あの日からずっと考えてた。たくさん考えた。泣いた日もあった。と言うか、木兎さんに彼女がいるってわかった日は泣いた。
でもやっぱり私は木兎さんが好きで、残念なことに彼女さんのことも好きなわけ。どんなに考えても泣いても全然整理も区切りもつかない。
だから、今日は区切りをつけたいと思う。
「赤葦、後でちょっとだけ話聞いてね」
「え?わかった」
赤葦にはたくさん聞いてもらったから、全部終わったら報告しなきゃね。
古典的だけど、下駄箱に手紙を入れておいた。あんな感じではあるけど相手のことをちゃんと思いやれる人だから、なんの心配もしてない。
ありがちだけど、手紙にはお昼休みの部室棟裏に1人で来てくださいって書いた。お話ししたいことがあるからってちゃんと名前も書いて、必要なら彼女さんにこの事を言ってもらってもいいけど必ず1人で来てほしいって、書いた。不安はあるけど、ちゃんと区切りをつけなきゃ。
「あれ?榊もう来てたのか」
「来てもらってすみません」
木兎さん、1人できてくれたのかな。それなら嬉しいなぁ。でも、それと同時にとても悲しい。
だって、きっと彼女さんは私に呼び出されたことを知ってるはず。それでも1人で送り出したってことは、揺るぎない信頼があるから。そもそも気付かれてた可能性が高い。
今思うと、なんかすごく恥ずかしいことしてたかも。
「あの、大切なお話があります」
「おう」
それでも、この人を好きになったことを後悔なんてしない。
「榊真夜は木兎光太郎さんが好きです」
「…あー、」
困らせちゃった。好きだから応援してきたし、それはこれからも変わらない。そして木兎さんの返事もわかってる。
「返事はわかってるので大丈夫です。ただ伝えたかったんです」
なんてわがまま。本当に想ってるなら、気付かれないうちに消してしまう方がよかった。伝える前に殺してしまう方がよかった。それができなかったのは、私の弱さ。
「すみません、こんなことしても困らせるだけでしたよね」
自分がかわいかった。なにもしないで殺される私が可哀想だった。だから、身勝手とわかりながらも伝えることを選んだ。
「いや、俺も気付かなくてごめん」
「木兎さんはなんにも悪くないです!私、木兎さんのこと好きになってよかったです。毎日楽しくて、元気でいられたので。ありがとうございました」
「俺もありがとな」
「木兎さんのこと好きですけど、それと同じくらい雪絵さんのことも好きなんです。だから…」
だからなんだって言うの?こんなの私のエゴでしかない。言う意味なんて、ない。
「…なんでもないです。また、応援に行っていいですか?」
「おう」
「今日は本当にありがとうございました」
「また放課後にな」
「はい」
たぶん、もう行かない方がいい。少なくとも3年生がいるうちは。
木兎さんが言いふらすとかそんなことは心配してないけど、どこから他の人の耳にはいるかわからない。もしも知ってる人がまだ応援に行く私を見たら、きっと神経の図太いやつだと思われるに違いない。雪絵さんに嫌われるのもいやだ。
木兎さんが見えなくなって、涙がひとつこぼれた。
もう大丈夫だと思ってたのに、ダメだったらしい。
ずっと木兎さんが好きだった。木兎さんだけを見てた。だけど木兎さんは違う人を見てて、その人と向き合っていて。私はそこに入れない。必要ない。
誰も私に気付かないようにするためにも、これ以上泣くのはもう終わり。私はもう泣かない。
あしたからは、あたらしい私。
(強くなったわけじゃないよ。)