助けにきたよ!
昨日は蛍が烏野のバレー部に入部すると聞いて、夜にテンションが上がりすぎてまったく眠れなかった。結果11時過ぎまで寝てしまったわけだけど。
「おはよー」
「休みだからってこんな時間まで寝てるなんてだらしないわよ」
それはわかってる。さすがにないなって思った。でも昨日は嬉しすぎてなかなか寝付けなかったんだもん。
今日だけ許してーって感じ。
「ほら、顔洗ってらっしゃい」
「はぁい」
なにもない床に躓きながら洗面台に向かえば、寝起きで頭がぼっさぼさな見慣れた顔とご対面。
私の寝起きの顔ってわりと蛍に似てると思うんだけど、それを言ったら本人には全力で否定された。しかもお兄ちゃんにもまったく似てないって言われた。酷すぎる。
顔洗って眼鏡かけてちゃんと自分の顔をみたら、頭だけじゃなくてクマも凄かった。ヤバい。鳥の巣みたいになってる頭もだけどヤバい。
とりあえず髪はとかして、コンタクト…とりあえず入れておこう。服はワンピースでいいや。楽だし。
適当に着替えを済ませてリビングに入ると、お母さんはキッチンにいた。時間も時間だから、お昼作ってたのかな。
「おかーさーん」
「はいはい。今ご飯できるからね」
「はぁーい…あれ?」
テーブルの上には見慣れた包み。
私はそれから目をはなすことなくお母さんを呼ぶ。
「ねぇお母さーん」
「なにー?」
お母さんはキッチンから出てこないまま、声だけ飛んでくる。作ってる途中だろうから、それはまったく構わない。
「蛍って今日部活?」
「そうよー」
土曜日が初日か…お兄ちゃんの時代と違って土曜は授業がなくなってるから、部活は1日フルでやる可能性がある。
「お昼は?」
「お弁当持っていったわよ」
これは、間違いなく蛍のピンチ。
「それっていつもの包みだよね?」
「そうだけど、なに?」
そうと決まればこうしちゃいられない!
「お母さん私ご飯いらない!」
「え?なに?」
化粧は…いいや。つい最近までスッピンで通ってたし、そもそも先生にも後輩にも見られて困るような顔はしてない!むしろ蛍に似てるって言われるかもしれない!言われたい!
「ちょっと烏野行ってくる!」
「ご飯食べていきなさいよ」
「そんなことしてたら蛍が倒れちゃう!」
「はぁ?」
チャリキーと携帯と蛍のお弁当だけ持って家を飛び出した。
お昼が何時かなんて知らないけど、飛ばせば12時には間に合う!間に合わせる!私のかわいい蛍の為に!
▽
▽
▽
「蛍!!」
第2体育館の扉は開いてた。
通常ボールが外に飛び出すのを塞ぐために、夏場以外は扉を閉じていたはず。それが開いてると言うことは、もしかしたら休憩に入ってウチのかわいい蛍がお腹を空かせて悲しい気持ちになってるかもしれない。
そう思ったらつい飛び込まん勢いになるのは仕方ない事だと思うんだよね。
「…すみません、どちら様ですか?」
「あ、灯佳里ちゃん!」
「知り合い?」
だからさ、まさかまだやってるなんて思わないじゃない!練習ではなかったけど!ミーティングに凸とか!
「すみません、お邪魔してしまったようで」
「いえ。もう休憩に入るところだったので大丈夫ですよ」
恥ずかしいことしちゃったよ。それに蛍がすっごい怖い顔してるしどうしよう。絶対怒られる。
「じゃあ時間遅れるなよ」
「あと日向と影山はちゃんと休憩しろよー」
…あれ?なんか去年より人減った?なんか怖い感じの子がいた気がするけど。
「灯佳里ちゃんどうしたの?」
「あ、忠くん!入学おめでとう!」
「ありがとう!」
うんうん。忠くんは相変わらずかわいい!
蛍なんて「うん」の1言だけだったからね!寂しすぎてどうにかなるんじゃないかと思ったよ!
「なにしに来たの」
「あ!お弁当忘れてたから届けに来たの。お昼抜きじゃあ困るでしょ?」
目的を見失う訳にはいかない。
私にはかわいい蛍を救済する使命がある!
「財布持って来てるからパンとか買ったし」
「成長期の男の子がそんなものばっかりじゃダメに決まってるでしょう!」
「別に普段は家で食べてるんだから1食くらいパンでも大丈夫デショ」
「そんなこと言わないの!ちゃんとしたもの食べなさい!」
「わかったから、うるさい」
もう!相変わらず減らず口ばっかり!誰に似たんだか!
「じゃあ渡したからね。ちゃんと食べて頑張ってね」
「うん」
でもこれで蛍にお弁当を渡すという重要ミッションを無事クリアできた。
これで午後も安心して部活できるね。
「灯佳里ちゃん見ていかないの?」
「ご飯まだ食べてないからさ。帰ってご飯食べるよ」
「そっか」
「また遊びにおいで」
「うん!またね!」
「じゃあすみませんっ失礼しました!」
よし。帰ってご飯食べよう。
起きてすぐに運動したから、今日は代謝がよくなってるかもしれない。