ウシノシタクサの裏側


「最近どうしたのよ」
「なかなか寝付けなくて」
「それだけ?ウソじゃないでしょうね」
「うん」


貴重な授業間の10分休み。それなのにつるちゃんはわざわざ声をかけに来てくれました。

夢見が悪くて寝てもすぐに目が覚めてしまうので、全てが嘘ではありません。
そうして夜中に起きると、必ず吐き気もついてきました。日によって吐いたり吐かなかったり、それすらも負担になって疲れは溜まる一方。それが嫌で、できる限り起きて夢も見ないほどに深く眠るか、起きた時点でもう寝ないという選択を今日まで繰り返しています。

どうして周りに隠そうか。それが何より優先されていたので、体を壊すとか倒れるなんてことを考えている余裕は、今の私にまったくなかったのです。


「倒れる前に言いなさいよ」
「うん。ありがとう」


そうつるちゃんに言ったのに、ことが起きたのは3時限目のことでした。


「島守さん、マジで大丈夫?」
「うん…」


時計が遅れていなければ、あと30分。
なんてタイミングの悪い。せめてもっと早いか遅いかしてくれたら堪えることも抜けることもできたと言うのに、こんな微妙な時間にどうして…

気持ち悪い。


「あの、無理しないで保健室行った方がいいんじゃ…」


今席を立ったら間違いなく目立つ。そして、先程心配して声をかけてくれたつるちゃんにも心配をかけてしまうことでしょう。でも、あと30分もこの状態で堪えられるかもわからない。

もし教室で花を吐いたら。そう思うと怖くて怖くて仕方がないのです。何度も繰り返し夢に見ました。
教室でも道路でも、夢で花を吐く場所は特定ではなかった。同じなのは私が花を吐いて、波が引くように周囲から人の気配が遠退いて、密やかに囁かれる。なにあれ。どっから出したの?吐いた?なにそれ。気持ち悪い。真冬の刺すような寒さよりも、氷よりも冷たい、冷ややかな言葉。

目立つのは嫌だ。注目されるなんてもっての他。でも、こっちの方が堪えられない。


「あの、すみません」
「どうした…って、お前大丈夫か?」


静かに、それでいて主張は最大限に。確実に授業を中断させる。

注目されるのは苦手なのだけれど、先生は黒板から私に視線を移すなり教科書を下げて心配の言葉をかけてくれました。
ああ、私ったらそんなに酷い顔をしてるのかしら。


「気分が悪いので、保健室、行ってきます」
「いいけど、誰かついて」
「一人で行きます」
「あ、おい島守!」


失礼だと頭で理解しつつも心配する声を遮って、席のすぐ右隣にあるドアから速やかに一人で教室を出ました。

誰かに着いてこられたら吐きたくても吐けない。いや、ついてこられても吐くことはできるけど。もし女子がついてきたらトイレにまでついてこられるかもしれない。
それだけはダメなのです。女子の噂はすぐに大きく出世して手のつけようのないものになってしまうから、絶対にバレたらいけない。

ああ、気持ち悪い…




(真実)
(あなたが信じられない)

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