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※会話重視

「今年もクリスマスの時期だねぇ…」

ごきゅ、と肩を鳴らしたなまえは不適に笑う。その様子を側で見ていたリクオは何を企んでんだ、と半分呆れたように半目で彼女に問うた。

「まぁまぁ聞きなさいよリクオ様、なまえはね、ずっと疑問に思ってきたわけよ」

「何をだ?」

「この奴良組、行事は完璧に行う主義。なのに、だ!何故クリスマスツリーは人工なのだ!?清継ん家みたいに本物を使ってもいいじゃないか!」

「………」

「というわけでだね、今年のクリスマスツリーは本物のモミの木を取りに行くことにした」

「………一応聞くけどどこにだ?」

「秋田県」

「却下」

「えぇ〜何でぇ!!」

不満そうに口を尖らせたなまえはぶぅぶぅと文句をその口から漏らす。それを右から左へ聞き流していたリクオだったが、彼女がある一言を言った途端ガラリと態度を変えることになる。
“昼のリクオ様だったら、何だかんだ文句言いながらも絶対一緒に行ってくれたのに〜!”
かくしてなまえとリクオは、本物のモミの木を取りに行く旅に出たのだった。

*

*

*

秋田県のとある山奥にて。

「お、重すぎ…」

一本の立派なモミの木を切り倒すことに成功したなまえとリクオはさあ関東へ帰ろうとしたのだが。

「リ、リクオ様…もうちょっと小さいのにしよっか」

「なまえが欲張ってでかいのにしたんだろ…」

あまりにも巨大すぎる大木は二人の力では運ぶことが出来なかった。泣く泣くこの大木を諦めることにしたなまえは、もう少し小振りの木を探す。

「これでいっか。いっけぇええ!!」

「…うわっ!おいなまえ、おめぇ俺を燃やす気か!」

ちょうど良い木を見つけたなまえは彼女の畏を形態変化させ、斧のようにして木を根本から切り倒した。

「よ−し!あとはお家に帰るだけ!孔雀が鳴くからか−えろ!」

「それを言うなら鴉だろ」

「い−のい−の、細かいことは気にしな−い」

「…………」

「ほらリクオ様、見てないで反対側持ってよ〜!」

はぁ、と深い溜め息を吐いたリクオは、なまえによって地面に引き摺られていた反対側を担ぎ上げた。

「で」

「何?」

「どうやって家(うち)まで帰るんだ?」

「…………」

「まさかそんなこたぁないと思うが…考えてなかったのか?」

「あ、あ、あ、」

「?」

「歩いて!帰るんだよ……うん」

「………阿呆」

「だってぇ〜…」

「仕方ねぇ、朧車に迎えに来てもらうか」

「さ−んせ−いっ!」

*

*

*


「で」

「「…………」」

「なまえ!このデカイ木はなんなのじゃ!!」

「だ〜か〜ら〜クリスマスツリーだってさっきから言ってんじゃん。もしかしなくてもお父様、耳遠くなった?」

「なってないわいこの馬鹿娘ェェエ!!」

「いったぁぁぁああい!!」

ハリセンで叩かれた箇所を涙目で擦るなまえを横目で見ていたリクオは、鴉天狗のお怒りが自分に飛び火しないうちにぬらりくらりと姿を眩まそうとするが。

「リクオ様」

「げ」

「この鴉、常日頃から貴方様に申し上げておりました。この馬鹿娘が破天荒な事をし始めようとしたら、義兄弟である貴方様がなるべくお止めください、と」

「………」

「なのに、です。この馬鹿娘の阿呆な計画に荷担したどころか、護衛もつけず、置き手紙の1つもせず、勝手に山奥まで2人きりで行くとは何事ですか!!私は悲しいですぞ、リクオ様…」

「ちょっと−私のこと馬鹿馬鹿言い過ぎ」

「本当のことだから仕方ないじゃろう」

「お父様って時々マジでウザイ。年頃の娘の気持ちが分かってない」

「むっ!言わせておけば…なまえこそ父親の気持ちが分かっとらん!お主達が見当たらないという報告を受けたときどれだけ心配したか分かっとるのかこの馬鹿娘!!」

「また馬鹿って言った!!も−許さないっ!くろうまる−っ!!」

「こらっあいつに頼るな!!!」

「まぁまぁ鴉天狗、その辺にしといてやれ」

「じじぃ」

「そっ、総大将…。ですが」

「2人とも無事に帰ってきてくれたんじゃ。それで良いではないか、のぅ?」

それに、と続けたぬらりひょんは庭に聳(そび)え立つモミの木を見上げる。

「こ−んな立派なクリスマスツリーまで持って帰ってきてくれたんじゃ。急いで皆で飾り付けをせねばならん」

「…………」

「ほら鴉、突っ立ってないでツリ−の飾り付け道具を持ってこい。それから納豆、なまえを探してきてくれ。恐らく黒羽丸と一緒にいるはずじゃ」

「はいよ−」

*

*

*

「…っていうわけなの。酷いと思わない?」

「親父も悪いが…お前も悪い」

「……むぅ−…」

大きなペカチュウの縫いぐるみを抱き締めたなまえはそれに顔を埋(うず)めた。

「俺もそうだが、親父、本当に心配してたんだぞ」

「……分かってるよ」

「ならいい。後でちゃんと謝るんだぞ」

「うん………」

未だ縫いぐるみに顔を埋めたままのなまえを一瞥し、黒羽丸はそっと部屋を後にした。

*

*

*

部屋を出た黒羽丸は父親である鴉天狗を探していた。庭で遊んでいた小妖怪達によると、どうやらクリスマスツリーの飾りを探しに納屋に向かったそうなので、まだそこにいるだろうと見当を着けた黒羽丸は納屋へと歩みを進める。

