「あれ?なんか隊長久しぶりじゃない?」
「そうですか?」
「別に久しぶりってわけじゃないけどー、よく来てくれてたから、間が開いてさみしかったみたいなー?」
部員でもなんでもない私が顔を見せなかったからさみしかったなんて、マネージャーさん達は女神なんだろうか。
「どうする?見学だけにする?」
「いえ!お手伝いさせてください!」
「じゃあドリンク作る?」
「はい!」
ドリンクを作るなんて大役を仰せつかってしまった。休憩に間に合わせられるように、かつ味のいいものを作ると言う重大任務。心してかからねば。
待って!これって木兎さんも飲むんだよね?!それって凄く大変なことだよ!うわー、美味しいの作らなくちゃ!
そう思ってひたすらドリンクを作ってたけど、これって結構な重労働。腕に筋肉つきそう。マネージャーも大変なんだなぁ。マネージャーさんの助けになれることもう少し探そうかな…
「隊長ー、休憩もうそろそろだけど大丈夫?」
「大丈夫です!すみません時間かかって」
いつの間に時間が経ってたんだろう。かおりさんがお迎えに来てくれた。
間に合わないといけないと思って急いで籠にボトルを入れて持ち上げると、一緒に持ってくれる。
「いやいや、大変だったでしょ。もっと簡単なのにすればよかったね」
「いえ、いつも渡すことばっかりだったので、作れてよかったです!」
「応援隊長は頼りになるねぇ」
私もかおりさんみたいになりたい。優しくて頼れるお姉さん。もちろんゆきえさんみたいなかわいいけどビシッと言える人も憧れる。
私はお2人のどっちタイプになるのかな…
「ごめんねー、間に合ったー?」
「私が行った時にはもう作り終わってたわよ」
「ホントに?すごーい」
「いえ、そんなことないですよ」
体育館につけば、ゆきえさんも手放しで褒めてくれるから、たいしたことはしてないのになんだかすごいことをしたような気がする。
「じゃあ配っちゃおうか」
「はい!」
ゆきえさんがタイミングを見て声をかけると、ほんの少し疲れたような声で返事が帰ってくる。
「飲んだらすぐやるぞ!」
「木兎、お前ちょっとは休ませてくれって」
「倒れたら大変なんで休憩は休憩してください」
「ちぇー」
それでも木兎さんはまだまだ続けられるらしい。いつでも元気で、こっちまで元気になる。あんまり好きじゃなかった夏も木兎さんがキラキラするってだけで好きになる。
我ながら単純な思考回路だ。
「今日は応援隊長が作ってくれたのよ」
「はい!頑張りました!」
「おー!うまいな!」
粉入れて振っただけなんだけど、腕スッゴいだるい。こんなこと毎日やってるなんて、マネージャーさん達は本当にすごいと思う。
「ありがとな」
「はい!あ!いいえ!」
「なんで言い直したんだよ」
「そこははいでいいだろ」
木兎さんに褒められるだけで、私なんだってできるかもしれない。現金だけど、間違いなくそう思う。
「木兎さんのために頑張りました!」
「榊ちゃん、告白みたいになってるよ?」
「え、あ!あの、その!」
思ったことをそのまま言ったら、木葉先輩から予想外の突っ込みを頂いた。だけど、木兎さんはなんにも気にしてないみたいで「俺モテ期来てる!」なんて喜んでる。
…これ、もしかしたらうまくいったりしないかな。ぼんやり言ってみようかな。そう思って口を開こうとした瞬間、鷲尾先輩から衝撃の事実が明かされた。
「彼女いるのにモテて嬉しいのか?」
…は?彼女?
「そりゃあ応援されるのは嬉しい!」
「普通の彼女なら怒るだろ」
「そーなのか?」
先輩達の言葉が遠くに聞こえるような気がする。
整理すると、木兎さんには彼女さんがいて?モテ期ウエーいとか言ってても許してくれるような寛大な人で?しかもそれが、
「私、水道周りの片付けが残ってるので、片付けてきます!」
そんな事実、聞きたくなかった。
告白したわけでもないのにフラレるってなに?木兎さんが悪いじゃない。木兎さんの彼女さんが悪いわけでもない。好きになった私が悪いとも思いたくない。
仕方ないじゃん、好きだと思っちゃったんだもん。好きになっちゃったんだもん。それなのに、こんな終わりってないよ。
(思わなければよかった。)