マリーゴールドに嘆く


「ただいまー」


帰宅を告げる挨拶を口にしても、共働きの両親が帰宅時家にいることはほとんどありません。幼少からの癖と言うのはなかなか抜けないものです。後々を思うならばこのままでなんの差し支えもないのでしょうが、返事がないと言うのは些か寂しいものですね。

そんなことはさておき、この現象をどうするべきか。ひとまず花は全て袋に詰めることにしましょう。
家につくまでに増えた花の山を適当なごみ袋にまとめると、袋の中は様々な色で輝き、まるで世界中に溢れるありったけの夢を無理矢理詰め込んでいるようにも見えました。


「このお花は、なんだろう」


袋の上から花を撫でる。
百合のような花。小さいパンジー。隣のおばあちゃんが教えてくれたマリーゴールド。他にも大小問わずたくさん。

残念なことにそれほど花に詳しくないので、袋の中の花はほとんどよくわからない花でした。
しかし、どうして私が花を出したのか全くわかりません。花を食べた覚えもなければ、最近は花壇に近付くことすらなかったのですから。


「こほん…」


ああ、普通に咳き込むこともあるんですね。それもそうか。そもそも私から花が出てくるのがおかしいんですよね。この短時間で感覚がおかしくなるとは、いやはや困ったものです。

とりあえず、これは処分しましょう。突然こんなものが大量に家にあっては両親は驚くでしょうし、なにより怖い。

花を吐いたと言う事実もそうですが、両親に心配をかけてしまうことが…違いますね。私は両親に嫌われてしまうことが怖いだけなのでしょう。
だって私はまだ働くことすら出来ない子供で、両親を含む大人の手を借りなくては普通に生活することすら出来ない。もし嫌われてしまったら、その時はどうしたら良いのか。考えることすらしたくない。

まだ日のある夕方にこんな袋をごみとして出すことも出来ないので、一度部屋のクローゼットに押し込みました。これで少しの間は隠せるはずです。

さて、晩御飯は何にしましょう。




(絶望的な悲しみ)

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