03/15

(他サイト影響有)


わかってたことだった。
幸村が私を見てないことくらい、初めからわかってたことじゃない。
だから大丈夫だと思ってたのに…なんでこんなに涙が出そうになるの…?

「足をくじいたのがそんなに痛むか?」
「…いたい…」

全然大丈夫なんかじゃないってなに?
わかってて好きだったのに傷付いてバカみたいじゃん。

「自力で歩けるか?」
「歩く…った…」

悲劇のヒロイン?
そんなかわいいものじゃない。これは私が選んだ恋だもの。そんなものじゃない。

「無理をしない方がいい。靭帯を傷めてるなら早めに処置しないと後で辛くなるぞ」
「わかってる。肩貸して」
「…それは腕だが」
「デカすぎるあんたがいけないのよ」

この人が幸村だったらよかったのに。

「(胸が当たっているのだが)」

でも幸村の瞳はあの子しか映してない。
そんなのわかってたことだから、悲しくも悔しくもないけど、胸がいたい。

「このままでは時間がかかりすぎる。運ばせてもらってもいいか?」

いつからかあの子じゃなくて私を見てほしくなった。

「重いからムリ」
「お前くらいたいした重さではない」

なんて我が儘。まるで子供。
こんなの、ただの無い物ねだりじゃない。

「嘘言わないで大丈夫。私重いもの」

あんたは全部わかってるんでしょ?わかってて知らないふりをしてるんでしょ?
私がずっと幸村を好きだったことも、幸村がずっとあの子を好きだったことも。

「嘘なんて言ってないさ。お前の足が治りづらくなる方が俺には問題なんだ」

優しさがいたい。

「痛みと長い付き合いはしたくないだろう?」
「…うん」

私を抱えたこの腕が幸村の腕ならよかったのに。

でも、もし本当に幸村だったら、嬉しいけど複雑だったかもしれない。
もしもの話だから現実ではありえないんだけど。

「誰も見ていないから、泣いたらいいだろう?」
「は?別に泣かないし」
「痛みは無理に我慢しない方がいい。この距離では俺にも見えないから気にすることはない」

なんなんだこの男は。そうまでして私を泣かせたいのか?
なら期待に応えてあげようじゃない。

「…いたい…」
「早く治そうな」
「ちょーいたいんだけど」
「手当てをすれば、じきに痛みもなくなるだろう」
「いたいよ…」

いつかこのいたみが癒える日はくるのだろうか…




(…っ…すんっ)




▼手当て▼

じくじくとした痛みは堪え難いものだけど、今は堪えるしかない。
私が悪いんだもの。自業自得。バカみたいで笑えてきちゃう。いやになる。

「とりあえずこれで冷やしておけ」
「ん。ありがと」
「違う」
「え?足じゃないの?」
「目だ。短時間とはいえ泣いたのだから多少腫れてるだろう?戻るまでに落ち着かせておかないとな」
「ああ、そっか」

本当、気の付く男。幸村もそうなんだけど、それはあの子にしか発揮されないのよね。
悪いとは言わないけど、やっぱり痛いなぁ…

「赤也が泣くぞ?」
「それはさすがにないでしょ」
「意外ともう泣いてるかもしれないな」
「ははっそれはちょっと見たいなぁ」

寂しいわんこ?ふふ、かわいいと思う。

「さて、始めるぞ」
「あ、うん」

靴下くらい自分で脱げるのに…なんか人に脱がされるって変な感じ。なんかちっちゃい頃に戻ったみたい。
私が顔を出さなくていいようにしてくれたのかな?それは自意識過剰か。

「湿布冷たくないんだ」
「あまりひどくない場合はこちらの方がいいんだ。包帯はきつくないか?」
「大丈夫」

柳の手あったかい。なんか安心する。
そう言えば誰かと手繋ぐとか、もうしばらくしてないかも。

「うまいね。私なんていらないんじゃない?」
「そんなことはない」
「まぁ誰かが怪我するたびに中断してたら練習にならないか」
「そのうち手当てが荒くなるだろうからな」
「イライラ?」
「そうだな」
「イライラする柳とか怖そう」

ちゃんと笑えてるかしら?

「そんなことはないと思うが」

でも、たとえ笑えてなくても見ないふりをしてくれるのよ、この男は。

「いや怖いよ。真田は肉体的な恐さだけど、柳とかは精神的にやられそう」
「ああ、それはあるかもしれないな」
「柳は怒らせないようにしないと」

そういう、人なんだもの。

「それは俺のいない所で決意するのが普通じゃないか?」
「いいのっありがとね」
「構わない。大丈夫か?」
「うん。さっきより痛くないし、もう大丈夫」
「…見てもいいか?」
「なにを?」
「目の腫れが引いてないとまだ戻れないだろう?」
「あ、そっか」

もう大丈夫とは思うけど。

「…腫れは引いたが、少し充血してるな」
「あー、そっちは冷やしてもだめだったか」
「どれ。目薬を射してやろう」
「いやいや、それくらいできるからっつか近いしこわ…」

…へ?

「…柳?今…」

目薬じゃなくて…なにしたの?

「お前の痛みを俺が癒してはいけないか?」
「それは病院で治せるし」
「痛むのは足だけじゃないだろう?」
「足、だけだけど」

なに言ってるの?

「お前はくじいたくらいで泣くような女ではないだろう?」
「痛かったら素直に泣く子ですけど」
「お前はそんな素直じゃないだろう?どんなに痛みが強くても、黙って隠してるタイプなはずだ」

本当、嫌な男だこと。

「そんなことない」
「嘘はよくない」
「嘘じゃないよ。私は長い間我慢なんてできない。いつも気付くのが遅いだけ」
「嘘だな。現にお前は精市が誰を見ているのかすぐに気付いただろう」
「なんで、」
「知っているか、か?お前を見ていたらすぐにわかる」

見てた?ああ、得意だものね。人を観察して行動パターンを把握して揺さ振りをかける、そんなテニスをしてるんだもの。

「もちろん、精市が誰を見ているかも知っている。そしてその人物が誰を見ているかも」
「…そう」
「お前の傷を俺に癒させてくれないか?」
「だめ。ムリ、そんなの」
「利用するみたいで、か?利用してくれて構わない。お前の側にいられるなら俺はそれで十分だからな」
「でも」
「否定は受け取らない。今から俺は俺のやりたいようにやらせてもらう」

は!?

「どっ同意の上でないと犯罪です!!」
「…お前がなにを勘違いしているのかはしらないが、お前が嫌がるなら強要はしない」

それは普通だと思います。
なんで敬語?

「俺はもう引かない」
「たまには引いてもいいんじゃない?」
「押してだめなら引いてみろと言うやつか」
「なに勘違いしてるんですか」
「戻るぞ。あまり長ければ精市も心配するだろう」
「あ、そうだね。ずっと柳が戻らなかったら切原泣いちゃう」
「どうして俺が出てきた?」
「切原柳に懐いてるから」
「まぁそれでも構わないか」


(ちょっと、近い)
(そうか?)

2012/03/15 誤字加筆修正


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