4日
プレゼントはどうするべきか。携帯片手に考えてみても何が好きかもわからないのに、選びようがないですよね。
「あれ?六坂ちゃん?」
「はい。お疲れ様です」
宛もなく携帯を眺めていると、先輩が来ました。
ちなみに先輩は長濱さんといいます。
「日曜にロングって珍しいね」
「廣瀬さんに、シフト代わってと言われましたので。別に予定があるわけでもなかったのでいいかなーと思って」
「無理しないでくださいね」
「ありがとうございます」
キャッシュの削除をして、休憩上がりの準備をする。
男の子って何がほしいんだろう。
高校生に聞いて参考にするのも少し違うような気がして、なにより時間もあまりないので先輩に聞くのはまた今度にしましょう。
「先輩はラストですか?」
「うん」
「勉強はどうです?」
「うーん、微妙だなー」
「根詰めすぎないようにしてくださいね」
「ありがとー」
「じゃあ、今日もよろしくお願いします」
「お願いしまーす」
ホールに出ると、多少の入れ替わりは見られるもののほとんど動きはなさそうです。
これから忙しくなるんですかねぇ。このまま暇だといいんですけど。
「いらっしゃいませー」
「今日はいますよ、赤井沢さん」
「久しぶりだなぁ!」
「あ、おひさしぶりです」
顔見知りになった常連さんに声をかけられて、少しだけテンションが上がりました。
まったく気付いてなかったのですが、確かに先月は会えませんでした。その代わりに初めて会う常連さんに会ったりしてましたけどね。
決まり文句を言いながら、空いてる席にご案内。たぶんいつものを注文するんだろうな、なんて思いながらお冷やとおしぼりを用意して向かいました。
「お待たせしました」
「ありがとう」
「先月は忙しかったのか?」
「いえ。ほとんど毎日いたんですけど、夏休みで時間がいつもと違ったので。あ、ご注文は如何しますか?」
「俺はカレー。赤井沢さんはいつものですよね」
「おう」
赤井沢さんはいつもだいたい牛タン定食です。店長も認知するくらいの常連さんなので、こっそりではなくわりとオープンにサービスできるのは気が楽です。
月島さんはその日によって違います。定食だったり小皿をいくつか選んでみたり。
「先月なかなか会えなかったから、月島が心配してたんだぞ」
「赤井沢さんなにいってるんですか!」
「事実だろ?」
ここでしか顔を合わせない、お互い名前しか知らない。それなのに心配なんてしてもらって…
「それはすみません」
「いやいや!体調崩したりしてないかなーとか勝手に心配してただけだから」
豪快な赤井沢さんとどことなく品の良さが見え隠れする月島さんは妙に馬が会うらしく、長年の付き合いすら感じます。
「昨日もソワソワしてたからな」
「来る度に見てた顔が見れなくなったら心配もしますって」
「私のような小娘の心配していただいてありがとうございます」
「六坂ちゃんは俺の妹みたいなもんだからなぁ」
「弟以外に妹も欲しいのか?」
あら、弟さんがいらしたとは。
「六坂ちゃんみたいないいこが妹だったら、赤井沢さんだってかわいくて仕方ないでしょう?」
「まぁ弟とは違うかわいさだよな」
「そうなんですよ!」
月島さんの弟さんなら、きっと優しい人なんでしょう。勝手な想像に過ぎませんけど。
「あ、呼び止めたみたいになってごめんね」
「いえ。今日はビールはいいんですか?」
「どうします?」
「やめとくか。明日早いんだわ」
「じゃあいいや」
「畏まりました」
「ありがとうね」
ああ。弟さんがいるなら月島さんに相談してみるのもありかもしれませんね。月島さんはハイセンスなイメージがありますし、なんかこう、かっこいい感じのおすすめをしてくれそうです。
しかし、常連さんって話し込んでしまいやすいのが困るんですよね。私は構わないのですが、周りの目がありますし、あまり話し込むのもはしたないのでよくないとわかってはいるのですが。悪い人ではまったくないのがまた困るんですよ。
いっそ悪い人だったらどうにでも振りきれるんですけど。
「相変わらず六坂ちゃんは人気者だねー」
「すみません長居してしまって」
「結構六坂ちゃんファンいるみたいだよ」
「それは有り難いことですね」
「ウチの常連さんに限ってないとは思うけど、帰りは気をつけてね」
「肝に命じておきます」
私なんかにそんなドラマ的展開、起こるわけもありませんが、用心に越したことはないでしょう。女のひとり暮らしは危険が一杯ですからね。
防犯対策は勿論ですが、急所を的確に突けばわりと勝てるんじゃないかと思ってます。人体の急所は覚えてますので。
伊達に知識ばっかり詰め込んでませんよ。
「大丈夫とか思ってるでしょ」
「わりと」
「何かあってからじゃ遅いんだからねー」
「はぁい」