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他愛も無い話をしていると、サンズはアルコールを摂取したわけでも無いのに何故かべろんべろんになっていた。
隣に座っているお魚さんと鳥さんが「よくあることだから気にすんな」と教えてくれたけど、まさかケチャップでこんなになったの?
へへへ…とか、ライターが開いたー…とか、譫言のように上機嫌で何か喋っている。突然のダジャレに不覚にも少し笑ってしまった。
そんな様子のサンズをカウンターに頬杖を突きながら眺めていたら、手元にコトン、とグラスが置かれた。


「…」

「…えっと?」

「グリルビーがね、貴女も良ければ、だってさ」

「あ、そうなんですね。ありがとうございます」


グラスにはオレンジ色の液体が注がれていて、少し傾けて飲むと口いっぱいに程好い酸味が広がった。
オレンジベースの味で、アルコールもきつ過ぎずさっぱりしていて飲みやすい。お酒はお上手なグリルビーさんに何のお酒なのか問えば「…シンデレラ」と答えてくれる。
シンデレラ、ねぇ。これってノンアルコールカクテルじゃなかった?ノンアルコールでも多少アルコールが含まれているのもあるし、そういうブレンドなのかも。
ちびちびグラスに口を付けて飲んでいたら、顔を赤くではなく青くしたサンズがこちらを向く。


「アンタ、酒が飲める歳なのか」

「そうよ。丁度飲酒を解禁された歳なの」

「へぇ〜…でも、そいつはジュースだろ?」

「ジュ…まぁ、ほぼノンアルコールだからあながち間違いでもないけど。というか顔色悪いよ、大丈夫?」

「これは火照ってるだけだ、気にするな」

「あっ、それって火照ってるのね?青くなるなんて面白い」


彼の薄い青色に火照る頬骨を人差し指でつつくと、骨のくせに人間の頬と同じように柔らかくてむにっとした。
それが不思議で面白くて何度もむにむにしていたら「やみぇろ」と微妙な滑舌で拒否される。
サンズだけに限らないけれど、モンスター達って結構人間味があるのね。本を読んだ限りでは人間以上に人間らしい…若しくはそれ以上なのかも。
カウンターに突っ伏して時々吃逆を漏らすサンズは、伏し目がちになりながら再び口を開く。


「言葉を話す花、って知ってるか?」

「エコーフラワーのこと?それならさっきサンズが教えてくれたじゃない」

「そうだった。 この前パピルスがさ、花が突然生えてきて話掛けてくるって言っててな。褒めてくれたりアドバイスをくれたり、励ましてくれたり…予言をしたりするって」

「へー…エコーフラワーって自分から話すことも出来るのね」

「それは無いな。あれは言葉を繰り返すことしか出来ない」

「じゃあそうなると、パピルスさんの幻覚か妄想……あ、冗談よ。怒らないで」

「ハハ、分かってるよ。その可能性も無くは無いしさ。 てんでおかしい話だよ、きっと誰かがエコーフラワー使ってからかってんだ」

「んー、もしそうだとしたら、パピルスさんのあの人柄の良さもあるからちょっと怖い」

「ああ、そうだな。アンタも気を付けといてくれよ」

「誰も私の詳しい事なんて知らないから大丈夫。サンズこそ気を付けてね」


こりゃごしんぱいどうも、と適当に返すとサンズは椅子から降りて、足から落ちていた自分の履物を履き直す。
そして私に背を向けたままの状態で


「さてと…随分長いこと休憩しちまったぜ。仕事が山積みなのに、アンタが引き留めるから」

「え、何言っ「そうそう、オイラ金欠だからお勘定頼んでいいか?」はい?」

「お祝い料金含めだから、10000Gだな」

「…」

「…あー、冗談冗談。だからそんなおっかない顔するなよ。 グリルビー、今日もツケにしといてくれ」

「ツケ!?そんな、グリルビーさんいいんですか?」

「…」

「グリルビーは、いいけど早く払えって言ってるよ」

「で、ですよね。もう、サンズどうするの?」

「だからその為の"ツケ"だろ?安心しろって、もうじき払うから」


何でこんなに適当なんだ。
「今日も」と言っている辺り、いつもツケているのだろうか。グリルビーさんの顔を窺えば特に何も変わりは無い。
せめて自分の分だけでも払えないかと料金を尋ねてみると、パピルスさんから貰っていたなけなしのお小遣いでギリギリ支払うことが出来た。
領収書を見てみたら、一杯飲んだシンデレラの料金が含まれていなかった。グリルビーさんのサービスらしい。格好良い…
サンズが「律儀だな」と顔色一つ変えず私に言うもので、つい苦笑いと溜息を吐いてしまった。