サクラサケ
入学式を終えてまだ数日。新入部員を獲得しようと先輩達がざわめく校内で、見慣れた人を見つけた。
「月島ー!」
目立つ長身にはちみつ色の頭。
「げ、」
反射で振り返った当人は、とてつもなく嫌そうな顔を隠すことなく晒してきた。
「ちょっとなにさ、知り合いはいた方が絶対にいいでしょー」
「キミはそうだろうね。頭よくないから」
「また悪口!」
事実、月島は頭がいいから反論のしようがない。テスト前に泣きついたのは記憶に新しい。
「て言うか、烏野受けてたんだね」
「前にここのお姉さんに助けてもらったことあるんだ。だからお礼言いたくて」
「それだけのために?」
「うん」
「キミってホントバカだよねぇ。その人が卒業してたらどうするの?」
「まだいることはリサーチ済みだよ」
あ、絶対に今「気持ち悪い」って思った。
整いすぎた顔が少し歪められたって変わらずお綺麗なんだから腹立たしい。
「そう言えば山口は?」
「なんで」
「月島がいるってことは山口もいるでしょ?」
「別にセットじゃないんだけど」
「じゃあいないの?」
「…いるけど」
やっぱりセットだ。そう言って笑うと容赦なく頭を鷲掴みにされる。
手加減はされてるらしく本気で痛いことはそうない。かき回されて髪の毛ぐちゃぐちゃにされることはよくあるけど。
「頭すごいことになってるよ?」
「月島がやったんじゃん!」
適当に直してから反撃しようにも簡単にかわされる。運動神経もいいとかホント悔しい。完璧超人か。
「あれ?三橋さんも烏野だったの?」
「山口ー!」
月島と必死の攻防を繰り広げていると、セットの山口が現れた。
「クラスどこ?」
「3組!」
「隣だね」
「え、マジで?」
「ツッキー言ってないの?」
「教える必要ないデショ」
「まさか2組ってことはないだろうから…特進?!」
「うん」
賢いやつだと思ってたけど、まさか山口も一緒に特進とは…
「あの、」
「やだ」
「まだなんにも言ってない!」
「どうせ勉強教えろとかそんなとこデショ。やだよ」
「けちー!」
せめて最後まで言わせて!
これだから頭良いやつは!
「俺でよかったらわかる範囲で教えるよ?」
「ホントに?ありがとー!プリッチュあげるね!」
「うん。俺ポッチー派だけどありがとう」
山口のこの優しさがほんの1割でもいいから月島に備わればいいのにね。
「いったあ!」
え。なに?何が起きたの?
「え!ツッキーどうしたの?!」
「なんかムカついた」
何が起きたの?なんか頭がめっちゃ痛…いや、痛くはないけど、なにか衝撃を受けたことはわかる。でも今何が起きたの?誰か説明プリーズ。
「僕もう行くから」
「え!」
「入学早々遅刻とかしたくない」
「あ!ホントだ!」
見つけて嬉しくなって話してたらそれなりに時間がたってたらしい。
「じゃあね!月島!山口!」
「後でね!」
「別に来なくていいんだけど」
月島には会いに行かないよ!山口に会いに行くんだよ!
隣のクラスだから、すぐに会える。別にそんなこと気にしたこともなかったけど、入学早々知り合いを見つけてすっかり気が緩んだらしい。まだものすごく仲がいいとは言い難いクラスに、私は意気揚々と入った。
花の女子高生。全力で謳歌したいと思います!
(ねぇツッキー)
(なに)
(もう少し優しくしてあげたら?)
(…うるさい山口)
(ごめんツッキー!)
2017/04/11
2017/10/05 加筆修正