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旧校舎編
なまえは下駄箱から靴を出した。ゆっくりと靴を履き、廊下を進み自教室に向かう。今は昼休みだ。廊下はガヤガヤと煩く、購買に行く生徒達で溢れかえっていた。彼らを上手く避けつつ、なまえは教室に入る。
「だから…いるんだよね!妖怪は!」
教室では清継が妖怪話をしていて、騒がしい。ふあ、と欠伸を漏らしたなまえは自分の席に鞄を置く。
「なまえちゃん?」
「あ、リクオくん」
なまえの存在にいち早く気付いたのはリクオだった。彼は未だなまえの正体に気付いていないようで、彼女のことをちゃん付けで呼んでいた。初めの数年は違和感が拭えないなまえだったが今では慣れたものである。
「何?また清継がなんかやってんの?」
「うん…妖怪存在説だって」
「へ〜」
昔小学生だったリクオが彼らに妖怪話をしたときは耳も傾けなかった生徒達が、清継の話には聞き入っている。この差はなんなのか。リクオは頭を抱えた。
「妖怪には世代交代がありいつの時代も我々の日常で悪事を働いている!!」
「へ〜〜」
「うわ〜どうしよう…」
更に頭を抱えるリクオになまえは助け船を出すことにした。
「でもね−、清継。妖怪なんているわけないじゃん。現にあんた見たことないんでしょ?んな話学校でしたら馬鹿にされるよ〜」
「きっとそ−っスよ!かしこいな〜」
「清継様カッコイイ!お話は変でも許す!」
「「………」」
溜め息を吐いたなまえはくるりと振り向きリクオの顔を見た。彼の顔はどこからどう見てもひきつっている。そんなリクオに清継は近付き、自分が惚れた人物について聞いてもいないのに勝手に語りだした。聞くとそれは幼い頃彼を地獄から救ってくれた、闇の世界の若き支配者だという。
「それって…」
思い当たる人物がいたなまえはゆっくりとその人物を再び見た。彼、リクオは更に顔をひきつらせていて、焦っているのがよく分かった。
「リクオ様…どんまい…」
彼等に聞こえないようぽそりと呟いたなまえは夜の見回りを強化するかな−、とぼんやりと思った。清継が妖怪と出会ったりしたら大変である。夜に出歩かない限りそんなことは少ないと思うが、清継ならやりかねない。そんなことを考えているうちに、いつの間にか話題は旧校舎に移っていた。旧校舎。この浮世絵中学校の怪談の1つで雑誌にも載ったくらい有名な妖怪出現スポットである。
「でもそんな古い建物この学校にはないよね?」
「なまえちゃんの言う通りだと思うけど…」
リクオとなまえがそう言った瞬間島が2人の手を掴んだ。一気に階段をかけ上がり屋上に向かう。バン、と扉を開けて降り立った屋上は晴天の空がよく見えた。
「この中学校の真横を走る東央自動車道!その向こうに古〜〜い建物があるだろ!」
「あ………」
あった。いかにも出そうなボロ校舎。
「道路を通すために引き離された、10年前から誰も近寄れない…うちの学校の旧校舎だよ」
ごくり、と生唾を飲み込んだ。ダメだ。いる。あの旧校舎には、妖怪がいる。いくら人間に変化していても、妖怪であるなまえには分かってしまった。どうしようか。若をお守りしなくては。
「ごめん…私先帰るわ」
「えっなまえちゃん!?」
雪女と青田坊にこの事を急いで伝えて、あとはお父様である。今朝のことがあって会うのには気が引けるが、仕方がない。ぎゅっと唇を噛んだなまえは走り出した。
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