栗にさつま芋に秋刀魚にキノコ、どれも秋の食には欠かせない食材達だ。
どんな献立にしようか、どんなお八つを作ってあげようか。それを考え出したらバリエーション豊富できりがない。

夏が過ぎ、秋の虫が少しずつ鳴き始める時季になった。収穫する、買う、頂く・・・。僕はとても魅力的な秋の食材達に毎日のように心を躍らせていた。
食欲の秋と謳われるだけあって、今日の食卓に何が上がるのかと皆が厨を気にし始めるようになった。
作る側としてはそれも嬉しくてしょうがないんだ。今日はどんな献立にしようかなぁ。

「あ、おはよう主。」
「はよーさーん。おっ、栗じゃん。」
「こらっ、手を洗ってから触りなさい。」
「はいはいよ。で、何か作んの?」
「そうだよ。今ちょうど何を作ろうか考えていたんだ。」

現在の時刻11時50分。起きたてらしい主がのそのそと厨にやって来た。相変わらず生活のリズムが乱れている。
籠にまとめておいた色鮮やかで艶のある栗を見るなり、興味深々で触り始める。
やはり誰もこの美しい誘惑には勝てないようだ・・・!

「いいねぇ栗。私はあれだ、甘露煮とか食べたいよ。あと栗ご飯とか!」
「オーケー!いっぱい採れたから、どちらも作ってみようかな。」
「やりぃ!私もやるやる〜!今日の厨当番って光忠さんと誰?」
「今日は長谷部くんだよ。でも、彼は夕餉担当で今は別の仕事をしているかも。」
「長谷部・・・私が出るとうるせぇか・・・。ま、来るまでならいいよな!」

よく見たら今日も酷い格好だ。まずは顔を洗って来てもらおうかな。髪の毛も整えてもらおう。加州くんに厨に合いそうな格好をしてって言うようにしてもらおう。
厨でも綺麗に、格好良くきめたいからね!

「その前に主、ちょっと全体的に整えてきて。」
「えー・・・そんなんいちいち気にすんなよ・・・。」
「加州くんの所に行けばすぐでしょう。ほら、行っておいで!」
「へいへーい。」

さて、下準備から始めよう。

***

「う゛ぁー・・・づっがれだぁ・・・。」
「当たり前だろう、休んでもいないんだからな。」

今日自分に命じられた任務は貞との手合せ。何度も刃を交えているのもあり、大方動きは読めるようになっていた。
が、こいつのしぶとさと体力はどこかおかしい。
ほぼ互角とは言え、数回は捻じ伏せている。(経験の差で俺が上だからだが)しかし貞は休むことなく、次だ次だと急かしては向かってくる。これをもう3時間程続けた。流石に疲労が溜まって動きも鈍くなる。

「だってよぉ〜、負けっぱなしじゃ悔しいだろ!」
「弱い者苛めは好きじゃない。」
「ぐぬぬ・・・。よぉし、もっかいだ、伽羅!」
「俺はもう動きたくない。休む。」
「逃げんのかっ!・・・でも、俺も、限界・・・。」

貞はその場で大の字で勢い良く寝転び始め、腹の虫が鳴いて止まらなくなった。

「はらへっだぁ〜水も欲しい〜・・・。」
「俺は厨に行く。」
「はい、はい!俺も俺も!今日は確かみっちゃんが当番だったよなぁ〜美味いモン作ってくれてるかな〜!」
「・・・勝手にしろ。」

こいつの切り替えの早さは一体何なんだろうか。