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暖かいお家にお邪魔して数時間 パピルスさんと沢山お喋りをした。
この"スノーフル"の町には何と図書館や飲食店、それからホテルや物を売っているお店までもがあるのだと教えてくれた。
そうそう、あのテレビに出演していた箱型のロボットはメタトンというらしい。
ロボットならば誰かに作られたのだろうか、それともこの世界で自発的に生まれてきた物だろうか…謎が深まると同時にその真相を暴きたい欲が湧いてくる。
ダメ元でパピルスさんに聞いてみたが「メタトンはメタトンだぞ!」という答えしか返ってこなかったので、やっぱり自分でどうにかしようと思った。

結構な時間ここで寛がせてもらった。そろそろお暇しないとパピルスさんにもサンズにも迷惑をかけてしまうだろう。
家を出るとパピルスさんに告げれば、彼は眉を下げた。


「もう行くのか?」

「ええ。沢山良くして頂いて、本当にありがとうございました」

「…やっぱりダメだ!行っちゃダメ!!」

「また遊びに来ますから、今日はこれで」

「ダメダメダメダメ!ずぇ〜〜〜ったいダメ!!ここを出て行ったらエマは…」

「私は?」


頑なに私を行かせまいとするパピルスさんは、俯いて何やらぼそぼそと呟いている。
まだここに居たい気持ちは山々だが、それ以上に先に進んで調査もしてみたいのだ。
彼は急にばっと顔を上げて、私の両腕を掴んだ。凄まじい力が込められている!


「ぃっ、いたたっ!痛いですっ!」

「あっごめんっ!えっと…とにかく、ここから出ちゃダメなのだ!ここなら何の危険も無いし安全だから、な?」

「魔法だって使えますし、自分の身は自分で守れます。だから心配無用です」

「むむ…そうかもしれないけど…本当にそう言い切れるの?」

「友達の言う事を信じられないんですか?パピルスさん酷い…うっ…」

「あああー!!分かった、分かったよ!だから泣かないで…」

「ふふ、信じて頂いてありがとうございます」

「な…嘘泣きかっ!?このパピルス様を欺くなんてエマはペテン師だ、詐欺師なのだ!」

「まさかそんな人聞きの悪い!信じてもらえない悲しさで泣いたんです。涙はすぐに乾いちゃいましたよ」


私が両手で顔を覆って泣くフリをすると、パピルスさんはわたわたして落ち着きを失う。彼は結構チョロいのかもしれない。
パピルスさんがぐぬぬと納得のいかない顔で私を見ているが、お構いなし。
近くに置いていたバッグから適当な雑紙と万年筆を取り出して、ある物を描く。そのまま実態化していくそれをパピルスさんに手渡した。


「これは?」

「お守り、私とお揃いにしてみました。それを私とパピルスさんの約束の品として。必ず無事でいます、だから今はここを出て行くことを許して下さい」

「…そこまで言うなら仕方ない。エマ、お前を信じるぞ。だから、お前を信じるオレ様のことも信じてくれ!」

「はい…へへ、ありがとうございます、本当に…」

「今度は本当に泣いてるんだな!よしよし、オレ様の格好良さを認めていつでも戻って来ていいぞ!」

「ん、今のパピルスさんはとっても格好良いですね」


ぎゅっと力強く、でも優しいハグと頭を撫でてくれるパピルスさんの温かさに涙が出てしまう。何時から私はこんなに涙脆くなってしまったのだろう…
彼の手にはガラスで出来たオレンジ色のハートのキーホルダー、私の手には同じく黒色のハートのキーホルダー。大事にしてくれたら嬉しいな。
大きな背中に腕を回して、私もハグをした。


***


町を抜ける前に話を聞いて気になっていたお店に立ち寄り、パピルスさんがお餞別にとくれたお小遣いでバビコという物を買って食べてみた。
これは普通に美味しい。パピルスさんは料理があまり得意ではないのだろうな。
取り敢えず一本で満足したので残りの一本はお腹が空いたときに食べよう。

図書館も覗いてみると本棚が並べられていて、地上の図書館とほとんど変わりの無い光景が目に映った。
そこにはモンスターも勿論居るわけで中に入るのに少し躊躇したけれど、しれっとしていれば恐らく問題ないだろう。
中に入って適当な本を手に取って読んでみる。
こ、これは!とても有益な情報なのでは?思わず食い入るように本を読む。
内容は愛や希望、思いやりでモンスターのタマシイが出来ているが、人間のタマシイはそれらが無くとも存在が出来る、と記されていた。何てロマンチックな…モンスターって面白い。
好奇心の赴くままに次々と本を手に取り読んでは戻しを繰り返していくと、とある文章が少し引っ掛かった。


「(魔力で構成されているモンスターの体はタマシイと連動し、戦いを望まぬ者は防御力が低下する。更に敵が惨忍である程受けるダメージが大きくなり……)」


読んでいて気が滅入りそうな内容だ。私はそこで本を閉じて、本棚に戻した。
かつてのモンスターは戦いを望んでいなかったのだろうか、人間が戦争を引き起こしてしまったのだろうか。
流石にこんな事を記事にするのは嫌だ、何より彼女が悲しむかもしれない。
次に手に取った本には、モンスターは魔法でお誕生日メッセージを綴る、と何とも微笑ましい事が書かれていてほっこりした。

図書館を出てパピルスさんとの鬼ごっこの場を抜けて行くと、川が流れている場所へやって来た。
スノーフルと少し気温が変わって寒くはない。でも湿気がすごい…
身に着けていた魔法のマフラー、ベレー帽、手袋がバッグに収まらなくて荷物になってしまう。
これって消すことは出来ないの?水に浸けたら溶けるとか、そんなの無いかな。物は試しに、と川の水にマフラーの端を少し浸けてみた。引き上げるとびしょびしょになっただけ。


「(そりゃそうか)」


と思って肩を竦めたが、段々ぽたぽたと溶けて、形を失っていくマフラー。
嘘、本当に溶けちゃった!
川の水に一気に全部浸けて引き上げ、地面の上で溶かしていく。すごい便利だ!また一つ新たな事を覚えた、と嬉々として足を進めた。