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ひゅう、と風の吹く音がする。
階段を降りて長い長い道を進んで行くと、今まで見てきた大きな門にもあった不思議な模様の付いた扉の前に辿り着いた。
この先は地底の世界 沢山のモンスターと出会うのだろう。そう考えたら…何だかワクワクしてきた。
やはり私の好奇心と探求心というのは衰えを知らないんだな、と改めて実感しつつも、その事実に苦笑いを一つ浮かべた。


「エマ、私からもお願いがあるのだけれど」

「なぁに?」

「この先を越えたら二度とここへは戻らない事。それから・・・地底で出会う皆に、自分が何をしにやって来たのか言わない事」

「…分かった。約束ね」

「私との約束が沢山あって大変じゃないかしら?」

「確かに。でもその方がお互い忘れないし、ずっと友達でいられて良いと思ってるよ」

「ふふふ…それはそうね。 さあ行ってらっしゃい。私の大事なお友達」

「うん、行ってきます」


私より大きくて温かい体にハグをして、暫しの別れの挨拶を交わす。
扉を開いて一歩を踏み出すと、一気に空気が変わったように感じた。
後ろを振り向けば、少しずつ閉まっていく扉越しに手を振っているトリエル。彼女が見えなくなるまで私も手を振り続けた。
バタン…と音を立てて、完全に扉が閉まったのを確認してから私は再び前を向く。
地底がどれ程広い物なのか。どんなモンスターが存在しているのか。モンスターはどのように生活しているのか…
知りたい、見たい、聞きたい事が山程あるんだ!心臓はどきどきと高鳴り続ける。この先起こる出来事を妄想しながら、歩みを進めた。


***


奥へ進んで行くと、大きな門が見えてきた。きっとあそこを潜り抜ければ地底の世界だ。
テーマパークを目の前にした子供のように。馬鹿みたいにテンションが上がって走り出す。
ぶぎゅるっ
あれ、何か踏んだかな。


「ちょっと、痛いんだけど!」

「あ、お花さん!」


足元に目線を下げると、何とそこにはトリエルと出会う前にご迷惑をお掛けしてしまった黄色い喋るお花が。


「あ、お花さん!じゃないし!謝罪も無しなの?」

「申し訳ありま……もしかして、お話お聞かせ頂けるのでしょうか?」

「それにはもううんざりだよ。キミにここでの過ごし方を教えてあげようと思ったのにさ」

「本当ですか?実は今からそちらへお伺いするんです、よろしければ是非教えて下さい!」

「仕方ないなぁ…じゃあバカなキミにでも分かるように、簡単に教えてあげるよ。」


少し不気味な笑顔を浮かべたお花さん。それと同時に白い何かが私の周りを囲い始めた。
お花さんの方に目線でこれは一体何なのかと訴えかけると、お花さんは唐突に高らかに笑い声を上げる。


「この世界では殺すか殺されるか…キミみたいに無知なニンゲンを襲って来るモンスターなんて、山のようにいるんだ」

「…す」

「あ?」

「すごい、モンスターが魔法を使えるって本当だったのね!あのこれ、触ってみてもよろしいでしょうか?」


モンスターは魔法を使える そうトリエルが教えてくれたのだ。
彼女といた時は魔法で何かしている所を見ることが出来なかったけれどまさか今ここで、しかもこんな間近で見れるなんて!
きっとお花さんもモンスターだから魔法が使えるのだろう。未知なる白い物をまじまじと観察する。


「は、はぁ?命の危険に晒されてるのに頭おかしいんじゃない?」

「命の危険ということは攻撃する魔法なんですね。こういう弾状になってるのか、一発当ててもらってもいいですか?」

「本当にバカでしょ!もういい…無知でバカなニンゲン、お前は大切な物の前で殺してやるよ。それまで怯えながら余生を楽しむんだね!」


再び不気味な笑い声を上げて、地面へと消えて行くお花さん。いつの間にか私を囲っていた白い物も消えていた。
冷静になって考えてみると何故私は彼?彼女?に命を狙われたんだろう。お花さんの言っていた沢山のモンスターが人間を襲う、がとても気に掛かる。
やはりモンスター達は人間を恨んでいるのだろう。初めて出会った者に殺意を抱かれているという事実にぞっとして足が竦んだが、まだ見ぬ世界への期待を思い出す。
始まってもいない、見てもいないのに、諦めるなんてそんな勿体ない事はしたくない。
頬を両手でべちべちと叩いて気合を入れ直してから、勢いを付けて走って門を潜った。