「参ったねぇ。」
「ぜ、全然捕まらない・・・。」
「もぉ〜つかれましたよぉ〜!」

夜の里山、それは新たな戦場だ。
ここでの俺達に与えられる任務は、兎を追いかけ捕獲し、一口団子を集めること。
字面だけ見れば楽なように見える。しかし、ここでは他のどの戦場と比べても疲労の溜まり方が半端じゃない。更にはその兎を見つけることさえ困難と来た。
出陣を終えて本丸に戻れば、皆すぐに力尽きる。侮れない戦場だ。

「おうおう、お疲れさん皆の衆。」
「主、報告なんだけれど・・・」
「あーいいよいいよ、後で。」
「おや、いいのかい?」
「いくらでも時間はあるしね。青江さんも疲れたっしょ?ほら、風呂でも行って来な〜。」
「ふふ・・・なら、遠慮なくそうさせて貰おうかな。それじゃあ、また後で。」

第一部隊長であるにっかり青江が、主に報告を済ませようとした。
皆の疲労が溜まっていることは毎度のことなので、主はもう分かりきっているのだろう。休息を優先するよう呼び掛ける。
部隊員の今剣を先頭に、里へ出陣した者達が続々と風呂へ向かい始めた。

そんな中、同じく部隊員であった物吉貞宗が申し訳なさそうな顔で主に声を掛ける。

「極でもやっぱりきついかぁ〜。うーむ、今回の政府は鬼畜の所業だな。」
「主様・・・僕の力不足で、幸運をお運び出来なくて本当に申し訳ありません・・・。」
「いいっていいって、気にすんなよ。道具集まったら物吉も旅に出してやるからさ。」
「はい!修行へ行って、主様のご期待に添えるようになりたいです!」
「よーしよし、健気だなぁ物吉は!ほれ、お前も風呂に行ってこーい。」
「はーい!」

物吉貞宗は嬉しそうに風呂へと向かって行った。
今は夕刻、風呂場は出陣から帰って来た者だけではなく、他の者もきっと大勢いるだろう。
静かに入りたい。なら、今はその時じゃない。俺は自室へ戻ろうと足を向ける。

「お?伽羅ちゃんは風呂に・・・、だよね。」
「ああ。」
「伽羅ちゃんもお疲れさん。今日はゆっくり休んでな。」
「別に・・・大して疲れていない。」
「あ、誉取りまくったんだって?すげーじゃん、極の脇差と短刀抜いての誉!」
「・・・ただ任務をこなした。それだけだ。」
「そーかそーか。よくやったなぁ〜!」
「っ、っ、」

私が背伸びして頭を撫でてやると、ぶわわっと伽羅ちゃんの周りを桜が舞う。分かりやすっ!
お、そうだ。あの事も言わないとな。

「光忠さんが、今日の誉ゲッターには好きな物を作るって言ってたみたいよ。」
「・・・そうか。」
「そろそろ作り始めるだろうから、今のうちにリクエストしてきな。」
「・・・」

伽羅ちゃんはふいっと身を翻した。多分光忠さんの部屋に行くんだろう。

それはそうと光忠さんと言えば、最近何故か目を合わせてくれない。
前は自分から話し掛けてくることもあったのに、最近は同じ場所に居合わせそうになるだけでそそくさと退散する。
・・・もしかして私に呆れた?何か信用失うようなことしたっけかなぁ。
身だしなみか?面倒臭いモンは面倒臭いから直す気は無いけど。まぁ、その内パッといつもみたいに戻るだろう。多分そういう時期か何かなんだ。

自己解決が済んだので、自室に戻って一寝することにした。

***

日が落ちて来た頃。そろそろ夕餉を作る時間かな。
僕は読んでいた書物に栞を挟んで閉じ、机の上に置く。

「―開けるぞ。」

部屋の前に人影が浮かんだ。

「はーい。あ、伽羅ちゃんかい?」
「ああ。」
「いらっしゃい。今日の出陣、たくさん誉取ったんだってね。凄いね!」
「・・・別に。大したことじゃない。」

今日の出陣で誉を沢山取ったのは伽羅ちゃんだと、部屋の前を通り過ぎて行った青江くんが教えてくれた。
伽羅ちゃんは極の脇差、短刀メイン部隊の唯一の打刀にも関わらず、雄姿を見せてくれたみたいだ。格好いいなぁ。

僕が夕餉担当の日は、誉を沢山取った人に好きな物を作ってあげることにしている。
そうすれば皆のモチベーションも上がるだろうし、僕も色んな物を作れて楽しいしでウィンウィンの関係(鶴さんに教えて貰ったんだよ!)を保てるだろうから。

「そんな君には夕餉に好きな物を作ってあげるよ。何がいいかな?」
「なん「何でもいいは駄目だよ。」・・・、焼き茄子が食べたい。」
「茄子だね、オーケー!秋茄子くんが良い具合に育っていたんだ。」
「伝えることは伝えた。俺は戻るぞ。」
「ああ、うん。夕餉までゆっくり休んでね。」

部屋から伽羅ちゃんが出て行くのを見送ってから、伸びをして立ち上がる。

茄子と何を使おうかなぁ。今日のもう一人の当番は・・・加州くんだ。
見た目も凝った物を作れそうだ!僕はワクワクしながら厨へ向かった。