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「まったく…ワシを見習わんかい。たかが陰陽師の小娘1人に大慌てしおって。ワシなんか大昔は陰陽師の本家行ってメシ食って帰って来た事もあったぞ」
「さすがにそれは総大将しか出来ません」
ゆら達一行が帰った後の奴良組本家はぐったりとした妖怪達で溢れかえっていた。皆陰陽師であるゆらに怯え、必死に隠れていたからである。木魚達磨が皆に妖気を消せなどとアドバイスをしている中、ゆっくりと腰を上げたなまえと黒羽丸は大広間から外に出た。
「夜のパトロ−ル、そろそろ行く?」
「あぁ」
そんな会話をしながら仏間の前を通りかかるとふと、その中の仏像1体に何やら見たことのない御札が貼ってあった。なまえは好奇心からするりと仏間に滑り込み、その御札をしげしげと眺める。
「………何語?」
御札には何やらよく分からない文字が陳列している。剥がしてみよう、となまえが御札に手をかけたその時。
「なまえ!!」
「何?………ったぁぁあい!」
バチッ、という音と共に何やら焦げ臭い匂いが辺りに充満した。当のなまえは顔をしかめ火傷をおった指先を見つめている。焦った黒羽丸は急いで彼女をその場から引き離した。
「何で触った!あれは陰陽師の札だ!見れば分かるだろう!」
「分かんないから触ったんじゃん!」
「知らないことを知ろうとするのは良いことだ。ただお前の場合警戒心というものが無さすぎる。もう少し警戒心を持て!」
「持ってるもん!」
「持ってない!」
「持ってる!」
「持ってない!」
この会話の無限ル−プを続けながら台所までたどり着いた黒羽丸となまえは丁度流しを使っていた若菜に事情を話し、流しを貸してもらった。2人から事情を聞いた若菜はあら大変、と言い残し救急箱を探しに廊下へと消えていった。極限までに冷した水になまえの指先をぐいっと付きだし、火傷の跡を冷してやる。
「……いたい」
「自業自得だ」
「………ごめんなさい」
黒羽丸が自分のことを心配して怒ってくれているのはなまえとて分かっている。ぽそりと彼女が謝罪の言葉を呟くと、黒羽丸は軽く溜め息を吐いた。
「お願いだから自ら死にに行くような真似は止めてくれ。俺の心臓が止まる」
「………うん」
「それにこれで分かっただろう。陰陽師が俺達にとってどれほど脅威か」
「………うん」
そんな会話を続けていると、救急箱を持った若菜がパタパタと足音をたてながら台所に戻ってきた。黒羽丸にはい、と救急箱を手渡した若菜は大事に至らなくて良かったわ、とにっこり笑う。ありがとうございます、と若菜からそれを受け取った黒羽丸は中から薬を取り出し手早く処置していった。自分の指先に綺麗に巻かれていく包帯を眺めながらなまえは口を開く。
「………あの時、」
「?」
「陰陽師が妖怪を倒してくれるっていうんなら、あの時、陰陽師がいてくれたら良かったのに」
「!」
「そしたらきっと、誰も死ななかった」
「………そうだな」
彼女の目の端に溜まった涙を拭ってやりながら、黒羽丸はそう呟いた。
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