▼▲▼
朝はおはよう、お昼にはこんにちは、夜にはこんばんは、おやすみなさい。
挨拶をするのは当たり前のことだが、当たり前に出来ないという状況もある。
たとえば、今とか。
「何なのこれえええ」
「Good morning.my honey〜(はあと) 俺と最高の一時を過ごそうぜぇ〜?」
「誰・・・って、サンズ!?ちょっと、ここから降ろしてっ!」
「そいつは致しかねるぜmy honey.吊るし上げられたhoney・・・最高だな・・・もっと暴れてみろよ、痛みで悲鳴上げちまう位きっつく縛ってやるからよぉ!その後は酸欠でもがきまくるhoneyを視姦して楽しむ・・・!」
「そんな趣味の悪いこと言われたら、しないに決まってるでしょ!」
よく分からない場所で、黒いパーカーを身に着けたサンズが、私のことを縛り上げ、天井に吊るしている。という意味不明な状況である。
誰かに助けを求めても、こんな場所じゃ周りに誰がいるのかも分からない。
いやもう誰だっていいからこの状況を説明するか助けてほしいんだけどなー!ハロー!私はここに!!
じたばたと軽く足だけを動かすと、私の身体がゆらゆらと揺れる。
それを見逃さなかったサンズは、息を荒げて私の下ににじり寄って来た。涎と汗が大変なことになっている。一体彼はどうしてしまったと言うの!?
私をじっ、と下から見上げるサンズのにやけ顔が、下品なにやけ顔へと変化していく。
「白か・・・良いな、汚してやりたくなる。」
「は、ちょっ!?スケベ骨!最低!サンズがそんな人だなんて思ってなかったのに!」
「人じゃねぇからなぁ、俺は。"こっ"ぱずかしい事だって出来るぜ?骨だけにな!bahaha!」
「くっだらない事言わないで。降りたら覚えててよね・・・」
「そこから降りたら、俺との楽しい楽しいデートが待ってるぞ?そんなにヤりてぇのかよ?」
どうしてそういう考えに行き着くのか全く持って理解出来ない。
笑い方も喋り方もいつものサンズと全然違う・・・段々怖くなってきた・・・
でもここで負けちゃ駄目、私はこの骨を成敗しないといけない。悪戯だったとしても、これは度を過ぎているもの!
「そんなデート、まずは平手から始まって残りは楽しくもないし誰も得しない、Bad timeだから。サンズだって嫌でしょう?早くおーろーしーてー!」
「何だ、手ェ上げんのか?そういうプレイがお望みなら、応えてやらねぇと紳士の名が泣くよなぁ?仕方ねぇ、降ろしてやるよ。オラッ!」
「痛っ!暴力反・・・ひっ、」
「さぁて、愛し合おうじゃないかmy honeyィ〜?愛を確かめる熱いヴェーゼから始めようぜ・・・ッ!」
「ぃ、嫌っ!誰か助けて・・・!」
目をぎゅっと閉じて、現実から目を背ける。
私が助けを求めて大声を張り上げた、その時だった。
「ゥガッ!?」
「・・・あれ?」
「・・・よぉ、俺と最悪な一時を過ごす気はないか?」
「チッ、taleの俺か・・・邪魔しに来やがったな。」
「へっ、えっ?さ、サンズ?」
恐る恐る目を開くと、そこには何とサンズが二人いるではないか。・・・って、何?
私に今までゲスな事をしていた黒いサンズと、もう一人はいつもの見慣れた青いパーカーのサンズだ。
交互にサンズ達の顔を見ても、瓜二つで区別が付かない。
強いて言えば黒い方は眉間?に皺が寄っている。あと、涎と汗が凄い。
私が混乱していると見慣れたサンズが近道を使って、私と黒いサンズの間に割り入った。
何処からかあまり聴きたくないBGMが流れて来ているような気がしたが、多分気のせいだ!
