09/16
『う〜…にゃー!!』
「わかったから少し静かにしててくれるかな?」
『やぁだー』
「もう家に着くからね」
こんなに酒癖が悪いなんて思わなかった。
いつもはこんなベロベロになるまで呑む所なんて見たことがなかったし、そもそも自分のペースを守る人だから。
だから、きっと強い人なんだろうと勝手に思ってた。
『ねーゆーきー?』
「なんですか?」
『しね』
「いきなり?!」
『敬語なんてきらい。そんなゆーきもきらい』
「あー、ごめん」
『ん…ねぇたちむー?』
「…なん、に?」
『今怒った?』
ああ、仕返しか。
そう思うのはあまりに簡単で。
「全然」
付き合い始めはよく怒られたなぁ…なんて思い出した。
『今日もね、えんじときどーが妹談議しててね』
普段はあまり口数が多くないけど、お酒がある程度はいると饒舌になる。もちろんそれは親しい人達の前でだけ。
…オレだけじゃないのが残念な所。
「はい、ついたよ」
同棲はしてない。合い鍵を貰ってるからそれで開けただけ。
これだけ酔ってたら鍵を出すのも大変だろうから。
『あーとー』
ふらりと危うい足取りで靴を脱ぐと、まっすぐ部屋の奥に入っていく。
「あ、化粧!落とさないと大変なことになるんじゃないの?!」
いつか聞いた。化粧したまま寝ると、なんかいろいろと肌によくないらしい。
脱ぎ捨てられた靴を直して追い掛けると、早くも ベッドでうとうとしてた。
「化粧は?」
『ん…落とさなくても、大丈夫なやつにした』
それがいいと思う。
化粧をする習慣に今だ慣れないらしく、すぐに肌トラブルを起こしてるのは周知の事実。
「寝る?」
『うん…ごめんね…?』
「なにが?」
『今日、いきなり呼び出して…家まで送らせて…』
「いいから。眠いならもう寝た方がいいよ」
『うん…ありがと…』
蚊の鳴くような声が止んだのを確認してから、帰ろうと腰を上げたとき。
「…え?」
スーツの裾が何かに引っ掛かった。
いや、引っ掛かるわけがない。近くにはベッドしかないし、寝具のすぐ近くにスーツがしっかり引っ掛かっるような取っ掛かりもない。
『ね、ゆーき』
眠そうな声で彼女がスーツを引っ張ってた。
「なに…?」
嫌な予感がする。そしてきっと、たぶんそれは当たるような気がする。
『あのね、ちゃんと、寝るまで…そばにいて…?』
ああ、もう。
そんなこと言われたら…
「水取ってくるだけだから」
『いらないから、いて?』
「ちゃんとここにいるから…ね?」
『ん…』
一歩だって動けそうにない。
「おやすみなさい」
本当はスーツを脱げばいいってわかってる。でもそれをしないのは、こうして酔って帰った時、オレだけに見せる年上の彼女の甘えたな所がどうしようもなく愛しいから。
(たちむーは私の中で敬語キャラだから結構序盤でよくわからなくなった)
(しかし引き返せなくなった)
(なんてこった)