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「つっかれたぁ…」
「ホントだぜ…まじ鬼だなこの範囲は」
ぶぅぶぅと不満を並べるなまえとトサカ丸の様子に苦笑を浮かべた黒羽丸は、彼女らに明日は日曜日だし遅くまで寝てても良いぞと伝えた。ちなみにこれは正真正銘、鴉天狗からの伝言である。その趣旨を伝えるとなまえは御父様に怒られないですむや、と嬉しそうに笑った。
「…やったね!じゃあ私、若菜様達のお手伝いしてくる。今雪女いないし、大変だろうから」
本日の奴良組は宴会が行われている。“妖怪リクオ”の復活祝いの宴会だそうで、組の者は浮き足立っていた。主役が未だにいないのに宴会を始めていていいものか…そうは思ったなまえだったが何せ総大将がぬらりくらりと掴み所がない妖怪だ、そんなことを気にする妖怪はなまえや黒羽丸、鴉天狗を除いて誰も存在しなかった。
「つまみ食いすんなよ」
「…トトちゃんさぁ、私のこと何だと思ってるわけ」
「昔は可愛かったのに最近は可愛くなくなったガキ」
「ムカツク―っ!なまえ可愛いし!ガキじゃないし!…まぁつまみ食いはするけど」
「するのかよっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら台所へ向かうなまえとトサカ丸に再び苦笑を漏らした黒羽丸は、父親の元へ報告に向かったのだった。しかし黒羽丸はこの後、既に酔っぱらって顔を赤くする父親の姿に唖然とすることになる。
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「ほ−い寿司お待ちぃぃいっ」
「お!なまえさんきゅぅう〜」
ガラリ、と開けた襖の向こうはムッと酒の匂いが充満している。既にほとんどの妖怪が潰れていると思っていたなまえだったが、その予想は外れ未だ生き残っている妖怪が多数いた。見渡すと毛倡妓周辺の酒の減りが速い。
「毛倡妓…」
更になまえが辺りを見渡すと首無が納豆に酒瓶を口に突っ込まれていた。その姿をぼうっと見ていると、突然後ろの襖がグヮラッと音をたてて開いた。
「な、に、やってんの…」
「誰かと思えばリクオ君様ジャマイカ」
「君と様どっちかでいいから。てかむしろもうリクオでよくない?ってそうじゃなくて…」
コレ何!!(直訳:何で宴会なんてやってんの!?)と今にもなまえの胸ぐらを掴んできそうな程目を見開いたリクオがなまえに問う。そんなリクオになまえは“妖怪リクオ様の復活祝い”らしいよ〜、と呑気に返した。そうこうしているうちにいつの間にか酔っ払った鴉天狗が側に現れ、今にも堪忍袋の緒が切れそうなリクオに絡む。
「ほうらもうすぐ夜ですぞ。皆に見せてあげなさいよ…パパッと変身して下さいや」
「そのへんにしたら〜御父様」
リクオの堪忍袋の緒が切れるタイミングを見分けられたなまえは流石リクオの義兄弟になるべき妖怪と言うべきか。ともかく、奴良組の宴会場にリクオの怒声が響き渡った。しかしそれしきのことで静かになる妖怪が奴良組にいるのか、反語。
「日曜日は学校の学校の皆が来るんだぞぉ−!!」
「なんすか…新しい舎弟っスか?」
「だから違うっつ−−の!!」
「ねぇリクオ様…今の本当?」
ぐい、とリクオの学ランの袖を強めに引っ張りなんとかなまえは彼の気持ちを自分に向けることに成功した。
「あ、そういえばなまえはいなかったっけ。あのね、今度の日曜日、学校の皆が家に来ることになっちゃって…」
「ぇぇえええ!!」
今度はなまえが絶叫する番である。
「リリリリリクオ様!それヤバイよ!なんでOKしたの!妖怪屋敷ってバレちゃっていいの!?まぁ私はどうでもいいけど」
「全然よくないよ!でも清継君にどうしてもって言われて断れなくて…」
「清継なんて殴って黙らせればいいんだって!よし、今から私が一発清継殴って説得してくる」
「僕が悪かったから、お願いだからやめてぇぇえ!」
宴会以上に煩いこの2人をジッと見つめた1人の小妖怪がその後直ぐにそっと宴会場を抜け出したことなど誰も気が付かなかった。
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