正に一触即発と言わんばかりに、サンズとサンズが睨み合っている。文脈だけでもう訳が分からない。
「こいつは俺の世界のだ。お前さんの世界に連れ込んで、挙句の果てには手まで出すなんて良い度胸だな、ん?」
「嫉妬か?ha!相変わらずなっさけねぇな。俺みたいに軽く考えれば、ちょちょいっと手を出しただけで簡単に堕ちるんだぜ?」
「あー、そうだったな・・・お前さんはそういう奴だよ。なら、どうなっても仕方無いな?」
「Ah?やんのか?いいぜ、先に死んだら負けだ・・・ッ!」
それは当たり前でしょう。・・・じゃなくて!
二人が目を光らせて、戦闘態勢を取った。流石にこれはまずい。
「ちょっと待って、二人共!これどういう状況なの?説明し「ムェ〜!オレ様、参・上!争うのはやめるんだぁ〜!」????」
空間に穴が開き、上からとすんっと軽い音を立てて着地。もう一人サンズが現れた。
サンズが三人?三人だからサンズなの?ははは、意味が分からないしくだらないよ!
水色のマフラーを巻き、同色のブーツを履いてどこか既視感のある恰好のサンズが、黒いサンズと青いサンズの間に割り入る。
二人の間でぴょんぴょんと忙しなく跳ねて、何か語り掛けているようだ。
「チィッ、ウゼェんだよテメェッ!入って来んじゃねぇぶっ殺すぞ!」
「口が悪いぞマスタード!言葉の乱れは性の乱れだっ!」
「それは違うと思うが・・・何でお前さんまで来たんだ・・・。」
「オレ様が救世主として選ばれたのだ!ぽーいと投げられるのはちょっと雑だと思ったけどなっ!」
「・・・まぁ、お前さんが味方なら心強いな。この薄汚い世界からヒロインが抜け出すのを手伝ってくれるか?」
「それは出来ないぞっ!」
「「えっ」」
私と青いサンズの声が重なった。
自称救世主なのに、私が囚われている世界から助け出すことは出来ないと?メシアって何だっけ。
「ヒロインと友達になる為にオレ様の世界に連れて行く!パップもキャラもきっと大喜びするんだ!」
「待て待て待て、人の物を取るんじゃない。そっちの世界の俺役はそう教えなかったのか?」
「パップはいつも『俺の物は俺の物、お前の物も俺の物』って、言ってるぞ。」
「うわっ・・・とんでもねぇジャイアニズムだな。ボスの方がマシってモンだぜ・・・。」
「お前さんも人に言えたことじゃないだろうがふざけないでくれ。もういい、分かった。俺が自力でヒロインを俺の世界に戻す。」
「そうはさせないぞぉ!オレ様と一緒に来るのだ、ヒロイン!」
「My honeyは俺と最高の一時を過ごすんだよぉ!ここは俺の領地だ、もう逃がさねぇぜhoney〜(ハァト)」
もう、何?誰もこの状況を説明してくれないの?
さっきから説明してと言い続けているのに誰もしてくれない怒りで、私の体がふるふると震える。
そしてそのまま怒りに任せて、目の前にヌボォッと迫って来た黒いサンズの顔面に思い切り平手を食らわせた。
クリティカルヒット!黒いサンズは1m位飛んだ。
「Bahaッ・・・何つぅ平手だ・・・最高じゃねぇか・・・ッ、もう一回やってくれよぉ!」
「か・・・カッコイイ〜!!どうやるんだっ!?オレ様にも教えてくれぇ〜!」
「さり気無く引っ張ってお前さんの世界に引き込もうとするな!」
「もおおお!誰か説明してって言ってるでしょおおお!?」
「ム゛ェッ!うっ・・・つ、強い・・・!」
「お、おい・・・ヒロイン、落ち着「サンズの馬鹿ッ!早く帰るよもう!」ヴ?」
自力で帰れたのでもう説明とかどうでもいい。
****
(2017/10/07)
▲▼▲