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しゃなりしゃなりとしなやかに歩いて・・・いる訳がない。慣れないドレスに、ぎこちない動作が目に付く。
「もうちっと品のある歩き方出来ないのか。」
「だ、だってこんな服着たことないし・・・!」
今日は、グリルビーズで年に数回程行われるダンスパーティーの日。
多くの者が集まり、社交ダンス、ヒップホップやレゲエダンス・・・各々が好きなようにダンスをする。
社交ダンスであればパートナーがいなければ成り立たない訳で、振り付けを予習しておく必要がある。
そんな中で、初めてこのパーティーに参加することになったヒロインは、社交ダンスを選んだ。
パートナーが誰なのかはまだ聞かされていないがヒロインと同じくらいの、若しくはヒロイン以上の背丈の者でなければ二人でのダンスは厳しいだろう。
ほんの少し察しはついているが、俺は敢えて知らないふりをした。
「ねぇ、後ろ持っててもらってもいい?踏んじゃいそうで怖いの。」
「へいへい、お嬢様の仰せのままに。」
「ん、ありがとう。中は見ないでね。」
「見てほしいか?」
「きゃーサンズのスケベー。ほら、お店入ろうよ!」
楽しみ、と笑顔で言うヒロインがいつもより色っぽく見えて、少し切ない。
***
ふわり
大きくスカートのレースが広がって、重力に従って再び元の形に戻る。
初めてとは思えないヒロインの綺麗な振りに目を奪われた。
周りがやんややんやと歓声を上げたり囃し立てたりして盛り上がる中、俺は店の端に寄って楽しそうに踊り続けるヒロインを眺めた。
ヒロインがダンスパートナーとして選んだ相手、それは言わずもがなグリルビーだ。
店が閉店した後に、グリルビーとヒロインが店内でダンスの練習していた事を俺は知っている。
二人が息の合ったダンスを踊る。心なしかグリルビーも楽しそうだ。
このパーティーに参加するのに大して乗り気でも無かった俺は、最初にオーダーしたドリンク一杯を飲み干してから店の外に出た。
スノーフルの寒空に白い息が舞う。俺の心も寒空のようだ、なんて。ハハ、笑えないな。
ヒロインの手を取るのが俺だったら、一緒に踊るのが俺だったら。ヒロインとグリルビーが踊っている時にそんなことばかり考えてしまった自分に少し引く。
出来もしない事を考えたって、期待したって無駄な時間になるだけだ。
誰の目にも付かないように、近道を使って家に戻った。
家の中に入るとリビングでテレビを見ているパピルスが。
音も立てず家に帰って来た俺の姿を見て一瞬驚いたが、首を傾げて口を開く。
「パーティーもう終わったの?」
「あー・・・いや、まだやってるよ。」
「ヒロインも一緒だって言うから、てっきり遅くなるかと思ってた。ヒロインは?」
「まだ店で踊ってる。オイラは眠いから先に抜けてきたんだ。」
「そっかぁ。楽しかった?」
「ああ、楽しかったよ。」
特に楽しかった事も無いが、素直に答えた所で変に心配させてしまうかもしれない。
パピルスがそろそろ寝ようかな、と言っていたので俺は読み聞かせの準備を始める。
ベッドで読み聞かせてやると、眠かったのかすぐに夢の中へと旅立つパピルス。寝息を確認してから自室に戻った。
自分のベッドに寝転がって携帯を覗き込む。特に着信も連絡も無いが、心のどこかで期待してしまっている自分が情けなくて女々しい。
ああそうだ、勝手に振られちまったのさ。
不貞寝と言う表現がよく似合う。布団を頭まで被って目を閉じた。
現実で叶えられないのなら、せめて夢の中で楽しくアンタと踊らせてくれよ。
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次の日に何食わぬ顔で楽しかったねと言われて傷つくまでがテンプレートなんだろう。
イメージソング:メリーはただのトモダチ
(2017/11/10)
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