愛すべき兄弟!
「なんなのあの子!お姉ちゃんビックリしちゃったんだけど!」
「いや、僕の方がビックリしたから」
烏野の顧問の人と、青城の…さっき及川くんを殴ってた男の子が来てようやく青城を出ることができた。
青城難易度高すぎるよ。あとやっぱり殴られてたけど、及川くんはあの子のサンドバッグなのかな?イケメンのサンドバッグとかなにそれ新しい、おもしろい。
疲労困憊の私は嫌そうな顔を隠しもしない蛍の腕に彼女よろしくひっついて歩いてる。重いジャマ歩きづらいめんどくさいと言わんばっかりの顔でも、私の好きにさせてくれるんだから蛍も優しいよね。
…諦められてるとは思わない。
「姉ちゃん学校は?」
「終わってからダッシュで来た」
「服は?」
「駅で着替えた」
「練習試合の応援とか別にいらないから」
「だってアウェーでやるの大変って聞くから、ちょっとでも蛍の力になれたらなって思ったんだもん」
「頼んでない」
「頼まれてないけど」
「しかも間に合ってなかったよね?」
「間に合いませんでしたっ!」
悔しい。間に合わなかったのホントに悔しい!落ち込む暇があるなら次同じ事をしないように考えるのが心情だけど、こればっかりは時の運もある。
蛍がバレーしてるの観たかったのになぁ。
「おわっ」
「ちょっと、ちゃんと歩いて。腕取れる」
「わざとじゃないんだよ!ごめんね!」
「はぁ」
「まぁまぁ、わざわざ練習試合に駆け付けてくれたんだから有り難いじゃないか」
「ありがとうございます!えーっと?」
「澤村です。烏野男子バレー部の主将やってます」
澤村くんね。覚えた。
「月島灯佳里です。この間は失礼しました。いつも蛍がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ。月島はチーム1の高身長なので、正直助けられる部分も多くて助かってます」
「大地」
「え?あ、すいません、月島さんじゃなくて弟さんです!」
泣き黒子の子は澤村くんの同級生かな。なんか長年苦楽を共にしてきた空気感がある。
「大丈夫大丈夫!私も普通の女の子より身長高いからねー」
やっと止まったかなと思ったときにはこの身長。結婚する予定もないけど、この身長に対抗できる相手が少な過ぎてできるかわかんないよねぇ。
「あのっ去年の文化祭見ました。ティボルトかっこよかったです」
「ありがとー」
泣き黒子の子がなんだか少し必死そうに声をかけてくれた。
しかし、バレーとかバスケやってる子って本当にみんなおっきいと思う。ほとんどの子は私と一緒か、私よりも背が高いんじゃない?
「あと、身長聞いてもいいですか?」
「私の?173かな」
「俺とほぼ一緒…」
「スガ、俺も変わらないから安心しろ」
「でも大地の方が俺より身長高いべ。俺なんて1cm…」
「でもほら、男の子はまだ伸びるよ」
「ありがとうございます」
ノッポの私が言っても意味ないか。
でも私がこんなに身長あったら気になるよね、男の子は女の子より大きくありたいもんね。
「男の子は身長じゃないよ。器だよ」
「この間身長低いのやだって言ってなかった?」
蛍!それは今言っちゃダメなやつだから!なんで言っちゃうかなー!もー!
「前提として蛍よりかっこよくてお兄ちゃんより優しい人なら身長は問わないもーん」
「前提にしてる基準がもうおかしいんじゃないですか?」
泣き黒子くんにも言われる私ってなんなんだろう。やっぱりおかしいのかな。
「じゃあ忠くんと結婚する」
「え!?」
「ちょっと、ふざけたこと言わないで」
「だって忠くんなら私のこと知ってるし、忠くんが優しいことは私も知ってるもん」
「でも俺ツッキーよりかっこよくないし」
「忠くんには忠くんのかっこいいところがあるから問題なし!」
「山口のこと巻き込むのやめて」
うう、蛍が怒った。まだ本気じゃないけど、これはしつこくしたら口利いてくれなくなるやつだ。
別に本気で忠くんと結婚しようと思ってないよ。忠くんにも相手を選ぶ権利はあるんだから。
「大王様はダメなんですか?」
「確かにめちゃくちゃ拒否してたな」
「大王様?」
「青城の主将。さっき絡んできてた」
ああ、及川くんのことか。なんで大王様?
「いけすかねぇ野郎だが、女子がキャーキャー言うくらいだからイケメンなのは間違いない…」
坊主くんは及川くん嫌いなのかな?
逆のタイプっぽいからそんなもんか。坊主くんは坊主くんでかっこいいね。男前だよ。
「バレーもめっちゃうまいです。なんで及川さんダメなんですか」
え、なんなのこの子。急に及川くん推しされてもお姉ちゃん困るんだけど。
「そうですよ!悔しいけど大王様すごいじゃないですか!」
「ええー…」
「及川さんのなにがダメですか。チャラいところですか」
「影山ってたまにものすごいこと言うよな」
ええっと、え?
「影山くん?」
「はい」
影山くん黒髪さらっさらだね。あと背高いね。蛍よりは低いくらいかな。
「及川くんと知り合い?」
「中学の時先輩でした」
「なるほど」
だからやたら推してくるのか?
いや、それでも意味わかんないけど。
「さっき先輩が及川さんと並んでるの見たとき、なんかこう、よかったです」
「うげ、」
「なんでそんな嫌なんですか?」
オレンジの子に見上げられて初めて気付いたけど、この子めっちゃ目おっきい!
女の子が羨むだろうね…ってそうじゃなくて!
「及川くんは、なんかムリ。あの子はダメな感じがした」
転びそうになって受け止められたあの瞬間、妙な感じがした。年下とか身長とかそんなのは置いといて、うまく言葉にできないけどあの子はダメだ。
「僕もあの人を「義兄さん」なんて呼びたくないからやめて」
「絶対にないから安心してね!」
蛍が嫌なら及川くんには申し訳ないけど、全力で無視します!私、蛍に嫌われたら生きていける自信ないもん。
「あ!折角だから待ってるよ!」
「やだよ帰って」
「えー」
「まぁまぁ、折角だから待っててもらえばいいじゃないか」
「あっただ待ってるのもあれなんで、なんか手伝います」
「いえ、月島さんに手伝わせるなんてそんな」
「いーのいーの!」
「チョット、大人しくしててよ」
「あ!マネさーん!」
洗濯とか掃除とか?なんかよくわかんないけどマネージャーってざっくり言うと雑用係だよね?それならなにか手伝えることはあるかもしれないよねー。
「…俺は灯佳里ちゃんが青城の主将と付き合うとか考えられないかな」
「なんで?」
「灯佳里ちゃん、昔からツッキーと明くん、お兄さんのこと大好きだからさ」
「そう言えば月島ってお兄さんもいるの?」
「山口…」
「ごめんツッキー」
「あ!わかった!」
「なに?日向どうしたの?」
「月島の姉ちゃんって誰かに似てるなーと思ってたけど、妹に似てる」
「日向、お前妹いたのか」
「うん。なんかテンションとか似てる」
「プスッ」