09/18

(狂愛)


「ねぇ先輩?」
「なぁに?長太郎」
「俺、頭がおかしくなったのかも知れません」
「どうしたの?」
「最初はこんなこと思わなかったんです。でも気付いたらずっと考えてしまって、最近は毎日考えてるんです」
「なにを考えてるの?」
「先輩は、聞いてもどこにも行かないですか?」
「うん」
「引かないですか?」
「うん」
「泣かないですか?」
「泣かないよ」
「嫌いに、ならないですか?」
「もちろん」
「…先輩、好きです」
「私も好きだよ」
「愛してます」
「うん…ねぇ長太郎。絶対大丈夫だから、言って?」
「はい…」
「大丈夫だよ」
「俺、先輩が食べたいです」
「へ?」
「その、いやらしい意味ではくっ!あの、物理的と言いますか、その」
「食欲?」
「…に、近いです…」
「へぇ…」
「気持ち悪いですよね。すみません、こんなこと…」
「私も…」
「え?」
「私も長太郎に食べられたい。食事的な意味で」
「本当ですか?」
「うん。長太郎はいつから私を食べたいと思ったの?」
「…少し前に、先輩指切りましたよね」
「そうだね。紙で切るなんて久しぶりでびっくりしちゃった」
「血、出ましたよね」
「うん」
「ずっと前から思ってはいたんです。先輩は、もし食べることができたならきっと甘いんだろうなって」
「ふふっ鉄の味しかしないと思うよ?」
「でも、きっと甘いと思うんです。どんなお菓子よりも甘くて、どんな果物よりも柔らかい酸味で、いつまでも食べていられるだろうなって」
「なんでそう思ったの?」
「大好きな先輩だから」
「私も長太郎がだぁいすき」
「先輩はいつから食べられたかったんですか?」
「生まれた時から」
「からかわないでください」
「本気だよ。私間違えて生まれちゃったから、私を本気で愛し抜いてくれる人に食べて貰おうって決めてた」
「間違いだなんて言わないでください」
「ごめんね?」
「俺は先輩に出会えなかったらなんて考えたくもないです」
「私も、長太郎に会うために生まれたんだと最近は思ってる」
「先輩」
「だから、私を食べたいと思う長太郎は間違いなんかじゃないよ」


(でも俺は)
(まだ先輩と二人でいたい)
(じゃあ)
(いつかちゃんと食べてね)


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