「えぇい何処じゃ…埃臭くて敵わん」

「親父」

「おぉ、ここにあったか…なんじゃ、息子よ」

「なまえのことなんだが…」

「…………」

「あいつは親父の言いたいことをちゃんと理解している。そのことを、頭の片隅に置いておいてやって欲しい」

「うむ」

「それと…」

「なんじゃ、まだあるのか?」

「馬鹿馬鹿言うのはなるべく止めてやってくれないか」

「………」

「俺やトサカ丸は気にしないが、なまえは違う。あいつはああ見えて以外と傷付きやすいからな」

「うむ、その件に関しては完全にワシが悪い。…善処しよう」

「頼む」

「あっ、いたいた、黒羽丸!」

「なんだ、納豆か」

「あれ、なまえは?総大将がなまえを呼んでこいってさ」

「ワシが呼んでこよう」

「親父…」

「鴉天狗が?さっきなまえと喧嘩したばっかじゃん。止めといたほうがいいぜ〜」

「いや、だからこそだ。息子よ、この箱を総大将の所まで届けてくれ。頼んだぞ」

「分かった。頑張れよ、親父」

「あぁ」

*

*

*

誰もいなくなった部屋で、なまえは一人鼻を鳴らしていた。

「お父様の馬鹿…馬鹿馬鹿言わなくたっていいじゃん…馬鹿…馬鹿鴉…」

ぎゅう、と更に強く縫いぐるみに顔を埋める。縫いぐるみのペカチュウには意志などないはずだが、なんだか少しだけ苦しそうにも見えた。そしてちょうどその時、部屋の襖が少しだけ開く。

「なまえ、入るぞ」

「…………」

「あ−、その、だな…」

「…………」

「……悪かった」

「!」

決まりが悪そうに咳払いした鴉天狗は、彼の言葉にビックリして顔を上げたなまえと目線が合わないように横を向いた。なまえはなまえで、そんな鴉天狗を穴が空くほど見つめたと思ったら、次の瞬間その瞳に涙を溜める。

「私も、ごめんなさいっ…」

そのままポロポロと涙を流すなまえは、時折苦しそうに嗚咽を漏らす。

「心配してくれたって分かってたのに、あんな口きいちゃって、それで、それで」

「…もういい。ワシも悪かった」

「うわぁぁああん!!」

「あぁ〜〜〜泣くな泣くな、年頃の娘がこれしきのことで泣くでない」

「ひぐ…ぐす、だってぇ〜」

「だっても何もない。ツリーの飾り付けをするんじゃろ?早く行かんと総大将に天辺の星まで飾られてしまうぞ」

「ダメダメ!それはなまえがやるんだから絶対ダメ!」

「ほら、涙を拭いて、こらっ、仮にも女子(おなご)が服の袖で涙を拭うでない!!」

「…お父様って細かいとこうるさいよね。言葉遣いとか」

「なっ…大体お前はのぅ、なまえ。いつもいつも…」

「あぁ〜はいはい、分かった分かった。早く行こう!!」

「…そうじゃな、早く行かんといけんな」

そう言った鴉天狗は、嬉しそうに笑った。

*

*

*

「おっ…来た来た。仲直りは出来たかの?」

「ぬらりひょん様!この通り!!」

「総大将、御迷惑を御掛けして大変申し訳ありません」

「鴉、お前はいつもいつも固すぎじゃ。こんな日くらい力を抜かんかい」

「ですが…」

「言い訳無用!ほれなまえ、天辺は取っておいてやったぞ。早く飾ってこい」

「了解death!」

ぬらりひょんから星を受け取ったなまえは、ツリ−の先っちょに其れをそっと乗せた。

「これで飾りつけは終わったね」

「にしても、流石にこれだけ大きいと圧巻だな」

「そうでしょ納豆〜。なんたって私とリクオ様が持って帰ってきたツリ−なんだから!スッゴいのは当たり前!!」

「正確には引き摺って帰ってきただがな」

「んもうリクオ様!そういう余計なこと言わないで!」

「へいへい」

「じゃ−点灯するぞ〜」

「りょ−かい」

「わ〜キレ〜〜〜イ」

「そうですな…」

「わっ木魚達磨!何時からそこにいたの!?」

「なんじゃい納豆、達磨はずっと前からここにいたぞ」

「総大将…そう言うことは早めに言って下さいよ〜」

「はいは−い、皆、集まって〜」

「若菜様?」

「どうされたんです?」

「もしかして…若菜様、お持ちのそれ…カメラですか?」

「あら首無君、御名答。お庭を見たらこれだけ大きなツリ−があったんだもの。記念写真を撮らなくっちゃ〜」

「そういうことでしたら私が」

「ダメよ首無君、皆写らなきゃ意味がないんだから。それに大丈夫、これ、タイマー設定が出来るの!ほらほら、皆並んで〜」

「「「は−い」」」

「準備出来た?じゃ−いくわよ」

若菜はタイマーのスイッチを押し、急いで列に加わった。カメラは赤い光を点滅させる。

「いくよ−せ−の、」

「待て待て!なまえ殿、我々は何と言えばいいのだ?」

「黒ォ、今日はクリスマスだよ−メリ−と言えば?」

「あぁ、分かった」

「今度こそいくよ−。メリ−?」

「「「「クリスマス!」」」」」

※強制終了
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