25日

「…お疲れ」
「蛍くんまで巻き込んでしまってすみません」
「だから気にしてないって言ってるデショ。しつこい」
「えっと、じゃあありがとう」

お店に連絡して、お昼頃から事情聴取を受けてました。私だけだと思っていたのですが、現場に居合わせたと言うことで蛍くんも一緒に取調室にいました。

ドラマとかで見るものだと1人ずつだったはずなんですけど、なんでまとめられたんですかね。

「もう夜だね」
「まだ夕方だけどね」

17時頃と言ったら晩御飯の時間じゃないですか。晩御飯…

「ご飯食べていきます?」
「は?」
「何処かへ食べに行くにも時間的に混んでるだろうし、たいしたものは作れないけど」
「あのさぁ、君って本当に自己防衛本能が働いてないよね」

なんのことでしょうか…?昨日のことなら夜のうちに謝ったと思うのですが、もしや足りなかったとか?

「昨日は事情が事情だったからあんまり言わなかったけど、待っててって言ったのに先に帰って事件にするしその直後だって言うのに簡単に僕のこと家にあげるし、あげく今日また僕を家にあげようとするってなんなの?」
「だって、迷惑」
「じゃないってさんざん言ったデショ?なんでわかんないの?事件起こされる方がよっぽど迷惑」

どうしよう、蛍くん、すごく怒ってる。なんで蛍くん怒ってるんですか?確かに昨日のことは私が全面的に悪かったと思いますけど、なんで蛍くんをお誘いしたことがいけないんですか?

「ホントにわかってないの?」
「あの…ごめんなさい」
「あのね、僕だって男なの。この意味わかる?」
「えっ、と…?」
「女の子がそんな簡単に男を部屋にあげるもんじゃないって言いたいんだけど」

ものすごく呆れられてしまいました。
別に、私だって知らない人をそうホイホイ部屋にあげたりなんかしませんよ。相手は選びます。

「蛍くんだからって言うのは、ダメ?」

そう言ったら蛍くんは固まってしまいました。

「バカなの?それとも計算なの?」
「え?」

な、なんで…?計算ってなんの?私またなにかバカなこと言いましたか?
思い当たる節がないので蛍くんを見上げてみましたが、すごく深いため息をつかれてしまいました。

「責任は取ってもらうからね」

なんの責任?蛍くんはたまに訳のわからないことを言います。

「ほら、帰るんデショ」
「あ、うん」

そう言うと、蛍くんは極自然と私の手を取って歩き始めました。
昨日抱き上げられたり一緒の部屋で寝たりしましたけど、昨日とは心境が違います。思い返すだけでもかなりすごいことをしてしまったと思いますけど!今は今で、もういっぱいいっぱいです。

「あの、蛍くん」
「なに」

だけど手を離してくれる気はなさそうです。
変な汗かきそうですっごい嫌ですけど、ここであんまり嫌がるのは蛍くんに失礼すぎる。と言うか、私が蛍くんのことを嫌っているようにとられそうですごく不本意です。ついでに蛍くんに嫌われたら最悪です。

なので、今だけは調子に乗ってみようかと思います。

「あの、なに食べたいですか?」
「六坂さんはなに食べたいの?」
「うーん…肉じゃが?」
「そんなの作れるの?」
「うん。でも買い物しないといけなくなるから別のにしようかなぁ」
「ご馳走になるんだし、買い物くらい付き合うよ」

蛍くんはそのまま駅の方へ向かい始めました。

「けっ蛍くん!」
「なに」
「人が多いところに行くのにこんなっ」

今の状況だけ見られたら、あらぬ誤解を招きます。それは蛍くんにとって不本意でしょう。

「こんな、なに?」
「こっこんっもしお知り合いに見られでもしたら勘違いされてしまいますからっ!」
「勝手にさせておけば」

なのに、蛍くんは全く気にしていない様子でずんずん進んでいきます。一応お伝えしておくと、無理矢理引っ張られてるわけではないですよ?ペースを合わせてくれてるのか、引っ張られてるのに全く苦ではないペースです。

「が、学校の人に見られたらどうするんですかっ?!」
「見られたらなんかあるの?六坂さん彼氏できたの?」
「いえ、相変わらずいませんけど」
「ならいいデショ」

蛍くんの言うことがわからない。

「そんなことより、どこで買い物するの?」
「えっと、いつもは駅前のスーパーで」
「ふーん」

このままお買い物は決定のようです。
いいんですかね、こんな、こっ恋、人とかかか勘違いされかねない状況で誰がいるかわからない駅前なんかに繰り出して。

「それってすぐ終わるの?」
「ちょっと買い足すくらいだからそんなにかからないよ」
「なに買うの?」
「じゃがいも」
「1番大事なやつじゃん」
「あとお肉も買いますよー」

人様に食べていただくなら少しくらい奮発しないとですからね。

「蛍くんが食べたいものも作るよ」

昨日のお礼と、私が蛍くんの好きなものを知りたいだけなんですけどね。

「ものすごい手が込んだものじゃなければなんとかなると思うし、なんでも言って」

どんなのが好きなんですかね。洋食とか似合います。B定よく食べてるのはそう言うことなんですか?では肉じゃがとかあまりお好みではないでしょうか。

「…卵焼き」
「へ?」
「六坂さんの作った卵焼きが食べたい」

少し悩んだと思ったら、予想の斜め上を行く答えをいただきました。

「なんで、卵焼き…?」
「別に…前に弁当に入ってたのが美味しそうだったから…なに、なんでもいいんデショ」
「う、うん…でも、そんなのでいいの?」
「それがいいの。なに?嘘ついたの?」
「そんなことないよ!いままでで1番おいしいの作ります!」
「期待してる」

期待してる、って…

「わ、たしの、かなり甘めだけど大丈夫?」
「六坂さんの1番好きな味にして」
「うん、わかった」

頑張るしかないじゃないですか。