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先に進んで行くと青い花が一輪、ぽつんと咲いていた。
きらきらとしていてほんのり光を放っている。


「綺麗…」

『……綺麗…』

「!?」


花が私の言葉を繰り返して喋った!
驚いて思わず後ずさると、背中に何かがぶつかった。振り返れば花とは違うちょっと見慣れた青色がある。


「おっと、よくぶつかるな?」

「ご、ごめんなさい。そう言うサンズさんもよく後ろにいらっしゃいますね?」

「さんは要らないってーの。 そいつはエコーフラワーっていう、最後に聞いた言葉を繰り返す花さ」

「へぇ、素敵…これも魔法ですか?」

「さぁどうだかね。気になるなら、一輪ぐらい持っていってもいいんじゃない?」

「自然はそこにあるから美しいんです、ここでそっとしておいてあげましょう」

「結構ロマンチストなんだな」

「そうでしょうか」


サンズは私の前に来ると花にぼそぼそと低い声で何か語り掛けた。
聞いてみな、とそこから退いたので、私はそっと花に耳を傾けてみる。花はぽつりぽつりと、隣の青と同じ低い声で話し始めた。


「へ?」

「そういうこった」

「なかなかに唐突ですね。その前に、直接言ってくれてもいいんですよ」

「そういうの慣れてないんだよ。もっとフランクにいこうぜ、ライターちゃん」

「…私は火を点ける方のライターじゃないの。文を書く方のライターで、エマっていう立派な名前があるんだから」

「そうかいそうかい。じゃあ、ニンゲンに昇格おめでとさんって訳だ」

「元々人間っ!」

「へへっ、まぁそう怒るなよ。お祝いにグリルビーズに飯でも食いに行こうぜ」


グリ…ああ、スノーフルにあった飲食店の名前ね。
またあの町へ戻るのか。でもまぁ、折角のお誘いを断る理由も無いし。二つ返事で承諾するとサンズが私の手を引こうとしたが、彼は何かを思い出したように花の前まで戻る。
今度は短く語り掛けている。さっきの「堅苦しい敬語なんて使う必要あるのか?無いだろ?」という言葉に上書きしているのだろうか?
行くぞ、と再び私の手を取ると一気に辺り一面雪景色になった。
しまった、マフラー達はもう全部溶かしたんだった。寒さで震えていたら、サンズにぐいぐいと背中を押され、店内へと足を踏み入れた。


***


店内は雰囲気のあるバーになっていて、見覚えのあるほねっこジャーキーの犬や他の変わった大きな犬達、それからお魚と鳥と他にも沢山のモンスター達が居座っていた。
匂いを執拗に嗅がれたり軽くナンパされたりと、皆私を警戒しない。私が人間だと分からないのだろうか?
カウンターの椅子にブーブークッションが仕掛けられているのに気付かず座ると、クッション特有の音が鳴って店内に響き渡った。
誰の仕業かなんて、隣に座っているにやけ顔の骨を見ればすぐに分かる。まさか今ここで、引っ掛けられてしまうとは…
私の顔をそれはそれは楽しそうに見ながら、何を食べるのかと問う隣の骨。お薦めを聞けば全部と返って来たので、諦めてメニュー表を眺めてみると、ぱっと目に付いたのはハンバーガー。
ただ単純にどんな具材が入っているのか気になるので二人分オーダーした。


「ところで」

「ええ」

「パピルスってイケてるよな」

「うーん…そうね、とっても優しくて格好良いと思う」

「とーぜんだな。何と言ってもアイツの存在はスターだ、分かるだろ?」

「ええ、まぁ。サンズがパピルスさんのことを大好きなのは分かったよ」


照れるぜ、と髪も無いのに櫛で頭部と思われる所を梳いていて、その光景がもう面白い。でも笑うのは彼を傷付けてしまうかもしれないので耐えるのよ、私。
グリルビーさんがハンバーガーを私達の前に置いた。サンズにケチャップをかけるかと聞かれたが、元々の味が知りたいので大丈夫と答えたら、彼は何と目の前で容器一本分のケチャップを飲み干した。
あの時パーカーからした香りと同じで。あれはケチャップの匂いだったんだ…流石に一本一気に飲むのは少し引く。
お皿の上に置かれたハンバーガーを一口齧った。あ、あれ…あ、これは……そう、個性的な味がするの。
勿論文句は言えない。咀嚼して飲み込み美味しいとサンズに言えば、少し腹が立つにやけ顔をしていて、私の顔が引きつったような気がした。