スキだらけ
目の前には布団に包まる六坂。ベッドサイドにはスポドリと薬。額には冷却シート。
「君さぁ、ホント学習しないよねぇ」
「こればっかりは学習とかじゃないんだけどなぁ」
「同じデショ」
「辛辣〜」
そりゃ辛辣にもなるでしょ。こっちはわざわざ少ない予定を開けてたんだから。
「ごめんね」
「いいからさっさと治しなよ」
「ぅわ」
起き上がろうとするのを無理矢理押し留めた。
まだ熱が下がってないって僕が見てもわかるのに、なんで無茶しようとするのかな。
「楽しみにしてたのにごめんね」
「別にそんな事ないから」
「ふふっ」
「なに笑ってんの」
「痛い痛いっ」
笑われた意味がわからなくて、不愉快を解消する為に触った頬は見た目ではわかりづらいけど、いつもより熱い。
「いい加減自分の限界覚えなよ」
「いけると思ったんだよぅ」
「そう言うところがバカだって言ってるの」
六坂は初めて会った時からよく熱を出していた。どうやら子供の時かららしいけど、季節の変わり目に多いと気付いたのは僕が指摘してかららしい。
「薬は?」
「一昨日時点で予感はしてたから、作り置きも薬も完璧です」
「そこまでできてなんで予防ができないんだよ」
「予防はしてたよ」
できてないから今寝込んでるんでしょ。頭悪いわけじゃないのに、なんでそんなバカみたいな返答するわけ?
「昨日までに治す予定だったもん」
「結局治ってないけどね。そもそも完治してないのに出かけようとするのがありえない」
「だって、せっかく月島と遊ぶ約束したのに潰すのはやだったんだよ」
なんだよそれ。
「別に無理しなくても別の日にすればいいだけデショ」
「え、また遊んでくれるの?」
「キミの中で僕はどんな酷い奴になってるの?」
「いひゃひゃ、もう!伸びるから離して!」
「アハハ、よく伸びるねぇ」
引っ張った頬はやはりいつもより熱い。もしこうして熱が出てなかったら、気付かないまま街を歩いてたんだろうか。
「ちゃんと治るまで大人しくしてなよ」
「熱さえ下がればこっちのもんよ」
「そんなことばっかりしてるから長引くんだってわからないの?」
「わかってるよ。2、3日は大人しくしてます」
本当にわかってるのか微妙だけど、変な無茶はしないだろう。
長居しても疲れさせるだろうし、今日はもう帰るか。
「あ、ねぇねぇ」
「なに」
「帰るならさ、そこの引き出し開けてみて」
ベッドから棚までは少し距離があるから、そこじゃないとか言われながらも指定の棚を開けると、そこには文房具などの細々した物が入っていた。
その中で一際存在感を放つメッセージカード付きの長方形の包み。
「お誕生日おめでとーうツッキー」
「…やってくれるね」
「出し抜いたりー」
そもそも六坂に誕生日なんて教えてないし、まさか用意してあるなんて思わなかった。
六坂にリークしたのは、どうせ山口だろう。あいつ毎年日付が変わるのと同時に誕生日メールしてくるくせに、今年はまだ届いてない。六坂となにか話でもしてあるんだろう。
2人にハメられた気がして納得いかないけど、病人相手だし今日は何もしないで帰ってあげるよ。山口は容赦しない。
「ありがたく受け取っておくけど、大人しく寝てなよ」
「はーい」
次会う時は覚悟してもらうからね。