すぐ浮上
やって来ましたGW。いったいなにがゴールデンなのか全くわからないけど、世間様はお休み。私もお休み。お兄ちゃんもお休みで帰って来た。蛍だけが合宿でいない。
そんな私はお兄ちゃんと2人、リビングでなんとなーくつけてたら始まったバラエティー番組を眺めてる。
その間にも止まらないのは私のため息。
「灯佳里はまーだ気にしてんのか」
「だぁってぇー」
お兄ちゃんといるのがつまんないとかじゃなくて、蛍がいたら完璧だったのにって勝手に思ってるだけ。
「灯佳里は本当に蛍が好きだなぁ」
「お兄ちゃんも好きだもん」
「ありがとな」
お兄ちゃんに頭撫でられるの好き。わしゃわしゃってする時とそうじゃない時、ちゃんと使い分けてるからすごいと思う。
お兄ちゃんは私を甘やかすのが上手すぎる。
「バレー部の合宿なんだろ?」
「うん」
「蛍なら大丈夫だろ。昔から器用だったからうまくやってるよ」
「でも長すぎる反抗期だし」
「ははっそれでも大丈夫だよ」
「ホントにぃー?」
「灯佳里は蛍を信じられないのか?」
「そんなことない」
「蛍ならちゃんと強くなって帰ってくるだろうよ」
お兄ちゃんの言葉がひっかったのは、私自身あの時のことを引きずってるからなんだろう。お兄ちゃんがもう気にしてないのはわかってる。だけど、私と同じく蛍もずっとあの事を気にしてる。だから蛍は、お兄ちゃんと顔を合わせようとはしない。
お母さんは「ほっといていいのよ」なんて言ってたけど、私は前みたいに3人でご飯食べたい。そんな事言っても今の蛍には拒否されるんだけど。
「兄ちゃんな、今のチームでスタメンなんだ」
「うん、それは前にも聞いたよ?」
「試合の時は弁当持って応援来てくれよ」
本人が気にしてないのに周りがいつまでも気にしてたら、本人だってどうすればいいかわからなくなる。それなら私は私を貫こう。
「もちろん!お兄ちゃんのためだけに世界で1番おいしいお弁当作る!」
私は揺るがず真っ直ぐ、ただひたすら大好きな2人を応援する。
「任せた!」
「低カロ高タンね!」
「さすが!期待してるからなー」
蛍は…仕方ない。頑固と言うか、自分の考えをはっきり持ってる子だから身内であろうと外から言ったところで無駄にしかならない。
それならちゃんと腹落ちするのを待つしかない。その時は手放しで甘やかし倒してやろう。
「あ、そう言えばね、最近レシーブ練習してるよ」
「え、蛍が?」
「うん。この間練習試合した時に下手くそって言われたのがムカついたみたい」
本当にどうでもよかったら、練習なんてしない。蛍は自分がカッコイイと思ったことをするから。
そう思うと、なんだかんだバレーもお兄ちゃんのことも好きなんだろうなって思ったら嬉しくてしかたなかった。
「ああ見えて負けず嫌いだからなぁ」
バレーをしてるお兄ちゃんがかっこよかった。楽しそうにバレーをしてるお兄ちゃんがかっこよかった。だからやりたかった。きっと子どもの行動原理なんて複雑そうで簡単で単純なんだ。
蛍はそう思ってないかもしれないけど、私は勝手にそう思うことにする。
「相手どこだった?」
「青城」
「は?ベスト4の?」
「そうそう。及川くんがいるとこ」
「はー…で?勝った?」
「勝ったらしいよ」
「え?マジで?」
「うん」
「勝ったのか…」
お兄ちゃんの雰囲気からして、青城は昔から強いらしい。試合に間に合わなくてちゃんと見れなかったから、点差とかもなんにもわかんない。
試合観てるくせに青城が強いかどうかもわかんないのかって?
高校バレーなんてお兄ちゃんの代でもあんまり観に行かなかったし(行くと蛍が変な態度になるから)、お兄ちゃんが卒業してからはちゃんと観てなかった(バレーが好きなんじゃなくて、私はお兄ちゃんと蛍がやってるバレーが好きなだけだから)。
それに、蛍は試合があっても教えてくれないし試合があるってわかっても授業とかでほとんど観る機会がなかっただけ!お兄ちゃんの代から強かった白鳥沢ならわかる。
「今度蛍が出てるの観たいな…」
「チームで1番おっきいから助かるって主将くんが言ってた」
「蛍のチームの人と話したのか?」
「間に合わなかったけど、青城の試合観に行った時に少し」
「そうか。うまくやってそうか?」
「先輩達がね、すごーくいい人。懐の深い人が多いんだろうね。同級生の子とも口喧嘩はしてたけど仲良さそうだったよ」
「ならよかったよ」
昔から気難しいところがあったけど、ある日からそれは悪化していった。それをお兄ちゃんは自分のことよりも心配してる節がある。そんなつもりはないんだろうけど、そう見えてしまうのは私も心配しすぎてるだけなのかな。
「たぶん忠くんが一緒にいるからかな」
「忠もまだ続けてるのか!」
「今ね!身長スッゴい高いよ!」
「俺抜かされたかな…?」
「うーん…蛍はおっきいかも。忠くんはどうかな」
「なんか悔しいな」
「でも嬉しいくせにー」
「そりゃあ弟の成長が嬉しくないわけないだろ?」
「うん」
蛍にも教えてあげたい。お兄ちゃんがどう考えてるか。お兄ちゃんは蛍のこと大好きなんだぞーって、教えてあげたい。
「灯佳里も頑張ってるんだろ?勉強大丈夫か?友達できたか?」
「お兄ちゃん、その聞き方だとお父さんみたい」
「なっ!?」
もちろん私もお兄ちゃんに負けないくらい蛍のこと大好きだけど!
「私のことは心配いらないよ!お兄ちゃんと蛍がいれば、私は何があっても大丈夫!」