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「成る程…4分の1は妖怪だって−のか…」
鴉天狗からリクオの特殊な体質について説明を受けた鴆は、納得したように息を吐いた。その傍らで相変わらずなまえは不審そうに夜のリクオの姿を見詰めている。そんななまえを小突き鴉天狗は言葉を紡ぐ。
「これなまえ。お前があれほど会いたがっていた妖怪のお姿のリクオ様じゃないか」
そのしかめ面をどうにかせい。なまえは未だ鴆の袖口を掴んだままだ。ゴホゴホと咳き込んだ鴆は、自分の身体でその姿を隠すなまえの頭をぐしゃりと撫でる。そして“願い”を口にした。
「なぁリクオ…今のオメエなら、継げんじゃねぇのか?3代目」
「…………」
その言葉にピクリ、と反応したのはなまえだ。奴良組3代目。それはリクオが継ぐものだ、いや継いで欲しいと幼き頃からなまえはずっと願ってきた。そう、自分の大将は、リクオだけ。
「オレが死ぬ前に…晴れ姿、見せちゃあくれねぇか」
「………」
鴆妖怪は自分達孔雀妖怪や鴉天狗などと違い、とても儚い。鴆も元服を迎えてからぐっと身体が弱くなった。彼の毒は刻々と彼の身体を蝕み死期を早めている。鴆の願いを聞いたリクオは持ってきた妖銘酒を鴆に勧め、自分と義兄弟にならないか、と問うた。鴆はその杯を受ける。それは鴆とリクオが親の代からではなく、直接杯を交わした瞬間だった。
「………」
そんな2人の姿を鴉天狗と共になまえは黙って見つめる。あれは本当にリクオなのか。あまりにも違うその姿になまえは未だ現実を受け入れられないでいた。
「なぁ、なまえ」
「!」
鴆と杯を交わし終えたリクオがなまえに向き直る。そして今しがた空になったばかりの杯を差し出した。
「お前も、飲むかい?」
妖しく笑うリクオ。
「い、や、えっと…あの…」
「俺はお前と正式に義兄弟になりてぇ。杯、受けてくれんだろ…?」
焦ったなまえは冷や汗を流しながら目線を泳がせた。その口からは「えっと…、」や「あの…、」などの言葉しか聞こえない。
「なぁ、なまえ?」
「…ごめん−−!」
「!!」
心の整理がつかず、冷静でいられない。結果、彼女が取った行動は羽根を広げ大急ぎで本家へと飛んでいくことだった。後ろからは鴉天狗が自分を呼ぶ声と、リクオが笑う声が聞こえる。頭が要領オ−バ−でパンクしそうで、何も考えられなかった。
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