「ねぇねぇどうだった?」
「だから普通」
「不味かったか美味しかったか聞いてるの!」
「…美味しかったけど」
榊が差し入れにきた次の日、おにぎりが美味しかったかしきりに聞かれたけど正直おにぎりを不味く作る方がすごいと思う。ましてや俺が食べたのって梅干しとおかかと鯖味噌だし。
「赤葦が美味しかったって言ってくれるなら安心かな」
「先輩達も嘘は言わないと思うけど」
「でも気を使って不味いとは言えないでしょ?」
「まぁそうだろうけど」
「赤葦は嘘とかつかないもんね」
信じてもらって有り難いけど、俺が美味いって言ったからみんなが美味いと思ってるかはわからないってことは言わないでおこう。ちょっと卑怯だけど、印象はプラスにしておきたい。
「差し入れさ、他どんなのがいいかな?」
「毎回そんなことしてたらお金かかるからいいよ」
「毎回はしないけど次もおにぎりじゃあ芸がないかなーって」
「芸って…」
差し入れがあればテンションはあがるだろうけど、その内容に大きすぎる期待はみんなしてないと思う。
「別にあの人たちはなんだって喜ぶし、差し入れなんてなくても榊が来るだけで喜ぶよ」
嘘は言ってない。
榊がくれば木兎さんのテンションが下がりづらいから他のメンバーの負担は減るし、木兎さん目当てだとわかっててもマネージャー以外の応援に少なからずモチベーションは上がってる。ちょこちょこと手伝ってるのが妹みたいだとマネージャーからも気に入られてる。だから差し入れなんてなくてもいい。
「でも私もなにかしたい」
「部員じゃないのに手伝ってくれてるじゃん」
「そうじゃなくてー!」
こうなると榊は少しめんどくさい。考えてることがまとまってるならいいけど、まとまってないときはあーでもないこーでもないと子どものように駄々をこねる。
それすらもかわいいと思えるんだから、我ながら重症だ。
「なんかこう、力になりたいの」
これ以上なにをしたいと言うのか。いや、なにをしたいかわからないからこうなってるのか。そんなこと考えなくていいのに。
「榊は応援してくれるだけでいいよ」
「えぇー」
あと、うっかり手の込んだものを作ってきたりして誰かの胃袋を掴んだりされたら困る。うっかり掴みそうにない簡単なほとんど失敗も成功もしないようなものならいいけど、榊がそれで納得しなくなる可能性があるから不安は尽きない。
「榊に応援されるだけで充分力をもらってるから」
なんて。俺よりも木兎さんの応援に真剣になるのがわかっててこんなこと言ってるんだから、俺も大概阿呆なんだろう。
「それがホントなら、嬉しいなぁ」
榊が悩むのも喜ぶのも木兎さんに関したことばかり。
苦しくなるのがわかってて、榊に笑ってほしくて話してしまう俺がいるのも事実。
「気になるならまた手伝いにおいでよ」
「えー、なんかあんまりすぐ行くとアレじゃない?」
「アレが何かわかんないけど、今更気にする人なんていないよ」
「赤葦言い方」
「だってそうじゃん」
「そうだけどさぁ」
傍から見たら、俺たちはどう見えてるだろうか。盲目な者同士、滑稽に見えてはいないだろうか。
「じゃあ行こうかなぁ」
この際周りにどう思われてもいいけど、出来ることなら俺の都合よく見えてるのが1番いいのに。なんて考えてるんだから、俺もなかなかにクズだなと思った。
(君の全部が欲しい。)