昔から合わない
「けーいー?」
「なに」
「GWお兄ちゃん帰ってくるみたいなんだけど」
GWを使って、お兄ちゃんが帰ってくるってお母さんから聞いた。だから蛍の予定も聞いて、ほんの少しでもみんなでお話しする時間が作れないかなーと思ったんだけど。
「僕合宿あるから」
「えー!」
「うるさい」
私はショックで、非常にわかりやすく膝から崩れ落ちた。フローリングに叩きつけられた膝が少し痛いけど、フローリングの整った木目から目が離せない。膝痛い。
「別に合宿なんて毎年あったし、今更落ち込まないでよ」
…そうだ、運動部には合宿と言うものが存在してた。お兄ちゃんもずっとそうだったし、中学の時から蛍もよく合宿に参加してた。なんで私は今回に限ってこんなに浮かれてたんだ。阿呆か。
「うん…いつから?」
なんとか気を取り直そうと聞いたけど、それは空振りに終わることになる。
「2日の夕方から行って、日曜の夜に帰るよ」
お兄ちゃんはお仕事が順調なら3日に帰って来るって言ってた。それに、5日か遅くても6日の朝には帰っちゃうとも聞いた。
これすなわち、完全なすれ違い!
「要するにそれってずっとじゃん!」
「そうだね」
お兄ちゃんはお仕事で仙台にいるから、長期の休暇がないとなかなか帰って来れない。なかなか会えないから、ご飯作って、
「ご飯作って…お兄ちゃんと蛍と、兄弟3人一緒に食べられると思ったのに…」
「仕方ないでしょ、部活なんだから」
「うん」
少しだけでも無理なのかな?
無理だよね。合宿って泊まり込みだもんね。お兄ちゃんもそうだった。でも今お兄ちゃんが家に帰って来るのなんて少ないのに、蛍まで家にいないんじゃ団欒なんてない。
蛍だけ他のところで家族と別のものを食べて…あ!私がなにか作って差し入れするのはどうだろう!お兄ちゃんに聞けばどこでやってるかわかるだろうし、一緒に食べられないけどせめてお兄ちゃんと同じもの食べるだけでも…
「絶対、来ないでよ」
…先に釘を刺されました。
「はい」
応援したいって思っちゃダメなの?私は蛍がさらっとやっても本気でやっても手を抜いても頑張っても勝っても負けても気にしない。凹むことがあるなら私が慰めるし、頼まれれば露払いだってしたい。私は、蛍がバレーをしてるのが見れたらそれでいい。
それなのに、蛍は観に来たら嫌だって言う。
「合宿所家から遠いし、その為に誰かが抜けるわけにもいかないデショ」
「心配してくれてるの…?」
「そうじゃなくて迷惑って言ってるの」
「うん…お兄ちゃんと一緒でもダメ?」
「来たら口利かない」
「絶対に行きません」
ダメだってわかってたし、そんなことしないよ。お兄ちゃんにも蛍にも迷惑かけたくないもん。
「あのね、蛍。練習サボってとは言わないけどね?」
「うん」
「早く帰って来てね」
「…まぁ、練習が長引かなければね」
本当は私たち兄弟の中でも蛍が1番優しいって知ってる。いつもこんな態度だけど、それは私ができるだけ危なくないように、可能な限り傷付かないように気遣ってくれてるだけ。
たぶんだけど、蛍が変に周りを気にするようになったのはお兄ちゃんのこともあるんだと思う。普段はそんなことないのに、蛍は変なところで自意識過剰だから。
私はなーんにも気にしてもらわなくていいのに。
「ケーキ買って待ってるね」
「うん」
だって私は蛍のお姉ちゃんなんだから。