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雪女となまえは縁側で日向ぼっこをしていた。と、いうには語弊があるかもしれない。正しくは雪女が悪戯をする小妖怪達からなまえのところへ逃げてきたのである。リクオはあの日以来、妖怪達と一緒に悪戯をすることが少なくなっていた。それを少しだけ寂しく思う、雪女の今日である。
「そういえば…なまえ」
「なに−?」
「この間の出入りの時…貴女どこにいたの?」
雪女が言うこの間の出入りとはガゴゼ会の企みを暴いた出入りのことだ。なまえのことだからリクオが行くのなら自分も行く、と言ってきかないだろうと思っていたが、以外にも姿が見えなかったのだ。
「こないだ−?」
「そうよ。リクオ様が御学友を助けに出入りに行った時よ」
「あぁ…」
あれか…と、悲しそうに俯いたなまえ。先程までご機嫌な様子だっただけに、いったいどうしたのかと心配になった雪女はその顔を覗き込んだ。
「私ね、ニュース見てからね、直ぐにね、リクオさまを探しにいったの」
「…それで?」
「そしたらね、迷っちゃって…」
「…………」
「それで家の場所まで分かんなくなっちゃって…悲しくて泣いてたら黒羽丸が迎えに来てくれたの」
「まぁ…」
可愛い。なんて思った雪女だが、決して声には出さなかった。彼女なりに真剣に行動をしたのだから、そんなことを言うのはきっと筋違いだろう。しかし声にしなかった気持ちは顔に滲み出てしまい、今の雪女の顔はにっこりと優しく微笑んでいる。
「リクオさま、妖怪に変化したんでしょ?なまえも見たかったなぁ…」
俯いて喋っているためそんな雪女の様子になまえは気付かない。その時のことを思い出したのか、なまえは悔しそうに唇を噛んだ。あの日はさんざんだった。いてもたってもいられなくて黒羽丸の制止も聞かずに家を飛び出したはいいが、道は分からなくなるわ、無情にも日は暮れてくるわ、終いには帰ったら何故か宴会が行われていたのだ。なまえが鴉天狗に理由を聞くとリクオが妖怪に覚醒したという。妖怪のリクオが見れなかったことが悔しくてそれから暫くの間なまえはリクオに会うたびにもう一度変化しろとせがんだものだ。しかし当の本人は妖怪に変化したこと自体を全く覚えていなかったようで、なまえの必死のお願いがリクオに伝わることはなかった。
「もう一回変化しないかなぁ…」
「リクオ様はあのぬらりひょん様の孫ですもの。きっと変化も気紛れなのよ。気長に待ちましょ?」
ね、なまえ?、と、口を尖らせ不満を露(あら)わにしているなまえに雪女はそう諭した。さて、次はこのご機嫌斜めになってしまった少女のご機嫌をどう直そうか。
「あ、そうだ」
「?」
「なまえ、貴女にかき氷を作ってあげる」
「!ホント!?」
そう言った途端に先程までの不満顔はどこにいったのやら、目を輝かせながら食い付いてきたなまえに雪女は笑いを溢す。そして嘘なんて言いません、と言いながら立ち上がりなまえの手を取った。いつもは熱すぎる彼女の体温が、なんだかとても心地よく感じた。
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