03/06
《おめでとう。君は選ばれたのだよ》
テレビの向こう側。わたしは小さいときからそこにいきたくて仕方がなかった。
《偶然とも言える奇跡によって選ばれたのだ》
ある時を境にその感情は決定的に変わった。どうしてもいきたくなった。どんな手を使ってでもいきたかった。
《故に、どんな願いも叶えてあげよう》
その為に枕の下に漫画を入れてみた。漫画に頭を突っ込もうとしてみた。 テレビに猪の如く突っ込んでみた。よくわからないおまじないも試した。呪い紛いのこともしてみた。
《君は選択することができる。本来なら、選択処か私と会話することもないのだけれどね》
でも、勿論そんなことはできなかった。
わたしは三次元の【人間】で、彼は二次元の【キャラクター】なんだもの。
《けして実らぬ恋か…美しいが、薔薇よりも鋭く隙なく君の心を傷付け続けよう》
そんなことわかってた。わかってたはずなのにわからなくなってしまった。好きが大きくなりすぎて抑えられなくなってた。
《なかなか苦しい思いをしてきたようだね…辛かったろう?》
だって、気付いたら好きになってたんだもの。仕方がないじゃない。
《私に理解するということは出来ないが、その気持ちを察することならできよう》
わたしが【こっち側】に産まれてしまっただけ。彼が【向こう側】で生まれてしまっただけ。
《そう。それだけの違い》
たったそれだけなのにどうしようもできない距離。そんな優しくない、絶対に縮めることの出来ない次元と言う名の距離。
《しかし、そのような違い、私の前では無意味なのだ。なんの意味もない》
それが突然なくなるなんて、意味がわからないにも程がある。
《さぁ、選ぶが良い。次元を越えるか、再び死の痛みを受け入れるか》
…え?
『ぁ…ぅ、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!い゛ぃぃ、痛…ぃ…た』
《耐え難いだろう?心理的な痛みと肉体的痛みは、感じる脳細胞こそ同じだが根本的には違うものだ》
そうだ。わたしはしんだ。
駅の階段から落ちて、きっととても恥ずかしくて見苦しい姿になってるだろう。
《見苦しいことこの上ない、それはそれは無惨な死体だ》
いやだ、まだしにたくない。
《だろう?ならば迷うこともなかろう》
わたしは、あんなつまらない世界でなにもなく死にたくない。
《さぁ、言え。私に自ら宣言するのだ》
わたしは、あの人に会いたい。
《さぁ》
あの人と話したい。
《さぁっ》
あの人の隣に並びたい。
《さぁ!!》
あの人の…
『あの人のいる世界で、わたしは生きたい!!』
《聞き届けた!貴様の願い、この私が叶えよう!!》
(ああ、人間とはなんて愚かなのだ)
(ああ、わたしはなんて愚かなのか)
(こうも簡単にいくとは思わなかった)
(まさか悪魔との契約を交わすなんて)
(だから人間は好きなんだ)
(だから自分が嫌いなのよ)