あなたの為だけに
私は山口とクラスが違う。
「山口ぃーーーーーーーーー!」
「はいっ!!…って、なんだ、六坂さんか。どうしたの?」
「うるさ」
「山口!今時間いいっ?」
「うん、いいけど」
それなのに山口を知ったきっかけは、このノッポ、月島にある。
「あと月島!今うるさいっていったの聞こえてたからね」
「はいはい」
性格悪いのになぜかモテる。非常に気にくわない。そして私の友達も月島が好きらしい。解せぬ。
その隣にほとんど毎日いる山口なので月島経由と言うのは腹立たしい事実だが、月島にお熱な友達のいる私が山口を知るのは当然のことだった。
「山口、僕先にいってるから」
席をはずしてくれるのは有り難いよ。間違っても月島に礼は言わないけど。
「うん。で、六坂さんはどうしたの?」
いつも月島の話をされることが多いらしい山口は、自分のこととなると驚くほど鈍くなる。いくらなんでも、今日がなんの日か忘れてるわけはない。
「山口、今日誕生日でしょ?」
「あれ?俺六坂さんに教えたっけ?」
「かなり前に」
「そーだっけ?」
忘れてても無理はない。あの日は私が月島を罵倒してるときに、偶然月島の誕生日の話になって、偶然山口の誕生日を聞いただけだから。
「山口が好きなものなんて月島くらいしか思い付かなかったから、私なりに山口が必要としそうなものを考えてみたの」
「え!?そんな!悪いよ!」
大きくない手提げ袋を出しても、山口は受け取らない。
きっとただの友達な私があげようとしてもこう言われることはわかってた。
「私使わないから山口がもらってくれないとゴミになる」
でも、山口は優しいからこう言うと受け取ってくれるんだ。
「じゃあ、ありがとう…なにか聞いてもいい?」
さっきもいったけど、ただの友達な私に山口のほしいものなんてわからない。好きなものだって知らない。
「スポーツなんてよくわかんないから店員さんにめっちゃ聞いたんだけど、テーピングなら消耗品だからいいかなって思って。サーブの時とか邪魔にならないようによさそうな素材とか聞いて選んだから、たぶん大丈夫」
「そうなの?」
「サポーターは合わせないとって聞いたからやめた。かわりに固定用のテーピングもね、入れたから、よかったら使って」
「え。テーピングって結構高くない?」
「問題ないよ。先月少しおかし我慢したくらい」
「それって結構な我慢じゃない?」
「少し痩せたから問題なし!」
「ならいいんだけど…」
山口が気に病む必要はまったくない。だって私が山口になにかプレゼントしたかっただけだから。月島じゃなくて、山口を見てる人だってここにちゃんといるんだよって伝えたかったんだ。
「かわいげなくてごめん」
「え?なんで?」
「これ女子が渡すものじゃないし、てゆーか誕生日とか関係ないし」
「それこそ関係ないよ。俺のために選んでくれたってだけで嬉しい」
「…マジで?」
「うん。ありがとう」
山口がそう言ってくれるだけでいいんだ。
「誕生日、おめでとう」
それ以上なんて望まないよ。