なんだかんだで、仲はいい
「あ!堅治おかえりー」
帰ったら電気がついてて、また電気消し忘れてんのかよ。なんて思って家に入ったら、最近聞かなくなった声が聞こえてビビった。
「は?姉ちゃん今日バイトは?」
「休みー」
「木曜なのに?」
「いつ休みでもいいでしょ」
部活やってる俺とバイトしてる姉ちゃんの時間が合わなくなるのは自然なことで、こうして顔を会わせるのはかなり久しぶりのことになる。
「飯姉ちゃんが作るの?」
「ざんねーん。姉ちゃんはさっき帰ってきたから何にもしてないよ」
「マジか」
「でもご飯はお母さんが作ってくれてるよ」
「よっしゃ」
めっちゃ腹減ってんだよな。
着替えもなんも後でいいかとリビングに入ったら、姉ちゃんに怒られた。
「用意してあげるからお風呂先に入ってきな」
「えー。腹減った」
「いいから早く行く!」
「わーかったよ」
俺は仕方なく鞄を担ぎ直して、後ろ髪を引かれながらリビングを後にする。
部活してる男子高校生がいかに腹を減らして帰って来てるのか姉ちゃんは知らないんだ。でも逆らうと姉ちゃんに蹴られる。しかもかなりの威力で。マジ姉ちゃんずりぃ。
▽
▽
「姉ちゃん風呂出たー」
「ご飯温めといたよ」
テーブルにはいつもよりちょっと豪華な晩飯。
「いただきまーす」
「お母さん張り切ったよねー」
「別に気にしてないっつってんのに」
「親としては気になるんでしょ、子供の誕生日を一緒に祝えないってことは」
そーゆーもんかね。
まぁ飯はありがたく頂きますけど。
「そういえば堅治、彼女はー?」
「別れた」
「部活と私どっちが大事なのって?」
「そ。俺、姉ちゃんに言われた通り最初に、時間作れないって言っといたんだけど」
「それでもダメかー」
やべ。マーボーうま。
「部活やってるのがかっこよくて付き合いたいと思ったなら、それは禁句だわ」
「姉ちゃんおかわり」
「はいはい」
別に彼女はいなくてもいい。でもいないよりいた方がいい。
元カノも最初は「部活頑張って」とか言ってくれてたのに…
「俺が悪かったのかな」
「わかったなら次の彼女はもうちょっと大事にしてあげなさい」
俺にはさっぱりわからないオトメゴコロってやつでも、このゴリラな姉ちゃんにはわかるらしい。さすがメス。
「サンキュ」
「別に彼女のこと擁護したい訳じゃないけど、堅治ももう少しだけ彼女のこと気にかけてあげてたら、そんなこと言われなかったんじゃない?」
「だって部活頑張ってって言ってくれてたし」
「それでも放置されたら寂しくなるの。堅治は楽しく部活してる間、彼女はひとりなんだから」
それは言いすぎだと思う。どうせ友達とかといるだろ?
「友達といる時間と彼氏といる時間はまったく別もんなの。お子様な堅治にはまだわかんないでしょうね」
「ガキ扱いすんな」
「フラれるときに天秤出されるようじゃまだガキよ」
くそ。むかつく。
「まだガキでいられるうちは部活に青春捧げときなさいな」
「彼氏いたことねぇくせに」
「あるわ!」
「え、マジで?俺知らないけど」
「コクられてとりあえずお友達からってことでOKしたらいきなり押し倒されて、なんだこいつクソだなって思ったから全力で蹴りあげて即フった」
「…どこ?」
「大事なところ」
俺でもクズだとは思うけど、そいつ大丈夫だったのか?あの蹴りだろ?そいつの今も機能してるのか?
「なんかすごい気持ち悪かった。やっぱり男は顔じゃないわ」
「一応イケメンだったのか」
「じゃなきゃ友達からでもOKしないから」
「姉ちゃん面食いだもんな」
「堅治がイケメンなのが悪い」
「あざーす」
ん?コクられてすぐフったなら、それ付き合ったって言えなくね?何秒の話だよ。
やっぱり付き合ったことねーんじゃん。
「そんなイケメンなくせにフラれちゃった堅治くんにプレゼントでーす」
「は?」
なにそれ。
いままで1回でもそんなことなかったのに。明日は夏日か?今日の最低気温4度らしいけど。
「カップケーキ。焼きたてだよー」
「なんでカップケーキ?」
「ケーキはお母さん買ってきてたから、これなら明日学校持っていってお腹すいたときにでも食べれるでしょ?」
そこまで考えてたとは…意外だ。
「バカにしたな?」
「してないです。ありがとうございますお姉さま」
「いっぱいできたからあげてもいいよ」
「これなに?」
「え?ああ、チョコチップとレモンとプレーン。あと私が食べたかった紅茶」
「マジ作りすぎじゃね?」
「それはごめん」
1個食べて残りは明日の小腹用だな。
「なんか姉ちゃんが持ってるのちっちゃくね?」
「堅治専用サイズだから」
なるほど。だから手に持ってもなんとなく収まりがいいのか。市販のってちっちゃくて持ちづらいんだよな。
「あんたは今できることを全力で頑張りな。姉ちゃんが応援してるからね」
「彼女のがいいわ」
「このやろ!」