部会に出席していた牛鬼だった。彼は縁側でお茶でも飲もうと思いながらゆっくりと歩いていたところ、これまた何かにぶつかって足を止めたのだ。

「…牛鬼だ」

「ぎゅ−き、」

彼は子供が苦手だった。いや、苦手と言うには語弊があるかもしれない。扱い方がいまいち分からないのである。牛鬼組にはなまえやリクオのような子供が一人もいない。いるのはうしおに軍団や可愛らしい顔をした若頭と若頭補佐である。
なんにせよ、彼にとって彼女と対峙してしまったことはとても困ることだったのだ。

「ぎゅ−き」

「…………」

「だっこ」

そんな牛鬼の考えを露知らず、なまえは牛鬼に向かってちょうどいつも黒羽丸にするような調子で手を伸ばす。牛鬼は恐る恐るなまえの脇に手を差し込み彼女を抱き上げてみた。

「わ−っ高いっ!」

黒羽丸より幾分か背が高い牛鬼。いつもより目線が高くなったことできゃっきゃっとなまえは赤子のように手を振って喜んだ。そんな様子に牛鬼の顔は自然と綻び始めるのだった。


「……肩車はもっと高い」

「きゃ−!たか−いっ!!」
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