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「そのままつっこんでぇえ!」

「リクオ様それマジ!?…ぎゃぁああ!!」

燃え盛る鴆の家に朧車は突っ込んでいく。急いで鴆の姿を探すと、案外直ぐに見つかった。
妖銘酒を持ったリクオが朧車で本家を出ようとしていたのは、夕方だった。鴆に謝りに行くと彼は言うので、先程鴆に会えなかったなまえも彼に着いて行くことにしたのである。ところがいざ鴆の家に着いてみると、そこは何故か炎の海で。鴆の羽根が辺りに舞っている。

「ごほっ…」

「鴆様しっかり…!」

「リ…リクオ…?それにおめぇ…なまえか?ど−してお前らがここへ…」

身体の弱い鴆は燃え盛る炎が出す煙のせいでごほっ、ごほっ、と空咳が止まらない。その様子を見たなまえは、目の前にいる敵からリクオと鴆を庇うように前に立った。

「なまえ!?」

「…紅蓮の炎」

そして辺り一面に燃えしきっていた炎を、自らの炎で焼き付くした。突然消えた炎に、鴆の部下だった者達は驚きを隠せない。

「なっ…!」

「炎が消えた!」

にやり、となまえは笑う。彼女のその姿は完全に妖怪で。何時もとは纏う雰囲気が違うなまえに、リクオは戸惑った。

「私に“普通の炎”は効かない」

「くそっ…お前があの孔雀妖怪か」

「残念だったね」

なまえはそのまま言葉を続ける。今度はリクオに向けて。

「リクオ様」

「………」

「私だって立派な妖怪。だから、本音を言うと鴆様と同じ思いでいる」

リクオ様が嫌がるから、ずっと言わなかったけど。

「………」

黙ってしまったリクオを背になまえは敵に向かって構えの姿勢を取った。鴉天狗が頷いたのを横目で確認し、抑えていた妖力を解放する。髪は赤へ。その背からは美しい翼が。

「怖がることはない…。こいつはまだ成人すらしていない小娘だ…」

それに、ペロリと蛇太夫は長い舌で自身の唇を舐めた。

「ぬらりひょんの孫。殺してオレのハクがつくってもんだ!」

本来の蛇の姿を取った蛇太夫は真っ直ぐになまえ達に向かって襲いかかってきた。バサリ、と羽根を広げたなまえはその身体で迎え撃とうとする。刹那。誰かの手がなまえの肩を掴んだ。

「!?」

「下がってろ」

その男は刀を掴み一瞬にして蛇太夫の身体を切り裂く。彼の姿に恐怖を抱いた残りの反逆者は、まるで蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。

「あんた誰だよ…?」

「……………」

事が終わり、男を知らない鴆はその正体を問うた。それはなまえも同じで、今や彼女は鴆の後ろに姿を隠してしまっている。彼女はその生い立ちゆえ、部外者の妖怪が怖いのである。そんな中ただ1人、彼の正体を知る者…つまり鴉天狗だが、が口を開いた。

「リクオ様…。また覚醒されたのですか…」

「リクオ?リクオだって!?」

「!?」

鴉天狗の言葉を聞いたなまえはそうっと鴆の身体から顔を出した。お父様曰く彼はリクオ様だという。その髪は、瞳は、背丈は、普段のリクオ様と全く異なっているというのに。

「よう鴆、なまえ。この姿で会うのは初めてだな」

声を聞けばその声までも普段の彼とは別物で。なまえはギュっと鴆の着物の袖を掴んだ。
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