08/08
南沢が、サッカーをやめたらしい。
「…ねぇ南沢。サッカーやめたの?」
「フィフスセクターに逆らったら内申に影響するからな」
「それだけのためにやめるの?あんなに頑張ってたのに?」
「別に頑張ってたつもりはねぇけど」
「やめられるの?」
「…どういうことだ?」
「好きなんじゃないの?」
「別に。内申が良くなるからやってただけだし」
「じゃあなんであんなバカみたいに走り回ってたのよ」
「バカみたいってお前な…」
「毎日毎日泥と汗できったなくなってまでボールを追っかけてきたのは、サッカーが好きだからなんじゃないの?」
「だから、そんなんじゃないって言ってるだろう?」
こっちを見ようともしない。
いつもこんな感じだけど、なんか今日はイライラしてるようにも見える。
「やめられるの?」
「もうやめたんだ」
「ふぅん…そう」
じゃあなんでそんなイライラしてるのよ。目つき悪すぎ。
「ああ、そうだ」
「?」
「お前には言っておいていいかもな。まぁ隣の席のよしみってやつ?」
「なにかあるの?」
「俺、転校することにした」
「また突然ね。サッカーの件で?」
「それも一部あるな」
「一部?」
「そこまで教える必要はないだろう?」
「それもそうだわ」
本当にやめるつもりなのね。
「好きだったんだけどなぁ…」
「あ?」
「私、サッカーやってる南沢、結構好きだったのよ」
「何を言ってるんだよ」
「楽しそうだった。毎日部活が楽しみって感じがしてた」
「…そうかよ」
「だから、本当にやめられるのか気になったの」
「お前が気にすることでもないだろ」
「…そうね、戯言だったわ。忘れて」
くだらない。
南沢の事情なんて本人にしかわからないのに、なにムキになってるのかしらね。
「いついくの?」
「明日」
「それはまた急な話ね」
「まぁな」
「じゃあ、さよなら」
▼繋がらない続き▼
南沢に「お前目つき悪いよな」と言われたくらい目つきが悪い私に、後輩ができました。
部活に入ってないので初めての後輩です。
「なんでいるんですか」
「天馬くんに呼ばれちゃったもので」
ちなみに、私に懐いてくれたのは天馬くんと信助くん。
二人は素直でとてもかわいいのだけど、問題はこれ。
「部外者がいるの、オレ嫌いなんですよね」
南沢によく懐いてたらしい倉間後輩。
なんだか私に対する風当たりが強すぎてつらい。私は気にしてないんけど、天馬くんが気を悪くしそうだから困るのよ。
「それはすみません。天馬くんの私設応援団員なので」
「は?」
▼繋がらない続き▼
部外者の私がここにいていいのでしょうか…?
「なに不安そうな顔してるんだよっ」
「!水鳥ちゃん…」
びっくりしたー。
「大丈夫ですか?先輩」
「大丈夫だよ」
カシャリ
「茜ちゃん?」
「いい絵だったから撮っちゃった」
「せめて一言言えよなー。さっとりあえず座るか」
叩かれた背中がちょっと痛いけど、さすが私設応援団長。
団員に元気がないとわかるんですね。
…自分が早く座りたかっただけ…じゃないよね…
「先輩…なんか元気ない…?」
「そんなことないよ。大丈夫」
会場に来る時、南沢みたいな奴を見かけたのが気になってると言えばそう。
本当にやめたのかと思ってたけど、やっぱりやめられなかったんだって思うとかわいい。なんて言ったら殴られそう。
「でも、不安ですよね」
「南沢先輩、いたもんね…」
「んなこと今更どうしようもないだろ」
やっぱりあれ南沢だったんだ。倉間後輩大丈夫かな…
▼繋がらない続き▼
「よ」
「サッカーやめられなかったのね」
「俺はやめるなんて言ってないだろ」
「転校する前日、やめたって言ったじゃない」
「そうだったか?」
「間違いない」
「…」
ここで黙るの?
言ったこと忘れてたみたいだから考えてるのかしらね。
「お前がやめるなって言ったんだろ?」
「そんなこといってないわよ」
「俺が好きなんだろ?」
「南沢じゃなくて、サッカーをやってる南沢ね」
「要するに今の俺が好きなんだろ?」
…あら、なんか怪しい流れ?
なら早めに修正しとかなきゃよね。
「勘違いしてない?」
「なにをだよ」
「私、別に南沢のこと好きじゃない」
「…は?」
「だからって嫌いなわけではないけど」
「じゃああれはどういう意味で言ったんだよ」
「そのまま。裏も表もない」
「…ちょっと待て」
またなんか考えるの?
そうやっていつも考えてばっかりいるからダメなのよ。もっと天馬くんを見習うべきね。
「それ、他のやつにも言ったのか?」
「今の所天馬くんと信助くん。あとはしん…」
「もういい」
なに頭抱えてるのよ。
「お前さ、あんまりそういうこと周りに言うな」
「いいじゃない。楽しそうにしてる人は好きだもの」
「それはわかったから」
勝敗が最初から決められてる試合は辛そうだったけど、練習やただサッカーボールを追いかける姿はみんな楽しそうだった。
「誰に言ったなんて知らないけど、あんまり言わないほうがいいんじゃないか」
「どうして?」
「どうしてって…」
「気持ちっていうのは、伝えられる時に伝えておかないと後悔するわよ」
「…お前は後悔したことがあるのか?」
こんな言い方したらそう取られても仕方ないか。
「後悔って言ってもたいしたものじゃないわ」
「そうか…って、うまい具合にはぐらかすな」
「そんなつもりはなかったんだけど」
「いいから、誰でも彼でも気軽に好きとかホイホイ言うな」
「南沢にそんなこと言われる筋合いはないわよね?」
「俺が言わないで誰が言うんだよ」
「…さぁ?」
なんなの?
前から妙だ面倒だと思ってたけど、転校してからより面倒な性格になったんじゃない?
「…お前の信念に則ってやるからよく聞け」
「信念って程のものでもないけど」
「授業を受けるお前が好きだった」
「それはありがとう」
「お前の髪の長さだと下向いた時に首見えるだろ?それも好きだ」
なんか…そんな補足されると前の言葉まで変態臭く聞こえるんだけど…あ、元から変態だったのね。
「だから、ホイホイ好きとか言うな」
「ちょっと待って。なんか話飛んでない?」
「あ?飛んでねぇよ」
「飛んだわよ」
「この程度じゃ伝わんねぇってことか」
「よくわかんないんだけど」
「お前が好きだ」
「はぁ」
「マジ調子狂う」
「だって言ったじゃない。私、南沢のことなんとも思ってないって」
「でもサッカーしてる俺は好きなんだろ?」
「他の人にも言えるけど」
「責任はきっちりとってもらうからな」
「だからなんのことかよくわかんないって」
(気になってた女に好きだって言われたら)
(やめるわけにいかないだろ)
(沢さんがわかんない…)
(もっといい台詞はなかったのか?)
(てゆーか甘いのかどうかもわからない)
(…沢さんってS?)
(え?矛盾がある?)
(ワタシナニモワカラナイヨ)
(クーデレ希望)