6日

「隣いい?」
「どうぞ」

今日は山口くんと同じ講義がある日です。ちょっと堅苦しい座学なので、みっちゃんはとってません。そもそも進路がちょっとだけ違いますからね。

「さすがに席埋まるの早いね」
「きっと来週の今日は席空いてますよ」
「だね」

そうだ、忘れないうちに伝えないといけないですね。

「あのね、見学なんだけどね」
「うん」
「いつ頃大丈夫とかわかんなかったんだけど…」
「ああ、いつやってるか教えてなかったもんね」
「そうそう」

よかった。覚えてくれてた。
これで忘れられてたら私はとんだピエロですよ。自意識過剰もいいところですね。

「サークルは月曜と水曜と金曜だよ。他の日にやってないって事でもないけど」

となると、ほとんど毎日やってる人がいると言うことでしょうか?

「じゃあ明日はやってるの?」
「うん。来る?」
「行っていいなら」
「え!ホントに?!」
「だ、ダメだった?」

山口くんの勢いに少し負けました。
勢いがつきすぎるのもよくないですね。これからは気を付けるようにしようと思います。

「ダメじゃないよ!」
「よかったー」
「バイトは?」
「明日はお休みなんです」

ホント偶然なんですけどね。

「まさかこんな早く来てくれると思わなかったよ」
「そう?」
「うん。それに、ツッキーが六坂さんのこと誘ったのも意外だったな」
「そうなの?」
「高校の時も部活に誰か誘うとかしたことなかったし、今もツッキーから積極的に友達を作ったりはしてないんじゃないかなぁ」

私には話しかけてくれてたのに、他ではそうでもない?たしかに人の輪の中心にいるタイプかどうかと考えると、そうではないかも知れないけど。
山口くんの友達だからと気を使ってくれたのでしょうか?それなら申し訳ないことをしてしまいました。

「女の子の友達だって谷地さんしかいないだろうし」
「やちさん?」
「高校の時のバレー部のマネージャー。ツッキーは友達なんて認めてないかもだけど」

ああ、話に聞いたマネージャーさん。やちさんと仰るんですね。
それにしても、聞く限りでは狭すぎる交遊関係から推察するに、本当の人見知りなんですかね。

「だから六坂さんがツッキーと仲良くなってくれそうで嬉しいんだ」

山口くんはお母さんですか。思春期でなにかと反発する息子を持ったお母さんですか!

「また3人でお昼食べたりしたいなー」
「じゃあ月島くんが嫌がらなかったら食べましょう」
「そうだね!」

恐ろしくいい顔しますね。この間のことを思い出してるのか、今から楽しみで仕方なさそうです。

「山口くんは本当に好きなんですね」
「そりゃあもちろん!だから六坂さんも好きになってくれたらいいな」

そうですよね。友達が友達を好きになってくれたら嬉しいですよね。

「…ふぁっ!?」

すっ好きって!今さらっと流しそうになったけど好きって!

「え?あ!ごめん!好きってそういう意味じゃなくて!!」
「わっわわわわか、わかってます、けどっ」

顔、熱い。
山口くんに他意がないことはわかってます。なのに勝手にこんな反応したらこんなんじゃバレてしまうじゃないですか。早く冷まさないと…

「六坂さんだってす、好きな人とかいるかもしれないのに、なんかごめん」
「大丈夫です!問題ないです!」
「え?」

あああ。さっき勢いに気を付けようと思ったばっかりなのに、まったく気を付けてない!

「あ!その、えっと…わわ、私も山口くんと同じで!す、好き、なので」

山口くんの言う「好き」以上の気持ちが私にあったとしても、この言葉は嘘じゃない。
否定なんてしたくない。

「本当?」
「はい」
「嘘じゃない?」
「はい」
「苦手だなーとか、思わない?」
「思いません」

もうこの際なんでもいいです。
だって本当のことを言ってるだけですから。嘘よりいいじゃないですか。

「よかったー。でもひねくれてるところあるからなぁ、何かあったら言ってね」
「そうなんですか?」
「多少丸くなったけど、高校の部員と打ち解けるのもかなり時間かかってたし」

人見知りなだけだと思うのですが…違うんですかね?
…は!もしやこれはチャンスではありませんか?

「あの、昔からのお知り合いなんですよね…」
「え?うん」
「山口くんの好きなところをお伺いしたいです」
「え!でも長くなるけど…」
「構いません!山口くんの思う好きなところを聞きたいです!」

ツッキー大好き山口くんのことですから、話が長くなるのは承知の上。講義が始まるまで全力で聞く所存です。

「えー、じゃあ俺が初めてツッキーをかっこいいと思った時なんだけど…」