青かった顔がすっかり元通りになっているサンズが、彼曰く"近道"を使ってエコーフラワーの所まで連れて行ってくれた。
「また食いに行こうぜ」なんて呑気な事を言っているが、次があるならツケを払うよね、私に押し付けたりしないのよね。そんな風に疑いの目で彼を見れば、目線を横にすーっと逸らされた。
「アンタはこの先に進むのか」
「うん。沢山の所に行くつもりなの」
「ふぅん。まぁ、お気を付けて?」
「ええ、ここまで送ってくれてありがとう。サンズも気を付けてね」
「ああ、どうも。じゃ、オイラは別の仕事してくるから」
ひらひらと手を振って、私の横を過ぎ去って行くサンズ。何ともあっさりとした別れ方である。
私も彼と反対方向を目指して進んで行く。
……あ、そういえば、またパーカーのお礼を言うタイミングを逃してしまった。
次に会えたら絶対に言おう。ちゃんと覚えておくのよ、エマ。
***
岩が降って来る危険な滝を越えると、水草のような湿った草叢が。
周りを見ても、ここを掻き分けて通る以外道が無いようだが…うう、濡れたくない…
案の定濡れている草に気持ち悪さを感じながら、ガサガサと掻き分けて進んで行くと、崖の上の方から話し声が聞こえてきた。
少しだけ背伸びして草の間から覗いてみればそこには何とスノーフルで私を送り出してくれた彼と、もう一人重そうな鎧を身に着けた人が二人で話していた。
パピルスさんの声はハッキリ聞き取れるが、もう一人は鎧を被っているからか声がくぐもっていて聞こえにくい。
「アンダイン隊長……
さっき電話で伝えたニンゲンのことなんですが……
も…勿論戦いましたッ!実に勇敢に!
……えええ、えーっと…その…一生懸命頑張ったけど…逃げられちゃって…」
アンダイン あの置き手紙に書かれていた名前と同じだ。
もしかしてこれは私の話をしているの?頭を下げ、身を潜めながらそちらへ耳を傾ける。
「…え?ニンゲンのタマシイを取りに行く…?隊長が…?
ででで、でも、別に、殺さなくたって…!だって…だって…」
「(パピルスさん…)」
彼は多分、良心と使命の間で揺れ動いているのだろう。私を殺すのか、捕らえるのか。それとも…
アンダインさんがパピルスさんの方を向くと、パピルスさんはたじたじと後ずさる。
「…はい。全力で手伝います…」
段々小さくなっていく彼の声に、私の不安が募る。
どうしよう、今ここで動いたら音で気付かれ即殺されてゲームオーバーになるかもしれない。
こんな時に私にも近道出来る能力があれば良いのに…!
届きもしない願いを込めていたら、私の足元が急にぬかるんだ。
下を向いて確認すると真っ黒な水溜りが出来ていて、そこに足がだんだん沈んでいく。
う、嘘。何これ?抗い、もがいても抜け出せず体はそこへ沈むばかり。
「た、助け…ッ!」
「!」
ガシャンと金属の音が聞こえたのを最後に、私の体は全部水溜りに飲まれてしまった。
***
真っ黒な空間に一つ、白い光が差し込んでいる。
手を伸ばせば届きそうで。
必死にそこに手を伸ばして光を掴む。ガッと、その光の方へ自分の体を引き寄せるようにした。
眩しい
目をゆっくり少しずつ開くと、そこはさっきまで居たはずの場所だった。
来た道と違っていて。ふと自分の右手側を見てみれば、水溜りに飲まれた所が。
さっきのは一体何だったのだろう?深く考えても謎が深まるばかりだ、ひとまず助かったからそれでいいだろう。
アンダインさんがいないか、その関係者達が潜んでいたりしないか、少し警戒しながら歩いた。