牧場に行く

牧場に行こうと思い立ったのは昨日の仕事中。
休みが被ることは結月に聞いてわかってた。せっかくだからどこか出掛けるかと考えてた時、森に行きたいと思った。ついでに結月は動物好きだし、乗馬したいとよく言ってたのを思い出した。

電車でだいたい1時間。ファミリー層にぴったりのここにカップルで来てるやつはほとんどいない。つーかオンリーワンかと思うくらいいない。

「ねぇねぇてっちゃん」

ハイキングコースを進んだ先。牛舎でなんか説明を聞いて(乳牛の人生?牛生?が短いことはわかった)結月は気になったらしいことを係のお姉さんを捕まえて聞いてた。
そのあとは仔牛と羊を見て馬を見に来たんだが…

「ポニー、シフトきつそうだな」
「ね」
「乗るか?」

休日と言うこともあり混んでたのが敗因だった。馬じゃなくてポニーであっても結月の反応はよかったが、長蛇の列でとてもじゃないが並びたくない。あとうっかり俺が小さいやつに乗ったら潰れそう。

「いいや。過剰シフトでしんどそうだから」
「そうか」

結月は可哀想って考えになったらしいが。人を乗せて歩いてるのをどことなく楽しそうに見てる。

「なぁ、あの黒いのかっこよくね?」
「凛々しい顔してるね…ジンくんだって」

名前が書いてあったらしい。
よくいろんなところを見てるもんだ。

「あっちに動物園みたいなのあるってよ」
「へー」
「うさぎもいるってよ」
「うさぎ?!行く!」

速攻でうさぎに目的が変わったらしい。足取り軽く道を進んでいく。
今度は多少すいてるといいんだが…

「てっちゃん!鴨!がちょう!わー!」

うさぎにたどり着く前に結月のテンションが振り切れた。カバーが邪魔らしくあーだこーだ言いながらも携帯を起動して、鴨の気分を無視して撮りまくってる。

「なに、そんな好きだったの?」
「うん、好きー」

そんなに水鳥好きだったのか。
変態みたいな声と子供みたいな奇声の間くらいの声で撮りまくってるのを見て、まぁ失敗にならなかったならいいかとやっと肩の力が少し抜けた。

「ほら、次行くぞ」
「うん。あ!うさぎ!」

子供か。

「てっちゃんてっちゃん!青いコがいる!」
「おー、ホントだ」

白と黒と青。青いのは初めて見るな。

「かわいいねぇ」
「そーだな」

ひとしきりかわいいと言ったあと、チャボは華麗なスルーを決めていた。

「こいつは?」
「小学校の時戦った相手だからいい」
「なにしたんだよ」
「飼育委員でね、3年間お世話してた」
「あー、ウチにもいたな」
「みんなサボるからさ、朝と放課後は一人でやってたの。だからチャボ捕まえるのめっちゃうまいよ」

どや顔したあと仔うさぎが入ってるケージを見つけて走っていくのを見ると、間違いないんだろうと思う。
ついでに、さんざん世話してたそいつらが死んだりしたら、誰よりも泣いてたんだろうと思う。高校の時もそのあとも、よく人のことで泣いてたからな。

「てっちゃんてっちゃん!かわいい!」
「はいはい」

呼ばれたのは一番最後のケージ。最初は空で、ふたつ目はモルモット。ハムスターを飼ってたからネズミはいいらしい。
問題の最後のケージだが、これがまたちっこいうさぎがいた。手のひらに乗るんじゃねーかってくらいちっこい。

「青いのいンじゃん」
「そう!あのコあそこから出てこないの!かわいー」

3匹団子になった最後、さっき見た青いうさぎのちっこいやつがいた。そいつは壁と前の黒いやつの間に頭突っ込んでなかなか顔を出さない。

「かわいいねぇ」
「そーだな」

なにか見るたびにかわいいしか言ってないのに気付いてンのか?気付いてねーだろーな。

「うさぎのシフトに余裕がありそうなら触るか?」
「触る!」

まぁ、結月が楽しそうならなんでもいいか。


2017/05/08