20日

今日は山口くんと同じ講義のある日です。なので進行方向に山口くんがいることはなんの違和感もありません。むしろラッキーです。

「山口くんっ」
「あ、六坂さん」
「ご一緒してもよろしいですか?」
「もちろん!」

山口くんと並ぶと、やっぱりかなり身長が高いんだなと思います。少し横を見た程度では少しも顔が見えません。

「廊下で会って一緒に向かうのって初めてだね」
「いつもなかなか会わなかったよねぇ」
「六坂さんいつもギリギリじゃない?」
「前の講義が長引きがちで」
「なんの講義?」
「ゲノム」
「あー…」

思い当たる節はあるようです。他の学年のゲノムが長引くわけでないようなので、講師の方の影響でしょう。

「そうだ。ゲノムは別にどうでもよくて、聞きたいことがあるのです」
「なに?」
「男の子って、お誕生日なにもらったら嬉しい?」
「ツッキーならこの間、定期入れ千切れたって言ってたよ?」
「ふぁ?!だ、だ、なん、月島くん…!?」
「あれ?違った?ツッキーもうすぐ誕生日だからそうかなーと思ったんだけど」

いや、合ってますけど。なんでわかったんですか!エスパーですか!

「なんかバスで引っかけられて紐が千切れたんだって。使えないわけじゃないけど、すっごい微妙そうな顔してたよ」
「そ、そうですか」

じゃあ、パスケースなら使ってもらえますかね?どんなのがお好みでしょうか?シンプルなのがいいですよね。使いやすいし、月島くんっぽいのがあるといいんですけど。

「あ!六坂さんにこれ教えてあげようと思ってたんだ!」
「なに?」
「ツッキーはね、ああ見えてショートケーキが好きなんだ」

そう言われてみれば、月島くんが食べるお昼にはいつもデザートが付いてた気がします。甘党って本当だったんですね。

「あと恐竜のフィギュアが家にあるよ」
「恐竜?」
「たぶん明くんの影響かな?」

なるほど。だからスタンプも恐竜なんですね。
…だからといって恐竜関係をプレゼントするのはいささか子供っぽすぎますよね。うん。却下。

「でもね、六坂さんからのプレゼントなら、なんだって喜ぶと思うよ」
「…そうかな」
「うん。どんなに変なものでもツッキーは喜ぶよ」
「私が変なものあげる前提なの?」
「そうじゃなくて!ええっと、六坂さんが選んだってことが大切ってこと!」

この間のお兄さんも同じようなこと言ってましたね。物より気持ち。ちゃんと考えてくれたとわかるものが嬉しいって言ってました。

「そうだね、悩んで選びたい。月島くんに1番似合うものを」
「うん」

どうやら月島くんを見ていたら、好きなものがそこかしこに散りばめられてるようです。きっと鞄など少しみたら恐竜がぶら下がっていたりするのでしょうか。

そんなことを考えていたら、月島くんに会うのが楽しみになってきました。

「俺もそろそろ用意しないとなー」
「一緒に買いに行く?」
「いいの?」
「うん。今年台風多いじゃない?ひとりだと思うと出掛けるのも億劫で」

こうほとんど毎日雨だと気分も落ちますよ。偏頭痛持ちの人はかなりキツイでしょうね。

「わかるー。明日でいいやーとかやってると、次の日の方が酷かったりするんだよね」
「そうそう」
「六坂さん次のバイトっていつ?今日?」
「今日はおやすみー」
「じゃあ今日行く?明日の方が雨酷そうだし」
「行っちゃいますか?」
「うん。行っちゃおう」

山口くんとお出掛けは初めてですね。しかも共通の目的をもって出掛けるのは人生で初めてかもしれません。…もしかしたら違うかもしれませんけど。

「駅でいい?」
「LaFtもあったし濡れなくていいんじゃない?」
「じゃあ駅でいっか」

山口くんはどんなものを選ぶのでしょうか。山口くんに影響されることを考えると、ひとりで行った方がいいんでしょうけど、ひとりだとどうしても決めあぐねてしまうのでそうもいきません。そろそろ明確な意見をいただきたいところなのです。そして決定したいです。

「待ち合わせ門でいい?」
「うん。バスで駅まで行くならそれでいいんじゃない?」
「六坂さんバス?」
「さすがに歩いて来れない」
「だよね」
「山口くんはバスだけ?」
「電車も使うよ」
「そうなんだ」

初めて知りました。
もしかしたら、月島くんも電車とバスを乗り継いで通ってるのでしょうか。そう考えると、夜に連絡するのはやはり申し訳ないですね。

「今年はなんにしようかなぁ」

日頃のお礼も込めて、私もなにか素敵なものを見つけられるといいんですけど。

「いいものが見つかるといいですね」
「ね!」