告白にルールとかない。

小休止の度に、及川さんをはじめとした先輩からやたらと声をかけられるようになった。
理由は言わずもがな。

「前から思ってたんだけどさ、佐保ちゃんってものすごい鈍感だよね」

これはなにかと佐保と一緒にいる俺を見た及川さんの感想だ。
そう思われても仕方ないだろう。休憩の時は佐保がいれば隣に行くし、普段の生活の中でも姿を見かけようものならとりあえず近寄って一緒にいる。おかげで俺が佐保のことをどう思ってるのかなんて、少なくともバレー部では周知の事実になってる。

「国見ちゃんも苦労するねぇ」

こういった絡みがかなり増えたから、たぶんからかってるだけなんだと思う。
しかしめんどくさい。

「中学の時もよく体育館来てたけど、まさか国見ちゃんの想い人だったとは思わなかったよ」
「だからなんだって言うんですか」
「佐保ちゃん高校に入ってから急にかわいくなったから、流石の国見ちゃんも気が気じゃないんでしょ?」

及川さんのその言葉に俺は首を傾げた。

「え、なに?その反応。かわいくないの?」
「いや、めちゃくちゃかわいいし最早かわいさ余って憎さ百倍ですけど、」

そうか。俺の中の佐保はそれこそ小さい時からの佐保だけど、及川さんは中学からしか知らないんだ。もしかしたら卒業する頃にようやく認識したくらいかもしれない。
そう考えたら、佐保の良いところを知らないのも納得する。

「佐保は初めから俺にとって1番かわいい人ですよ」
「…やだ、国見ちゃんがデレた」

そもそも佐保のかわいいところなんて及川さんは知らなくていい。それに、及川さんの良いところも佐保は知らなくていい。

「もういいですか?」
「あ、うん」
「じゃあ失礼します」

ただでさえ短い時間を及川さんに奪われて少し不機嫌になりつつ、体育館を出た佐保を探しに出た。
監督達にまで生暖かい目で見られるのはちょっと気持ち悪いからやめてほしい。

「佐保」
「あれ?英ちゃんなにかあった?」
「いや、佐保がいなかったから」
「もう戻るから体育館にいてよかったのに」

これだけ分かりやすくしてても気付かないんだもんな。普通気付くよな?

「俺が一緒にいたいだけだからいいの」
「最近の英ちゃんは甘えたさんだね」

もしも幼なじみなんかじゃなかったら。そう思うことが全くないわけじゃない。幼なじみじゃなくても好きになってただろうと思うけど、そんなもしもは考えたところで意味なんてない。俺は「幼なじみの佐保」を好きになったんだから。

「持つよ」
「えー、いいよー」
「いいから」

ビブスの積まれた籠を奪い取ってその手をさらってもわがままな弟が駄々をこねてる程度にしか思ってないんだろうと思うと、正直ムカつく。

「あのさ」
「んー?あ、キャラメル食べる?」
「いやいらない。話聞いて」
「どうかした?」

素直に正面から言わないと佐保はわからない。それはこの15年間でイヤになるほど分かってる。

「俺は佐保の弟じゃないし、佐保は俺の姉貴でもないよ」
「でも近いよね」
「全然違うよ。俺は佐保のことをそんな風に見たことない」
「え」

別に嫌いって言ったわけじゃないんだから、そんな寂しそうな顔しないでよ。

「反抗期、いや姉離れ」
「違うから」
「だって私のこと家族でも友達でもないって」
「そこまでは言わないけどさ、家族だったらできないから」
「なにを?」

鈍感もここまで来ると凶器になるって初めて知った。
佐保は言うよりも行動した方がわかってくれるかな。なんか説明するのもめんどくさい。

「こういうこと」

後先考えないで行動することなんてほとんどないけど、このときばかりは仕方ない。覗き見してるアホな人達を牽制したかった。
だって及川さん絶対佐保のこと好きだと思う。違ったらすいません。

「なっあ、あきっ!」
「キスするときくらい目瞑ったら?」
「だって!まさか英ちゃんにこんなことされると思ってなかったから…!」
「じゃあもう1回するから次は目瞑って。あとその英ちゃんっていい加減やめて」
「ままま待って英ちゃん!好きでもなんでもない人とお気軽にこんなことしたらダメなんだよ!」
「は?佐保のことが好きだからキスしたいし、できるならその先もしたんだけど」

そう言うと佐保はまだなにか言いたそうにしてたけど、めんどくさいから1度そのうるさい口を塞いでやった。