08/22

(大人で付き合ってる設定)
(しかし同棲はしていない)
(同棲はしていない)
(重要なので二回言いました)



「大丈夫かい?」

なんの前触れもなく、無遠慮に部屋に踏み込んできたのは彼氏でもある照美。

「あれ?どうしたの?」

合い鍵を渡してあるからいいんだけど、少しはないのかな?女の子の一人暮らしの部屋に入るんだよ?
…だからって恥じらわれてもかわいいだけか。

「風邪ひいたんだって?」

それにしても相変わらず綺麗な髪してるわー。
ちょっと眩しい。

「あれ?なんで知ってるの?」
「鬼道くんに聞いたよ」

…あいつにも教えた覚えはないんだけど…

「なんかごめんねー」
「本当にね。こんな夏も終わりかけに風邪ひくなんて本物のバカなんじゃない?」
「店長にもらったんですー」
「へぇ。君は病気まで貰ってしまう程のお人よしだったんだ。それは知らなかった」

なにか買ってきたらしい袋をテーブルに置きながら、とてもいい笑顔で私をみた。
いつもは白いキラキラを背負ってるのに、今日はどす黒いオーラを背負って見えるよ。

「店長とナニしたらそんな簡単に風邪が移るわけ?」
「普通に仕事してただけだってば」
「僕に隠れてそんないかがわしい仕事してたんだ」
「どんな勘違いしてんのよっ」

私の今回の風邪で面倒な所は、熱が上がっただけで鼻炎はおろか咳すら出ない。一見したら風邪っぴきだなんてわからない所だ。
店長はひどいことになってるんだけどなぁ…店にくるなって言っても来るんだもん。本当仕方ない人。

「お粥食べれそう?」
「照美の手作り?食べるー!」
「…君、本当に熱あるの?」
「8度!」
「ならそれらしい態度でいてくれないかな」
「だって熱があるだけで他はなんともないんだもん」
「そう」
「店長なんて咳も鼻もヤバいのに出勤してくるんだよ?ふらふらしてるから座ってっていっても動いて食器割ったりして仕事増やすし帰らないし」
「わかったからお粥ができるまで黙って寝てて」
「はい」

黒照美再び。

だって元気なんだもん。超寒い時と超暑い時があるけど、なんとも言い難い怠さもあるけど元気なんだもん。
それに照美の手料理楽しみなんだもん!

「まったく…病気の時くらい僕を頼ってくれてもいいと思うんだけど」





「起きられる?」
「うん」
「熱いから気をつけるんだよ」

 
狭い私の1DKの部屋では、布団のすぐ横にローテーブルがある。収納が多い部屋なおかげて部屋はこざっぱりとした印象があるが、収納の中は大変なことになってる。
怠い体を起こしてお粥に向かう私を見ると照美は再びキッチンへ向かった。

「…味ない」

どんな高熱が出ようと味覚が変わらないのは普通じゃないらしく(気持ち悪くて一切食べられなくなったことはあるけど)誰かの作るお粥はたいてい味がしたい。
私の鬼より怖いお母様はちゃんと味があったけど…さすが母としか言いようがない。微妙な味覚の変化(この場合変わってないけど)もわかってお粥を作ってくれてたんだもん。

それでも黙々とお粥を運ぶ私の元に、これまた涼しい顔をして照美が戻ってきた。

「相変わらず病人らしくない食欲だね」
「少しは落ちてるよ」
「それでやっと人並みか」

…失礼ね、まったく。

「りんご切ってきたよ」
「私がりんご好きだなんて言ったっけ?」
「鬼道くんに聞いたんだよ」

またあいつか。

「普段はりんごなんてまったく食べないのに風邪をひくと食べるんだってね」

鬼道は中学で知り合った憎き敵だ。なぜか私の個人情報を集めたやつで、今回のような妙な趣向まで知ってる。
しかも妹ちゃんまで一緒になって集めたらしいから強く言えない。

一度責めたことがあるが「春奈が嬉しそうに話していたからな」なんて言われたらもう突っ込めなかった。
あいつのシスコンは救いようもないが、私の女の子に弱い所も同時に救いようがない。

ようするに、妙な所で似ているのだ。

「あ、うさぎ」
「好きなんでしょ?」
「…これも鬼道から?」
「理由も聞いたよ」

やっぱり敵だ!
小さい時のこっぱずかしい理由まで知ってるなんてなんなんだあいつは!!

「僕も好きだったな。うさぎのりんご」
「じゃあ照美が風邪ひいたら作ってあげる」
「僕が簡単に病気になると思うのかい?」
「ふふっどうなるかわかんないじゃん」
「じゃあその時はお世話になろうかな」



(独りで頑張る二人)
(だから通じるなにかがある)


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