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(お題の夏目の元になった話)
「ふっ…うううー…」
暗闇で泣きじゃくる彼女に、おれの手はけして届かない。
声をかけても届いていないのか反応がない。
「うええええええ」
泣かないで。
硝子のような壁に阻まれて手は届かない。声も伝わらない。
小さな彼女は泣いてる内に少し成長した。
涙こそ流れていないが、表情は暗い。
今にも泣いてしまいそうだ。
「…泣かないよ」
一瞬おれの声が届いたのかと思ったけど、どうやら独り言だったようだ。
「もう、泣かないよ」
そんな泣きそうな顔で言われても心配になるだけだ。
無理しなくていいから。
「ごめんね。今までありがとう、夏目」
そう言った彼女と初めて目があった。
彼女はやっぱり今にも泣きそうな目をして、無理矢理笑顔を作ると、音も立てず暗闇に溶けて消えた。
「夏目、どうした。夢見でも悪かったか?」
「…どうかな?」
ああ、おれはいつの間にか泣いていたようだ。
これじゃ先生も心配するよな。
(きっと彼女にはもう会わないだろう)