放課後ストライド

私には、重大任務がある。

「あ、西谷ー」
「お疲れ様です!」

それがこの後輩に関してなんだけど、困ったことに私は後輩にほの字らしい。それを相談してた友達から「いい加減告白しろ」と昨日怒られた。

「今日の放課後なんだけどさ、ちょこっと時間もらってもいい?」

私だって言えるものなら言いたいさ。でもずっと言えなかったんだもん。そこらの男子よりもずっと男前で実直でかっこいいとか、ちやほやされてもおかしくないでしょ。それなのに全くのノーマークとかみんなおかしくない?いや、みんなにマークされてたら私が困るから是非ともやめてほしいけど。

「今日ッスか?」
「うん」

少なくとも、こうして待ち伏せて約束を取り付けるくらいには本気。本気とかいてマジと読む。
そこ!古いとか聞いたことないとか言わない!

「いいッスよ!」
「よかった…じゃあ体育館行くから、普通に部活行ってていいよ」
「わかりました」

快諾してもらえてなにより。ひとまず肩の荷が降りた気持ち。

「じゃあ失礼します!」
「放課後ねー」
「はい!」

相変わらず元気。西谷を見てるだけで私も楽しくなれる。
約束を取り付けたことでドヤ顔をしていた私は、教室に着いて自分の席に荷物を置くと急に事の重大さを認識し始めた。

私、さっき、何を言った…?

何を言ったか、何を話したか。思い出したら急がず焦らず荷物をおいて回れ右。いつも相談している友達2人の元に直行したのは言うまでもない。

「あ、おはよー」
「おはよー結」
「昨日言ってたこと実行してきたんでしょうね?」
「してきましたよ真緒さああああああああ!!」
「え、なに?」
「まおさって誰よ」

私さっき何言ったの?!体育館行くから、普通に部活行ってていいよ?バカじゃん!なにそれ公開?やだやだ死んじゃう恥ずか死ぬ!

「どうしよう放課後体育館行くことになってた!」
「あんたが言ったんでしょ」
「そうなんだけど!あんなの完全に勢いだよ!」
「まぁ頑張ったじゃない?」
「そうだよ!すごいよ!」
「頑張りました!」
「まだ頑張らないといけないけどね」
「そうですね!」

真緒が厳しい!いつものことだけど!
事の成り行きと私が言ったことをそのまま伝えると、2人はそれぞれ異なる表情をしてくれた。

「なんであんた体育館なんて言ったのよ」
「だって移動する時間もったいないし」
「男バレに見られるとか考えなかったわけ?」
「うぐあっ!!」

あの瞬間の私は、きっとと言わずとも何も考えてなかったんだ。

「どっどうしよう結!真緒!」
「私も着いていこうか?」
「やめなよ。自分で蒔いた種なんだから自分で収穫させな」
「まだ実ってない!」
「種は拾ってあげる」
「うわーん!」

今更どうしようもないってわかってるけど!でもなんかこう慰めてよ!

「楽しそうな話してるじゃん」
「あ、菅原!」
「ちょっと聞いてよ、咲菜ったら」
「うわーーーーーーー!ダメダメ!菅原に言っちゃダメだから!」
「え?西谷の事だべ?」
「なんでそれを…!」

は!!もしや菅原は超能力者…!?

「クラスで話してたら聞こえるって」
「うっそ!」
「あんた声大きいのよ」

やだやだ恥ずかしい!

「いや、話は聞こえてなかったんだけどさ、頻繁に叫ばれたら気になるべ」
「そんなに叫んでた?」

3人は同じ顔で頷いた。
確かに全部この2人に報告してたけどそんなに叫んでたかな?

「自覚ないだろうとは思ってたけど」
「元々六坂は元気だもんな」
「やっぱりお似合いだと思うよ」

やめて恥ずかしい。

「あ!どうせなら協力してもらおうよ!」

何を?

「菅原に頼んでさ、体育館の外に部員が出てこないようにしてもらおうよ」
「お?なになに?告白でもするの?」
「ば!ち!違うから!」
「もう告っちゃいなよ」
「無理だよそんなの!」

なに言ってるの?!

「 でも言ってみなきゃわかんねーべ?」
「そうだけど、でも私清水さんじゃないし」
「あー、確かに言ってるよね」
「あの人は次元が違うって」

わかってるんだよ、無謀なことをしようとしてるのは。それでも諦めるとかできないんだから、困る。

「まぁ告白は置いといてさ、人払いはしておくから安心して告ってこい」
「いやしないから!」

そんな騒ぎを一通り起こしてからの、放課後。正直今日の授業なんて頭に入らなかった。体育館では部員が集まり始めてるらしいけど、外には出てこないしドアも開かない。間違いなく菅原が根回ししてるんだろう。

「すんません!待たせましたか!」
「いや、大丈夫!」

西谷が来ることはわかってたのに、こうしていざ来られるとものすごく緊張する。

「で、どうしたんスか?」
「え!」

呼び出したから聞かれて当然なんだけど、いきなりこられるとやっぱり緊張するって!
でもここでモタモタしてたら西谷はいつまでも部活にいけなくなっちゃう。腹を括れ、咲菜!

「あの、菅原から今日西谷の誕生日だって聞いてせっかくだからなんかお祝いしたいなと思って勝手ながらもお誕生日プレゼント用意してみたからもしよかったら受け取ってください」

一息に言っちゃったけど聞き取れたかな?大丈夫かな?

「ありがとうございます!」

あ、聞き取ってもらえてたみたい。

「あの、1コだけお願い聞いてもらっていいですか」
「え、うん」
「連絡先教えて下さい」
「…え?」

連絡先?なんで?

「あ、やましいことはないです。お礼するにも連絡先わからないと迷惑かけちゃうので」

あ、そう言うことか。

「わかった」

西谷の携帯のアドレスと番号が、私の携帯のなかに登録された。その逆もしかり。
え、なにこれ想定外なんだけど。

「じゃあとりあえず部活終わったらメールするんで」
「え?」
「登録間違えてたら大変じゃないスか」
「そうだね。待ってるね」
「センパイもメールしてくださいね」
「うん」
「じゃあ部活行ってきます!」
「頑張って」
「はい!」

…とりあえず、明日報告する内容が増えそう。