03/16

(他サイトの影響有)


「久しぶり」
「あ、ゆっきぃ!久しぶりだねー!!」
「一人?」
「うん。今日は一人なんだー」

跡部もいないのに一人でフラフラしてるなんて、ちょっと意外だったな。
それだけ慣れたのかな?

「ゆっきぃはなんでここにいるの?東京だよ?」
「いちゃいけなかったかな?」
「んーん。いいよ。ゆっきぃが来たかったから来たのに否定なんてできないよ」
「君こそどうして一人でいるんだい?」
「おいてかれたんだよぅ。みんな予定あるみたいで、うちだけ暇人だったからちょっとお散歩にね」
「部活は?」
「それはゆっきぃにも言えるでしょー?お休みなんですー」

あいかわらずクルクル変わる表情は幼く見えるのにどこか影が落ちて見えるのは、俺の考えすぎだろうか?
そうならいいんだけど。

「これからどこかに行く所だったのかな?」
「特に決めてないよ。ただウロウロしてた」
「そんなことしてたら変な奴に絡まれちゃうよ?」
「大丈夫!うちに絡むやつはいない!!」

うーん。そんなことはないと思うんだけど。

「ゆっきぃは?」
「俺はこっちの本屋に用があってね」
「こっちにしかないの?」
「予約した本が手違いで本店の方に届いちゃったみたいなんだ。だからそれを受け取りにね」
「わざわざ来たんだ。あの子なら絶対届くの待ってるよ」
「そうしてもよかったんだけど、少しでも早く読みたい本だったから」
「なるほど。その気持ちはうちにもわかるよ」
「老舗なのに手違いなんてびっくりしちゃったよ」

そうでなくてもこんなこと初めてだ。

「それってへんな名前の本屋さん?」
「うん。紀之圀屋って言うんだけど知ってた?」
「ん〜…行ったことないから聞いたことあるくらいかな」
「そっか。あそこは広いから迷子になるしね」
「その本屋さん、ゆっきぃでも迷子になるの…?」
「滅多に行かないしね」
「あの子が行ったらそのまま死ぬんじゃあ…」
「それはさすがにないと思うけど」

彼女、かなりの方向音痴らしいからやりかねないのかな?

「うちもそこ行ってみたい!」
「え?」
「どんだけ広い本屋さんが見たい!」

ああ、なるほど。

「いいよ。じゃあ一緒に行こうか」
「やっほーい!!」




▼到着▼

「ふおおおお…!!」
「初めて来た感想は?」
「チョーでかい!!マジマジすっげー!!」

氷帝の芥川?
まぁ気持ちはわからないでもないけど…結構懐かれてたみたいだから移ったのかな?

「俺は本取りにいくけど、君はどうする?」
「ん〜…ちょっといろいろ見てこようかなぁ。近くの本屋にないのいっぱいありそうだし」
「じゃあ一時間後にここに集まろうか」
「いいの?」
「せっかくきたんだし、俺もここにある本見たいからね」
「わかった!じゃあ一時間後にねっ」

…そう言って別れたのが一時間と少し前。方向音痴な彼女じゃないからと高をくくったのが間違いだった。

「迷子、じゃないよね…」

まだ約束した時間を少しすぎたくらいだし、夢中になって時間に気付いてないだけかもしれない。もう少し待ってみよう。
でも、万が一ってことはないかな?
さすがに泣いてはいないだろうけど、もし迷子になってたら不安で心細くなってやしないだろうか?
飴でも持ってれば少しは安心するけど、持ってないかもしれない…渡しておけばよかった。

「あ」

そうだ、携帯。もってないことはないよね?あの子も現代っ子だし。

「ゆっきぃいぃぃ」

2コール後に聞こえた声は音量こそ抑えていたが不安と言わなくてもわかるような声だった。

「大丈夫?迷子になった?」
「階段がないよーっ」
「何階にいるかわかる?」
「…わかんない」
「じゃあなんの本がある?」
「んと、絵がいっぱい。歌舞伎みたいなやつとか、天使の絵とか、なんかいろいろある」

4階かな?

「今から迎えに行くから動かないでね」
「わかった!うちはちゃんとじっとしてる!」

「うち【は】」ってことは、彼女はじっとしていられないんだろうか?

「おもしろくないかもしれないけど、なんか本見て待ってて。それとも電話してようか?」
「本見てる。待ってる」

さて、急がなくちゃ。
エレベーターに乗ってふと思った。「階段がない」って言ってたけど、エレベーター見つからなかったのかな?これなら見落としそうにないけど…

4階は和洋問わずに美術作品を集めた階になっている。
日本の美術作品には少し怖いのがあるからな。それを見つけてなければいいんだけど。

「さて、ここのどっかにいるはずなんだけど」

確かに他の階よりも無理矢理詰めた感があるな。息が詰まりそうだ。

「ぶふっ」

…なにを見て笑ってるのやら。

「見つけた」
「あ、ゆっきぃ!」

思ったより平気そうだな。

「みてみてっ真田」
「ぶっ」

え。なにこれ。ちょー似てるんだけど。あれだよ。「真田なにやってるの?」って感じ。
歌舞伎絵なのになんでこんなに似てるのかもわかんない。

「でさ、これは柳じゃない?」
「どっちかっていったら柳生じゃない?」
「えー?でも眼鏡ないし」
「眼鏡とったらこんなんだよ」
「うっそ!見たい!!」
「明日とらせようか」
「やったー!ありがとー!」

楽しんでくれてたみたいでよかった。

「それ予約してた本?」
「うん」
「じゃあ帰る?」
「君はもういいの?」
「うん。うちはゆっきぃにくっついてきただけだし、早く読みたいでしょ?」
「そんなこと気にしなくてもいいんだよ?」
「そんなことしてないよ。うちは歩きながらでも読むもん」

そんなことしてたら、ぶつかったり転んだりしそうだな。

「だから帰ろ」

もう少し一緒にいたいけど。

「…そうだね。ありがとう」
「こちらこそありがと。こんな楽しい所連れてきてくれて」

楽しんでくれたならいいか。

「もしよかったらまた連れてきてあげるよ」
「え!いいよっ悪いもん!」
「俺が一緒に来たいんだ」
「うーん…じゃあその時はゆっきぃにお願いしますっ」
「お願いされました」


(あ、ちょっとお茶しない?)
(うちのおこづかいでいけるなら)
(…いつもどこにいってるの?)


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