19日

「…で?話ってなんなの?」
「そんな畏まったものじゃないんだけどね」

俺はツッキーをお昼に誘った。
こんなことを言ったら日向あたりに「誘わないことなんてあるの?」とか言われそうだけど、俺は今日、話があってツッキーを誘ったんだ。

「六坂さんから聞いたんだけどね?ツッキー、六坂さんの帰りが遅い日は迎えに行ってるんだって?」
「…それがなに」
「六坂さん気にしてたよ。ツッキーにとってデメリットしかないのに、どうしてこんなことしてくれるのかって」
「僕が言い出したことなんだから気にする必要ないじゃない」
「そう言うと思って同じ事言っといたよ」
「あっそ」
「思考が変な方向に向かって、切腹するって言い出したときはどうしようかと思ったけど」
「ぷ。なにそれ」

ほら、これだ。
ツッキーは六坂さんの話をすると、やけに優しく笑う。俺から切り出すと不機嫌になるのに、最終的にはこうして笑うんだ。それがなんなのか、ツッキーはわかってるのかな?

「武士じゃないのに武士道とか言い始めるしびっくりしたよ」
「六坂さんって本当にバカじゃないの?」
「うん。ツッキーくらい頭いいよ」
「なにその基準。よくわかんないんだけど」
「分かりやすいと思ったんだけど」
「山口もバカなの?」
「それは否定できない」
「否定しろよ」

だって俺、ツッキーと六坂さんより頭わるいし。ここで頭いいとか嘘でも言えないよ。

「まぁなんでもいいけどさ」

ツッキーはB定のオムライスを口に運んだ。
デザートがイチゴのミニパフェだから、今日は絶対これ食べると思ってた。今日に限らずほとんどの場合B定なんだけどね。

「そんなこと話したかったの?」
「かなり重要なことだと思ったんだけど。そもそもツッキーがあんなこと言い出すのが珍しいし」
「六坂さん、ほっとくと事件を呼び込みそうだったから」

事件を呼び込む?
そう聞いて、どっかの探偵少年の漫画を思い出した。

「警戒心ないしボケッとしてるし、へらへら笑ってるし」

たぶん、ツッキーは思い出してる。俺が知らない、ツッキーしか知らない六坂さんのこと。
六坂さんとツッキーが仲良くなってくれたらいいなとずっと思ってたからいいんだけど、なんとなくもやっとする。俺の好きな2人が好き合ってくれたら、間違いなく嬉しいんだけど。

「あ!あとツッキー免許いつとったの?」

このもやっとした気持ちはなんなんだろう。

「去年の夏」
「俺知らなかったんだけど!」
「言ってないし」
「通ったの?」
「うん」
「えー。俺いつ取ろう…」
「学生のうちに取っとかないと時間ないよ」
「だよね」

さみしい、が近いのかな。

「就活に重なる前に取った方がいいんじゃない?」

いつまでもツッキーと一緒にいられるなんて思ってなかったけど、ちょっと早いなぁ。でもここに六坂さんも加わるのかと思うと楽しみでもあるんだよね。

「うん、そうする。あれ?六坂さんって免許取ってないのかな?」
「取ってないらしいよ。鳥目が酷すぎて車の運転怖いって」
「どんだけ見えなくなるの?」
「さぁ?でも運転したら誰か轢く自信があるって言ってた」
「そんな自信は持たないでほしい」
「だよね」

今度聞いてみよう。六坂さんなら教えてくれるはずだから。

…え、教えてくれなかったらどうしよう。

「僕、今日は先に帰るから」
「明くんのところ行くの?」
「…そんなとこ」

たぶんだけど、違うんだろうな。

「わかった。気を付けてね」
「うん」

六坂さんかな?とは思ったけど、違ってても当たっててもツッキー怒りそうだから、言うのはやめた。
ちゃんと2人が付き合ったりしたら、教えてくれるようになるのかな。それはそれで楽しみだな。