「ぅわっと、んぬぬ・・・ふんっ!」
「アハハ・・・貞ちゃん、力任せじゃ疲れちゃうよ。」
「・・・。」
「おお、上手じゃん。すごいすごい。」

加州くんに身なりをキチンと整えてもらっていつもよりはまだまともに見える主と、栗の皮剥きをやっていたところに、手合せの休憩で伽羅ちゃんと貞ちゃんが厨にやって来た。
お腹が空いているようだったので、朝多めに作っておいたおにぎりを二人に食べさせてあげた。二人が食べ終えると、僕達がやっていることに興味を持ったのか何だ何だと覗き始めた。
そして主の一言、せっかくだから一緒に、ということで四人で作業をすることになった。
二人も美味しい物には目がないし、何より皆で作るとより楽しくなるからいいよね!主にしてはナイスな提案だと僕は思った。

「地味な作業だぜ・・・。もっと派手にやりてぇよ。」
「貞ちゃん、料理は時間をかけて丁寧に、愛情を込めると美味しい物が出来るんだよ。」
「ふぅ〜ん・・・料理ってのは奥が深いんだなぁ。」
「うんうん、そうだよ貞坊。普段光忠さんは力で物を言わせてるように見えるけど、こういう時には「何か言ったかな?」イエ特ニ、何モ。」

何気ない会話を交えながら、予めぬるま湯に浸しておいて剥きやすくなった栗を、包丁を使って一個ずつ皮を剥いていく。
主は普段あんな感じだけれど、料理となると話が変わって来る。料理は得意なようで、今までも厨当番の子たちのお手伝いをしてくれたりもしていた。そして味も美味しいし、見た目も綺麗。家庭的な女子力はあるみたい。
伽羅ちゃんは相変わらず黙々と作業を進めている。彼もまたとても器用で、形は綺麗なまま、もう結構な量を剥いてくれていた。すごいなぁ。
貞ちゃんも最初こそ苦戦したものの、今はすっかり手慣れて形良く皮を剥いてくれている。美意識に共通したものがあるからこそ出来ることだね、うんうん。

そうこうしている内に、大量に浸しておいた栗も残り二個まで減っていた。
伽羅ちゃんが一個取ろうとしてボウルに手を伸ばすと、同じタイミングでもう一個取ろうとした主の手と重なった。主は「おっと、ごめん。」と言って手を一旦引っ込める。
僕は見逃さなかった。その一瞬の、伽羅ちゃんの顔を。

「っ、ああ・・・。」
「これでラストか。皆でやったから結構早く終わったねぇ。長谷部に見つからなくてよかったわー。」
「・・・。」

え、何?どういうこと?ていうかその顔は何!?嫌な表情なのか、それともまた別の表情なのか。僕にはハッキリと読み取れなかった。
すると伽羅ちゃんは若干焦ったように、手に取った栗の皮を剥き終えると、いそいそと手を洗い、いつもの手袋を身に着けて厨を出ようとした。

「貞、戻るぞ。」
「んぁ?もうちーっと見たいんだけどなぁ。」
「・・・、早くしろ。」
「ちぇ〜・・・まぁ、終わったらみっちゃん達が作った美味いモン食えるし、いっか!よぉし、いってきまーす!」
「おう、いってらっしゃい。あんまり無茶はすんなよ。」

「主、」
「はいよ。」
「ちょっと行こうよ。(表出ろの意)」
「何で!?」


今日の夕餉には妙に甘くなり過ぎた栗の甘露煮と、ほんの少し味気ない(ような気がする)栗ご飯が食卓に上がった。

「あるじさま、そのかおどうしたんですか?」
「今剣よ、人とは常に理不尽な物なのだよ。」
「? あ、でもあるじさまのかおがりふじんなのは、いつものことでした!」
「おーい岩融さーん。今剣が今日のご飯全部食べてほしいってよー。」



(「どうしたんだろう・・・」)
(「おい、ぼーっとするな。」)
(「何でこんなに気になるのかな・・・」)
(「あっ、砂糖入れ過ぎだぞ!」)
(「長谷部くんはどう思う!?」)
(「言葉のキャッチボールをしろ!!」)

(何故だろう、妙に胸騒ぎがするんだ。)