近すぎて近付けない
佐保のことはガキん時から知ってる。なにかとすぐに泣いて俺を呼んでた。だからアルバムの中はほとんどが泣いてる佐保と俺の写真ばっかり。それが当たり前だった。俺が一緒にいて、守ってやらなきゃいけないと思ってた。
「木兎?」
それがいつからかあまり泣かなくなって、今もなにかと俺の後をついてくるけどガキん時みたいにいつも一緒ってわけじゃなくなった。背だって佐保の方がずっと小さい。たぶん身長以外も違うとこばっかりだと思う。
俺にはバレーがあって、佐保にも佐保の大切にしたいものがあるだろう。それはわかる。それでも、こうしてふと校内で佐保を見つければ不思議な感じがする。
佐保は、ずっと俺の隣にいたのになって。
「木兎!」
「お?おお、悪い」
「なに見てんだよ」
「佐保。ほら、あそこ」
なに話してんだろ。委員会に入ってたはずだから、そのことだろうか。
つーか相手の男近くね?
「八重樫さん?…お前目いいよな」
「そうか?」
「うん。それとも八重樫さんだけか?」
「んー…それはわからん!」
「本当八重樫さんのこと好きだよな」
「幼なじみだからな!」
「は?」
「え?」
なに?今なんか変なこと言った?
「お前マジでそう思ってんの?」
「お、おお」
「マジかよ」
なんでがっかりされたの?俺なんか言った?
「あんなちっちゃい人、普通見分けつかねぇだろ」
「そーかぁ?」
「八重樫さんだけなんじゃねぇの?」
「…そうかも」
考えたけど、佐保はどこにいたって見つけられる。だって俺が離れるとすぐに泣くようなやつだったから、もう佐保を探しながら歩くのが癖になってる。
癖で振り返ると、赤葦には呆れられながら名前を呼ばれるようになった。部活のやつは俺の癖の理由知ってるからな。
「お前…それが答えだろ」
窓の外に視線を戻せば、佐保はもういない。話が終わって教室に戻ったんだろう。
「え?なになに?なんの答え?」
佐保と話してたさっきの男、誰だったのかな…後で聞いてみよ。
「…勉強以外もバカだったんだな」
「む!そんなことねーぞ!」
「いや。バカだから」
だってホントすぐ泣いたんだぞ?
「こたちゃんどこー」ってすぐ泣くから、未だに近所での俺のあだ名は「こたちゃん」だ。高校生男子にそんなかわいいあだ名とかホントやめてほしい。
「他のやつはすぐ見つけらんねぇんだろ?」
「探せば見つけられるけど」
「でも探せばだろ?八重樫さんは?」
「結構すぐ見つかる」
「それがもう答えだろ」
わからん。
「佐保を探すのは俺の仕事だからな」
「誰かに言われたのかよ」
「いや?」
「木兎が自主的にやってんだろ?」
「そう!」
「子供の時から?」
「そーだな!」
「はー…そりゃわかんなくもなるか」
「俺はお前の言ってることがわからん!」
「これは俺からは教えられねぇよ」
「なんでだよー」
「木兎が自分で気付かないといけないんだよ」
そう言うと、そいつは答えをくれないまま席に戻っていった。
いつでもどこでもすぐに佐保を見つけられることで、なんか悪いことでもあんのか?